No.23 コンバート
少し長めです。しかも次回へ続く感じです。
――朱雀高校放課後
ここは3年A組。
木ノ下薫と同じクラスの永瀬勇希は教室を出て、部室へと向かう。
「なあ永瀬、昨日思いついたんだが……」
薫が歩きながら突然そう言った。
「なんだ?」
クールな顔で永瀬は答える。
「それはな……」
薫が口を開きかけたときだった。
『勇希くん!』
一人の女子が永瀬勇希に話し掛ける。そして、手に持っている手紙を差し出して一言、
『これもらって。返事は後で!』
「ありがとう」
勇希はそれを慣れた表情で受け取る。
手紙を渡した女子はどこかへと行ってしまった。
「ん?またか?」
「いや、別に……」
勇希はあまり興味のない様子だった。もう何度も同じことがあったのだろう。この学校には彼のファンクラブが存在するほどだ。
「まあ、さっきの続きなんだが……」
「ああ」
再び薫が話をしようとしたときだった。
『先輩!』
「ん?」
薫は声のしたほうに目をやるとそこにはまた女子がいた。
『あの……部活頑張ってください!それとコレ……』
そういって女の子は手紙を取り出す。それを薫が受け取った。
「ん?ああ、ありがとう」
『読んでください!それでは!』
そう言ってその女の子は物凄いスピードでどこかへと消えてしまった。
「ん〜、慣れないな。こうゆうの」
薫は少し照れながら言った。彼はどうやら後輩に人気があるらしい。顔もよくスポーツができる彼は憧れの人なのであろう。
「それで、話の続きは?」
「ああ、そうだったな」
永瀬の言葉を聞き、薫は話し始めた。
薫がその内容を話し始める。
それを聞いた永瀬は……
「なんだって!?大丈夫なのか?」
「いや、まだ決めたわけじゃないさ。あくまでも提案さ」
「得点力が落ちるんじゃないのか?」
薫は笑みを浮かべながら、
「大丈夫だ。お前がいるし。それに……」
二人の会話は続いた。それにつられ二人がもらう手紙の数も増えていったのだった。
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――体育館
部員達は一通りの基礎練習を終え、レギュラーは実践、その他の部員は基礎練習に別れていた。
いつもどおりの練習が行なわれる。
「あ〜あ、だりぃ」
俺はディフェンスの姿勢をとる練習をしていた。
腰を低く落とし構える。
この体勢は意外とキツく、博司を見ると死にそうな顔をしていた。
それが終わり今度はシュート練習に入る。
博司は相変わらずボロボロだった。俺もジャンプシュートは密かに練習していのだが、部活中にはやらないことにしている。
理由は木ノ下薫を驚かしてやるからだ。
またいつものように同じことが繰り返されていくと思っていたときだった。
「純也!!」
突然レギュラーたちのフォーメーション練習が中断し、薫が俺を呼ぶ。
「ん?なに?」
「お前もフォーメーション練習に加われ」
「おお!!よっしゃあ!」
やっと俺の偉大さに気付いたかこのバカチンが!!
「それで、俺は誰とかわればいいんだ?」
その言葉に薫は少し悩んでから答える。
「小田原、純也と交替してくれていいか?」
「うん。じゃあ僕はディフェンス側にまわるよ」
小田原はそう言ってディフェンスのチームに加わった。
「それと博司、お前もだ」
………………?
今このキャプテンは何て言った?よく聞こえなかったんだが……。
聞こえたには聞こえたが、何かの間違いじゃないのか?
そう思い俺は薫に聞いてみた。
「おい、今なんて言ったんだ?」
「いや、だから博司もフォーメーション練習に参加しろと言ったんだが」
『え〜!!』
部員達から驚きの声が聞こえる。まあ、当然だろう。そして俺たちは博司のほうを見る。
博司はまだこちらに気が付いていないらしく、ひたすらドリブル練習を続けている。
「うわぁ!」
ドテッ!
自分の足元にあるボールにつまずき、博司は転けた。
………………。
「おい!本当に大丈夫なのか!?」
たまらず永瀬勇希は薫にそう言った。その言葉に薫は
「……多分な」
心配そうに答えた。
「博司!集合だ」
「はっ、はい!?」
薫の突然の言葉に驚いている様子だった。
博司は薫に駆け寄った。
「あ、あの……何でしょうか?」
「博司もフォーメーション練習に参加しろ」
「はっ、はい…………ってえ〜〜〜!!??」
まったく、近くで大きな声だすなっつ〜の。頭が痛いんだっつ〜の。
「えるせぇぞ。早くしろ」
「ええ?……でも……」
「『でも』じゃねぇ!いい加減覚悟を決めろっつ〜の!」
「う、うん」
「ったくよ……」
俺たちの会話が終わり、薫が部員たちに言った。
「純也と博司を入れたわけだが、レギュラーとして決まったわけではない。この二人はまだまだ欠点があるし、不安要素だらけだ。だから、とりあえずお試しとゆうことだ。俺が指名したポジションにそれぞれついてくれ」
薫の話は続く。
「ポイントガード、長谷川亮」
「はい」
「パワーフォワードに純也」
「おう!」
ここまでは前と同じだ。
「センター、大山博司」
「はっ、はい!!!」
ま、コイツはセンターだろ。っつ〜か声でけぇよ!うるせえな。
それじゃあ、もともとセンターだった永瀬勇希はどこだ?ガードか?フォワードには薫の野郎がいるし。
「スモールフォワード、永瀬勇希」
「………はい」
コイツがフォワード!?普通は薫だろ!!
残りはまさか……。
部員たちは薫の言葉を待って、じっとしている。これから起きるであろうまさかの展開に準備をしているようだった。
「シューティングガード……俺だ」
『え〜!!!』
『まじかよ!?薫さんがガード!?』
『朱雀で1番得点力があるだろ!!』
やはり予想通りのリアクションだった。
朱雀高校……いや、県内でも得点力の高い薫がフォワードからガードにコンバートするのだ驚かないではいられないのだろう。
「本当に大丈夫なのか?薫」
永瀬が不安そうに薫に問い掛ける。
「やってみればわかるさ」
木ノ下薫の言葉を信じ(俺以外)名前を呼ばれたレギュラーたちは練習を始める。