No.19 課題
――日曜日
朝、バスケ部員たちは朱雀高校の校門前に集合していた。
天気は快晴で普段は俺の嫌いな小鳥共のさえずりも心地よく聞こえる。
そんな中キャプテンの薫が部員たちに言った。
「よし、みんな集まったな。じゃあ行くぞ」
そう言って薫は市のレンタルバスに乗り込む。それに俺たちも続く。
今日は池山工業と練習試合ならしい。
池山工業は俺たちと同じ市にあるのでバスで2、30分くらいだ。
「うわぁ〜…純也くん。練習試合だよ、緊張するね」
俺の隣に座った博司が俺に緊張した様子で話し掛けてきた。
「ん?オメ〜は試合にでないんだから普通、緊張しないだろ」
「確かにそうだね。初めてだから緊張するんだ。純也くんは緊張しないの?」
「あ?誰に言ってんだよ。俺は無敵だからな」
「ははは、ごめんごめん」
俺の言葉に対し亮がわざわざ後ろの席から言ってきた。
「ま、純也も試合にでないから緊張しないのも当然だな」
「あ〜?俺はキャプテンでエースだぞ?でないわけあるかっての」
「キャプテンでエースは薫さんだろうが!」
シート越しの口喧嘩が始まった。
「あ、あのぉ……二人とも喧嘩はやめようよ」
純也・亮『うるせぇ!博司は黙ってろ!』
「うう……」
俺たちの口喧嘩は熱くなるばかりだ。
俺が丁度『お前の母ちゃんデベソ!』と言い放ったときだった。
「おい、おまえら、うるさいぞ。試合前に変なことで体力を使ってどうする?」
木ノ下薫に怒られてしまった。
「す、すみません」
亮はとても申し訳なさそうな顔をしている。
「まったく……静かにするんだぞ?」
そう言って薫は席に座ってしまった。
「亮、お前のせいでうるせぇ説教(約八秒)聞くはめになっちまっただろうが!」
「お前が薫さんを差し置いてキャプテンだのエースだのほざくからだ!」
またまた口喧嘩が始まってしまった。
「まったく…アイツら二人ときたら……」
その二人の口喧嘩を薫はやれやれといった様子で聞いていたのだった。
――――――
――――
――
俺たちは池山工業につき、控え室へと案内された。
校舎は新しくも古くもなくどこにでもありそうな感じだった。
「それでは今から番号を渡す。呼ばれたら返事をして前にでるように。純麗、たのむ」
「はい」
薫に呼ばれたマネージャー純麗さんはみんなの前へとでる。今日も相変わらず可愛いなぁ。つ〜か薫!純麗さんを気やすく呼び捨てにするんじゃねぇ!
「4番、木ノ下薫君」
「はい」
薫は返事をしてユニフォームをもらう。つ〜かコイツが4番とは気に入らねぇ……
「5番、永瀬勇希君」
「はい」
そういえばコイツ副キャプテンだったな。あまりしゃべったことねぇしよくわからねぇヤツだな。
「6番、小田原君」
「……はい」
たしかコイツは三年だったな。パワーフォワードで俺と同じポジションだ。あんまり目立たないしおとなしいヤツだ。
「7番、長谷川亮くん」
「はい」
ん?
「なんでお前が7番なんだよ!!」
「お前が入部する前から7だったよ!!」
――なにぃ!?これはなにかの間違いだ!俺が亮よりしたの番号なんてありえん……
「8番、我利勉翔太君」
「はい」
我利勉まで俺より上かよ!!ヒョロヒョロのクセに!
その後も純麗さんによる番号の発表が続く。
「18番、石川純也くん」
「え〜!?俺が最後かよ!薫!どういうことだ!?」
「いや、当たり前だろ。お前はまだ入部して間もないし。もらえないヤツもいるんだしもらえるだけありがたいと思え」
「頼む〜!!亮より下の番号はいやだ〜」
ダダをこねてみる。それに対し薫はしかたがなさそうに言った。
「………聞くだけ無駄だがお前は何番がいいんだ?」
「4番!!」
俺はきっぱりと言い放った。
「ダメだ……まあ我慢するんだな」
マジかよ!?じゃあ4番以外の番号………
石川……
石…………岩?
岩、岩、岩……ロック…
6!!
「じゃあ6番は!?」
「いきなりどうした?」
「いや、『ロック石川』なんつって」
「くだらん……いいわけないだろ」
そのときだった。3年の無口で気の弱そうな小田原が俺たちに言った。
「あのぉ……僕6番じゃなくていいからみんな1番ずつズレるのはどう?みんながよかったらだけど」
小田原に薫は、
「小田原、別に純也の言うことなんて気にしなくていいんだぞ」
「別に番号がすべてじゃないし、純也はうまいからね。いいんじゃない?」
「俺はあまり気が進まないが……」
その後、俺は奇跡的に6番を勝ち取る?ことができた。普通の学校ならダメだと思うが朱雀はおとなしい人が多いからできたことだろう。実際、亮以外は反対する様子は見られなかった。番号のほうは亮が8番、我利勉が9番となった。
部員のみんなはそれぞれもらったユニフォームに着替える。言わなくてもわかると思うがマネージャー(純麗さん、久留美)は部屋の外にいる。
「ふふふ」
俺は笑みを浮かべながら亮に向かって『6』の番号を見せる。
「…………」
「ププッ……8番。プププッ……俺より下……プププ」
「だぁ〜!!やっぱり気に入らねぇ!何でお前が6なんだよ!!」
「ジツリキだよジツリキ(実力)。チミとはデキがちがうからなぁ〜」
「どこが実力だ!!九割は情けじゃねぇかよ!!」
「…………ププ」
「なんだよ?」
「……負け犬はよく吠える。な〜んてね、エヘ♪」
「こ…殺す!!なにが『エヘ♪』だよ!!いつか殺してやる〜!!」
『ち、ちょっと亮くん落ちつきなよ』
暴走する亮を博司が止める。
「あ、博司か。スマンスマン熱くなりすぎた」
亮は博司の言葉によって落ち着いた様子だった。
俺も言いすぎたな、と思い亮に話し掛ける。
「なあ、亮。すまなかった。元気だしてくれよ」
「……あ、ああ」
ニヤ
「今日はがんばろうな。『負け犬』」
「うがぁ〜!!」
「亮くん、落ち着いてよ!!」
「とめるな博司!!アイツは絶対に殺す!!」
亮は博司に後ろから両腕をつかまれて身動きがとれない状況だ。博司が手をはなしてしまったら狂犬のごとく俺に襲い掛かってくることだろう。
さらに俺は亮を激怒させるべく手のひらをピンと伸ばし、口をとがらせてペンギンの真似をしながらダンスをする。
ヘラヘラ〜
ドカッ!
俺はよちよち歩き、わざとらしくコケてみる。
「転んじゃった……エヘ♪」
「ぬぉ〜!!ぶっ殺す!!!」
「亮くん!!落ち着いて!」
「博司!とめるな!俺はアイツを殺す!殺る!殺める!!アイツを殺して俺も死ぬんだぁ!!!」
「り、亮く〜ん!!」
その後俺たちは暴れる亮を落ち着かせようと必死だった。




