No.24 逆戻り
試合が始まり、少し経過したところで部員たちは先程薫の言った言葉を認めざるをえなくなった。
その理由は………。
「よし!純也!」
「おう!まかせろ!」
亮が純也にパスをだす。それを受け取った純也はディフェンスをかわしシュートをする。
ボールは軽がるとリングに吸い込まれた。
純也の加入により、荒々しいディフェンスとオフェンスではあるが、インサイドの得点力があがった。
永瀬勇希もすばらしい活躍をみせる。
コンバートにより心配されたが、もともとセンターよりもフォワード向きだったようで、前よりも格段に点が取れるようになったのだ。
さらに驚くのは木ノ下薫だった。
この前まで色々な仕事をこなすためにフル回転していた彼だが、ガードになったことによりスリーポイントに集中することができて前よりさらにスリーポイントの成功率があがった。
もちろんインサイドでも得点することができる。
色々なところから得点できるようになり、亮のパスもかなり生かされているようだった。
しかし、一人だけこの流れについてきていない者がいた。
「博司!リバウンドだ!」
亮が叫ぶ。
「え?あ、うわぁぁ!」
はずれたシュートをキャッチするために跳んだ博司だったが、自分より20センチも背が低い小田原に取られてしまった。
「おい!しっかりしろよ!」
「純也くん!?ごめん」
それを見ていた永瀬は薫に話し掛ける。
「やはり早すぎじゃないのか?」
「……そうかもな。よし、今日のところこのメンバーでの練習は終わりだ。明日からも毎日このメンバーで少し練習するからな。それ以外はいつも通りのメンバーだ」
『オッス!』
返事をした部員たちはまた練習に戻る。
そして、いつものレギュラーたちの練習が再開された。
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「あ〜あ、また基礎かよ」
レギュラーたちが練習するコートの端っこでまた俺はディフェンスだの何だの基礎練習をしていた。
「ご、ごめん……。僕のせいで」
博司が申し訳なさそうに言ってきた。
「まあしかたがね〜って。暗い話は無しだ無し!!」
「でも………」
「『でも』じゃねぇ!オメ〜はオメ〜なりによくやってただろ。ハナっから誰もお前には大きな期待はしてねぇって。お前は初心者な分、伸びるものが1番多いんだから今は練習しかねぇだろ」
「う、うん……ごめん」
「木ノ下……いや、勝てなくてムカつくヤツがいたら死ぬほど練習しかねぇよ。いつかは必ずぶっ殺してやるぜ!ってくらいの気持ちで!」
「はは、そうだね。殺しはしないけど」
「まあ、そんなとこだ。わかったら練習だ。俺は休むけど」
「ええ!?」
そしてまた俺たちの基礎練習が再開された。
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――
『ありがとうございました!!』
練習が終わり、1年生は掃除をする。
「おい博司」
俺は博司に話し掛ける。
「ん?どうしたの?」
「掃除が終わったら俺の秘密特訓に付き合え」
「え?いいけど……」
俺たちは急いで掃除をし終え、モップをかたずけた。
「博司、ちょっとまってろ」
「う、うん」
俺はそう言って久留美に近づいていく。
「久留美」
「ん?なあに?」
俺は空の弁当箱を取り出して久留美に渡す。
「え?別に今じゃなくてお家の前で渡してくれればいいのに」
「悪いな。今からちょっと博司と秘密特訓しに行くからよ。先に帰っててくれないか?」
「うん。わかった」
そして久留美は後ろを振り返り歩いて行く。
「あ、それと久留美!」
「ん?今度は何よ?」
「弁当作ってもらっている立場で申し訳ねぇんだけど、最近弁当に『タコ』が多くないか?ペットとして飼っているから非常に食いづらいんだが……」
「しょうがないでしょ?お姉ちゃんが好きで買ってくるんだから。今度、生きたタコを大量生産してジュンにあげるって言ってたわよ」
その言葉を聞き、俺の頭のなかに妹と母の顔が浮かぶそして、さらに今飼っている『タコス』を家に初めて持ち帰ったときのことを思い出す。
………………。
「スマン!それだけは勘弁してくれ!暴走する絵梨佳を止めるのは大変なんだ!」
その言葉を聞き久留美は微笑する。
「クスクス、一応お姉ちゃんに言っておくわ。それじゃあね」
そう言って久留美は離れていく。俺は近くにいた博司に話し掛ける。
「よし!博司!行くぞ!!」
「え?行くぞって何処へ?」
「まあ、ついてこいよ」
俺たちは秘密の特訓の場所へと向かった。