No.25 秘密特訓
練習が終わり俺と博司はある目的地に向かう。
時刻は七時を過ぎており、微妙に薄暗いが、それほど気にならない。
そのまま俺たちはこの前、久留美と買い物で訪れた商店街についた。
「じゅ、純也くん。ここって商店街じゃないの?練習場所なんてあるの?」
「まあ、つべこべ言わずについてこいよ」
そのまま俺たちは商店街のから裏路地に入る。
そこはにぎやかな商店街の雰囲気とは反対に廃墟や壁に落書きなど、とても暗い雰囲気だ。
そんな雰囲気が俺は好きですこし前までは毎日のようにここに通っていた。懐かしい気分になる。博司はとてもオドオドしている様子だった。
「純也くん………ここって不良の溜り場だよね?見るからにそれっぽい落書きとかあるし……」
「ん?まあ、たしかに溜り場かな?」
「ええ!?」
「まったく、いちいちうるせぇんだよ。ビビリすぎだっつ〜の」
「そんなこと言ったって悪い人たちが…………って、でたぁ〜!!!」
俺と博司は見事に不良たち5人組に囲まれてしまった。
『おい!そこのデケェヤツ。ここに何のようだ!』
「ひ、ひぃ〜ごめんなさい〜!すぐにここからでます〜!さぁ、早く行こうよ純也くん」
「まぁ、待てって」
俺は走って逃げようとする博司の腕をつかむ。
『ん?純也?』
不良たちの一人が俺を見る。
『お?純也じゃねぇか!?久しぶりだな』
「おう?京介か。久しぶりだな。優はどうした?」
コイツの名前は須藤京介〈すどうきょうすけ〉。
身長は優より少し大きめの180センチだ。
赤い髪の毛が特徴だ。優のバンドのボーカリストで、ここら辺の不良たちには『赤髪の狂犬』として恐れられている。
とにかくコイツとの出会いは強烈だった。中二の時、俺と優がストリートバスケをしている時に京介がやってきていきなり喧嘩を売ってきたんだ。
京介たちはバンドメンバーを引きつれて四人、こっちは俺と優の二人。それでどっちが強いがハッキリさせるために俺と京介が1対1の喧嘩で勝負したんだっけ?
三時間の死闘の末、俺が勝利したわけだが結局どちらも入院。苦い思い出だなぁ。
その後は同じ病室で体が動かせないため口喧嘩が続いていた。
そこにたまたま優が見舞いに来て、優が小さいころからギターをやっていることが発覚したり、京介もロックが大好きなことが発覚したり………。
それでいつの間にか優が京介のバンドに加わって俺たちは仲良くなっていったんだ。
まあ、詳しい話はまた機会があったときに話す。
とりあえず京介は学校には行っていなく、近くの楽器屋でバイトをしている。
「ん?優なら今日は会ってねぇぞ。ここにはバイトの帰りに久しぶりに寄ってみたんだ」
「ああ、俺も久しぶりにここに来たぞ。コイツとバスケの練習するためにな」
そう言って俺は博司を指差す。
「あ、あのぉ……ど、どぉも……」
博司は相変わらずビビっているようだった。
「ふ〜ん、デカイヤツだな。で、喧嘩は強いのか?」
「え?い、いや……し、したことが無いからわからないです」
「じゃ、試してみるか?」
「ええ!?」
京介は博司に近づいていく。
そして、右手の拳を振り上げる。
「う、うわぁ!」
博司は目をつぶり、両腕で攻撃を防御する姿勢になっている。
………………。
ポン。
「え?」
京介の手は博司の肩にそっと置かれる。
「はは、ウソだウソ。昔の俺じゃねぇんだし、いちいち意味のねえ喧嘩売らねぇって」
「おいおい、京介。どうやら博司にはシャレになってねぇみてぇだぞ」
俺は京介に言った。京介は博司を見る。
博司は急に膝の力が抜けたように地面に座り込む。
「こ、こわかった……」
「いや、そこまで驚かすつもりは無かったんだが……悪い悪い」
京介の話は続く。
「じゃあな純也。そろそろ俺用事あっから行くわ」
「ん?バスケしていかねぇのか?」
「ああ、今コイツ等たちと遊びに行くからよ。じゃあな純也。それと練習頑張れよ。そこのデカイヤツ」
「は、はあ」
そう言って京介は裏路地から出ていってしまった。
「こ、恐かったぁ。睨まれたとき獣に睨まれたみたいだったよ」
「ん?そうか?俺はまだまだシャレってわかったけどな。本気になったアイツはマジでヤバいぞ」
それを聞いた博司は、
「え?アレよりも恐いの!?」
そう言って小さく震えてしまった。
「ま、今のアイツはめったなことがないかぎりキレねぇって。とりあえずついてこい」
「う、うん」
俺たちはさらに奥にあるリングのある空き地に向かった。