No.18 バリエーション
学校につき、体育館の入り口前に立つ。
「よっしゃあ!一番乗りだぜ!」
と、思っていたのだが体育館の中からドリブルの音が聞こえる。
いやな予感がしつつも扉を開ける。
そこにいたのは最悪なことに木ノ下薫だった。
「カオル〜!!なんでお前がいるんだよ〜!」
薫も俺の存在に気がついたようだ。
「お?純也か。ずいぶん早いな」
「早いな、じゃねぇよ!!オメーこそいつからいたんだ?」
「十時くらいだ。今日は補習もないしシューティングくらいやっておこうと思ってな」
――俺が起きた時間じゃねえかよ!!これでは秘密特訓が台無しじゃん。
「純也こそどうしたんだ?こんなに早くきて」
「べ、別に……補習の帰りに寄っただけだよ」
その時だった。
『お?純也じゃね〜か』
『おはよう、純也くん』
亮と博司も来てしまった。
「お前ら!どうしてここに?」
俺の質問に亮が答えた。
「博司と一緒に自主トレしようと思ってな」
――クソ〜、秘密特訓をするならもっと早く来るべきだったか……
その後も我利勉も来てしまい、さらには永瀬勇希まで来てしまった。
『おねがいします』
『ん?みんなずいぶんと早いな』
結局俺の計画は台無しになり早くから六人で練習が開始されることになった。
木ノ下薫と我利勉翔太、永瀬勇希はシュート練習。お互いに確認しあったりしているようだ。
長谷川亮と大山博司は1対1をしている。博司はひたすらディフェンスのようだ。
そして俺は……
「こら〜!薫!なんで俺はジャンプシュート練習なんだよ!」
俺は薫に駆け寄る。
「言ったろ?お前はシュートのバリエーションが少なすぎる」
「ジャンプシュートくらいできるっつ〜の!やらないだけだっつ〜の!薫のクセに生意気だぞ!?」
なぜか俺の口調が猫型野郎と暮らしているメガネの少年をイジメているガキ大将みたいになっているが気にしない。
薫はため息を吐きながら言った。
「純也、ためしにここからシュートをうってみろ」
リングからすこし離れたところを指定してきた。
「へっ、軽く決めてやるぜ」
そう言って俺はボールを構えてジャンプする。
そのままリングに向かってボールを放った。
ご〜ん
ボールは見事にリングとは程遠いバックボードにあたってしまった。
「…………」
「い、今のはたまたまだ!!次こそ決めてやるぜ!」
そう言って俺はシュートをするが失敗に終わる。
その後もシュートを試みるが決めることができなかった。
「あれ?何で?ジャンプシュートは昔から……」
――練習してねぇじゃん!よく考えたらストリートのときもほとんどダンクかレイアップだった!!
「ほらな、わかったか純也」
「そのうち決まるっつ〜の」
薫はやれやれといった感じでリングを向く。
「いいか純也。ジャンプは真上に跳ぶんだ。横に流れたりしてもだめだ」
「……」
肯定すると照れ臭いので黙って見ていることにする。
「リングをよく見るのは当たり前だな。シュートは手首ではなく肘で打つように心がけろ。」
そう言って薫はフォームを構える。
「シュートをうつ場所によってボールの構える高さも変えるんだ。リングに近いときはボールを高く構える。離れているときは少しさげる」
そして薫はシュートを放つ。
そのシュートフォームは認めたくはないが綺麗で見ている間はまるでスローモーションのようだった。
パスッ!
高い打点、低い弾道のシュートはリングの淵にはあたらずに綺麗にリングに吸い込まれた。
「へ、汚ねぇシュート」
「ふ、しっかりと練習をするんだぞ」
薫は微笑から自分の練習に戻ってしまった。
――肘でうつように心がけろ……か。
とりあえず今は練習しないことにする。
こっそり秘密特訓をして驚かせてやるぜ!