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No.16 パフェ

『ありがとうございました!』


部員たちのあいさつとともに練習が終わる。みんなバラバラに散っていく中、キャプテンの木ノ下薫はマネージャーの赤川純麗に話し掛けた。


「純麗、ちょっといいか?」


「ん?なあに?」


純麗は不思議そうな顔をしている。


「そろそろ試合があるから治療道具や飲み物を部費で買い揃えてくれないか?」


その言葉に純麗は、


「ごめんね!今日はお家の手伝いがあって……。本当はマネージャーの仕事だからやらなくちゃいけないんだけど、ごめんね!」


「いや、無理にとは言わないんだ。俺も予定が入っていてな……」


『あの、私がいきましょうか?』


久留美が突然二人に言った。


「本当?じゃあお願いできるかしら」


「はい」


その会話にさらに純也が加わる。


「お〜い、久留美ぃ〜。タコ食わしてやるから機嫌なおせよ」


そう言ってタコを取り出す。


うねうね


衰えることを知らないタコは元気よくおどる。


「フン」


「おい!無視はないだろ無視は!」


純麗が二人に言った。


「あらあら、まだ仲直りしてなかったの?」


そして純麗は何かを思いついたような顔をしてから純也に話し掛ける。


「ねぇ、純也くん?」


「はい!?何でありましょうか!?」


「お買い物の荷物重そうだから久留美ちゃんと一緒に行ってくれる?」


「ち、ちょっと先輩!」


当然久留美は反論する。


「はい!わかったであります!無事に荷物を届けるであります」


「こら〜!わかるな純也!私一人でも大丈夫だから!!」


薫が純也に言う。


「そうだな。純也、手伝ってやってくれ。よかったな春風」


「薫先輩まで!?よくないです!」


「おい木ノ下薫!!テメーの命令なんかききたくね〜よ!!これは純麗さんの命令だからな!お前の命令ではない!」


変な所にこだわる純也だった。

――――――


――――


――


************


「こないで!」


「そんなこと言ったって純麗さんからお願いされたんだからしかたね〜だろ?」


「私一人で大丈夫だから!」


早足でトコトコ歩く久留美に俺はついていく。

まだ怒っているようだ。

タコも食わないし変なヤツだなぁ……


俺たちはストリートバスケットのコートの近くにある商店街へと向かった。

俺たちのすんでいるところは、一応県内で一番発展しているところなので店なんかは結構ある。


――そういえば最近ストバスに行ってないよなぁ…


そんなことを思いながら歩いている時だった。


『純也?純也じゃないのか?』


不意に話し掛けられた方に俺は振り向く。


「ん?カズ!!久しぶりだな!」


そこに立っていたのは身長は俺と同じくらい、ドレットヘアーの男だった。


「カズくん?久しぶり!」


久留美も森村に気付いたようで、あいさつをしている。

この男の名前は森村一輝もりむらかずき

俺の二つ年上で今は高校3年生のハズだ。

昔は毎日のようにストバスをしていたのだが、高校に入学と共に部活をやるという理由でこなくなってしまった。まさしく今の俺だな……

当時ストバスにいたときは『コートができて以来の天才児』などと呼ばれていた。


「おっ、久留美ちゃん。懐かしいなぁ」


「そうね。カズ君はどう?部活は今年で最後なんでしょう?」


久留美が一輝に問い掛ける。


「ああ、もう早いところで引退だな……。純也はしっりと高校に行ってるか?」


「ん?まあな」


「ジュンもカズ君と同じでバスケ部に入ってるのよ?」


久留美が笑顔で一輝に言った。一輝はとても驚いた様子だった。


「へぇ〜、純也が部活をやっているとはね」

「別に好きでやってんじゃねぇよ」


「そうなのか?まあお前なら結構いいところまでいけそうだな。俺もキャプテンとしてがんばらないとな」


「なに!?お前がキャプテン!?」


これは驚いた。久留美も俺と同じで驚いていた。


「個性派がそろいすぎてまとめるのが大変だがうまくやっている。純也もいずれ戦うときがくるかもな」


「へっ、そんときはボコボコにしてやるぜ」


「楽しみだな。じゃあまたいつか会おう!実は今、部活の最中に抜け出してきたんだよ……早く行かないと監督に怒られてしまうんだ」


そう言って一輝は俺たちにあいさつをした後走ってどこかへ行ってしまった。


――練習中に抜け出すキャプテンがどこにいるんだよ……


「変わってないね、カズ君は」


「まあな、不真面目なところも昔とそっくりだ。アイツがキャプテンとは…」


「ホントね。ジュンもいつか対戦するときがくるんじゃない?」


「そんときはボコボコにするぜ!!そういえば久留美」


「ん?なあに?」


「機嫌なおったのか?」


「あ……」


思い出した久留美は都合の悪そうな顔をしてから、


「フン」


と言って速歩きで商店街に向かってしまった。


――まったく…かわいくねぇヤツだな。


――――――


――――


――



買い物を全部終えて俺たちは学校に向かっていた。


「あっ!」


重い荷物をもった久留美がバランスを崩してコケそうになるがなんとか持ちこたえる。


「久留美、俺が持ってやろうか?」


「別にいいわよ。それよりもう帰ったら?」


――本当にかわいくねぇ…


久留美は相変わらずフラフラしながら歩いている。

ジュースも粉のヤツを買えばいいのにわざわざペットボトルなんか買うからこうなるんだよ……


「あっ!」


久留美が転ぶと思った俺は素早く久留美の荷物を持ってないほうの腕を掴む。

なんとか転ばなくてすんだようだった。


「ほら、あぶねぇだろ?」


そう言って俺は久留美の荷物をもつ。


「…………」


「…………」


「重くない?」


「あたりめーだ。お前と一緒にすんじゃねえよ」


「力だけなら利用価値があるわね」


――ほっ、本当にかわいくねえヤツだな……


そして俺たちは歩きだす。


学校につき部室に荷物を置いた後(ジュースは冷蔵庫へ)俺たちは歩いて15分の帰路を移動していた。



「…………」


「…………」


沈黙は続いたままだった。


「久留美」


「なに?」


俺は弁当(日の丸)を取り出す。


「ほら、うまかったぞ。またよろしくな」


「……うん」


久留美はうなずいてそれを受け取る。


「パフェ」


「あ?」


――いきなり何言ってんだこいつ?


「パフェおごってくれたら許してあげる」


「はぁ?今からか?」


「そう、今から。じゃあ行くわよ」


「おい、ちょっと待てって!」



こうして一日は過ぎていった。


純也、出費2300円。


――まったく食い過ぎなんだよ……


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