No.17 タコVS妹
朝起きて時計を確認する。
時刻はちょうど10時をまわった所だ。
ちなみに今日は土曜日で学校が休みなためこんな時間まで寝ていた。
うちの学校は一応進学校で土曜日は普通、補習があるのだがメンドーなので行かないことにした。
ん?誰だ今『貴様バカじゃなかったのか』と思ったヤツは?
確かに俺は頭がいいわけじゃないが馬鹿なわけじゃないぞ?母が母なため、勉強はある程度やっていた。
まあ、最近は真面目にやってなかったから成績は急降下中なのだが……
ど〜でもい〜や
「部活だりぃな」
今日は午後から部活があるらしい。
果てしなくめんどくさい。
そんなことを考えながら部屋からでて一階へとおりる。
またいつものように顔を洗い居間へとむかう。
「あら、おはよう」
「ああ」
母さんがあいさつをしてきたので返す。
妹は受験が控えているため学校だな。
そして昨日から飼い始めたタコの水槽に向かう。
タコは相変わらず元気に泳いでいる。ちなみに名前は『タコス』だ。
『そりゃあどっかの国の食いモンの名前だろうが!!』と思った人はどうか抑えてほしい。
実際俺もそう思ったのだが母さんが決めたことなのでしょうがない。反抗するとめんどくさいことになりそうなのでやめておいた。
そんなことを考えながらも俺は昨日のことを思い出していた。
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時は昨日。
久留美にパフェをおごって、自宅についたときだった。
「ただいま」
「あ、お兄ちゃんお帰り〜」
妹が奥の部屋からでてきた。そして目線は俺の手に持っているものに集中する。
「お、お兄ちゃんそれは!?」
「ん?ああこれか。タコだよタコ」
「タコ!?」
じゅる
「ん?絵梨佳、今変な音がしたんだが……」
「な、なんでもないよ。それよりお兄ちゃん、お風呂入ったら?」
「ああ、そうだな」
俺は風呂へと向かった。
体を流し湯槽につかる。
「まったく……久留美はパフェ食い過ぎなんだよ…」
ストバスの賭けバスケは俺の大事な収入原だったのだが最近はまったく行っていないため金欠だ。
十分リラックスした後、風呂からあがり台所へと向かった。
そのとき台所で繰り広げられていた光景に俺は言葉を失った。
「こら〜!このタコ!かんねんしなさ〜い」
テーブルにくっついたタコを必死に引き剥がそうとする妹、絵梨佳。
絵梨佳に剥がされまいと必死に抵抗しているタコ。
鍋でお湯をわかしていることから妹の動機は見え見えだ。
――あの野郎!ユデダコにするつもりだな。
「こら絵梨佳、やめろって!」
「私、タコ、食う。OK?」
「ノーだノー。何でカタコトなんだよ!」
「お兄ちゃん、邪魔しないで!私はタコを食うのよ」
「言ってる意味がわからん!あとでスーパーで買ってやるから!」
「うふふ、お兄ちゃん。邪魔するのね?」
不気味な笑みを浮かべながら妹は包丁を握り締めて俺に向かってきた。
「絵梨佳、やめろって!!リアルに恐いから!!冗談にならないって!」
「ウフフ、冗談なんかじゃないわよぉ〜。ウフフ、タコタコタコス、足はたまに八ぽ〜ん♪」
――いかん!完全に目が逝っている!!
妹は恐ろしい目付きでジワリジワリと近づいてくる。
「うふふ、なんでイカは十本なんでしょうね♪」
――知らねぇよ!!つ〜かマジでやばい!このままでは殺られてしまう!
そのピンチを救うのが以外にも母さんだった。
「あらあら、絵梨佳。ダメじゃないの。お兄ちゃん刺しちゃ」
笑顔で語りかけてきた母に妹は謝った。
「ご、ごめんなさい」
――母さ〜ん、言ってることはおかしいが助かったぜ!
「いい?絵梨佳。タコというものはね……」
――うんうん
俺はうなずきながら母の説教を聞いていた。
妹よ、母に叱られるのもいい経験だぞ?
「こうやって料理するものなのよ!!」
――マッ、マザ〜!!
そこには先程の笑顔の面影もない母がいた。
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――――
――
************
「助かってよかったな」
俺は水槽で元気よく泳いでいるタコに話し掛ける。
昨日は俺が説得しなかったら間違いなくこのタコスは変わり果てた姿で夕食に並んでいたことだろう。
その後もこっそりとタコスを料理しようとする妹を阻止するのがとても大変だった。
「まったく、のんきに泳ぎやがって……」
そんなタコスを見ていたときだった。
タコスは突然水面から顔をひょっこりだした。
「ん?どうした?エサか?」
ピュ〜
タコの口からスミがだされ、俺の顔に一直線に向かってきた。
俺の顔は一瞬で真っ黒になる。
……………………。
……………………ニコ。
「てめ〜!優しくしてやりゃあ調子にのりやがって!大阪名物すんぞこの野郎!?」
相変わらずタコスは能天気に泳いでいる。
そんなタコスを見ていたら怒っているのも馬鹿馬鹿しくなってきた。
「暇だなあ……」
時計を見ていたら十一時を過ぎていた。
「…………」
――早く部活に行くのもいいかもな。薫を倒すために秘密特訓だ!
そして俺はタコスのスミを洗い流してから学校へと向かった。