No.15 天才児
どうしても僕は長々と書いてしまうクセがあるようです。
朱雀高校体育館では日曜の池山工業との練習試合にむけ、より一層部員たちは練習にはげんでいた。
俺はレギュラーたちがフォーメーションやら何やらを練習しているときに、コートのすみっこでひたすら基礎練習をしていた。
俺は木ノ下薫に言われたことを思い出す。
『お前はレイアップシュートというものを練習してくれ。このシュートはもっとも成功率の高いシュートだ。どうやらお前はゴールしたのシュートはダンクだけのようだからな。試合でダンクだけだと厳しい』
「まったく……なにが『もっとも成功率の高いシュートだ』だよ」
レイアップシュートなんか知ってるっつ〜の。
できないんじゃなくてやらないんだっつ〜の。
そう思いながら俺はリングに向かって走りだす。
ある程度ゴールに近づいたとき俺は思いっきり地面を蹴る。
俺の体はリングに向かってゆく。
ダァン!!
そのままリングにボールを叩きつけた。
「石川トマホーク!!決まったぜ〜!やっぱりダンクだろ!」
※石川トマホーク
左肩で相手を押し退け右手でダンクを決める純也の必殺技?
そのとき薫が俺に向かって叫んだ。
「おい純也!まじめにやれよ。基礎も大事だぞ」
「へいへい」
まったく……いちいちうるせぇ野郎だぜ。
そしてまた俺の基礎練習が始まった。
ロボットのように何度もレイアップシュートを繰り返す。
すると突然博司が話し掛けてきた。
「純也くん、がんばってる?」
「ああ?みりゃあわかんだろ。お前のほうは?」
「ドリブル練習をしているんだけど難しくて……」
「そうか……がんばれよ」
特に興味がないので軽く流し、また反復練習を再開する。
シュートが決まり、俺は博司のほうを見た。
相変わらずヘタクソなドリブルをしている。
「お、おっとっと」
敵もいねぇのにミスるなよ……
俺は博司に近寄った。
「へったくそだな」
そう言って俺はストリート仕込みのドリブルを披露する。
「うわぁ〜、すごいね。純也くん」
「まあな。俺のバスケスタイルはドリブルで相手を抜いてからシュートだからな」
「よかったら教えてくれないかなぁ?」
「しょうがねぇな、いいぜ」
俺は博司を見る。
「じゃあ言われた通りにしろよ」
「う、うん」
「まず、腰を落として低く構える」
「こう?」
俺の言葉に従い、博司は低く構えた。
「よし、次は目線だ。ボールばかりを見るな!!相手を睨み付けろ!睨み付けたら決してはなすな!!」
「こっ、こう?」
博司は俺を睨み付ける。
「よしいいぞ!!そして空いているほうの手は……」
「空いているほうの手は?」
「相手を挑発する!!ヘーイヘーイ!!」
「え!?へ、へ〜い…」
「違う!もっとだ!ヘーイヘーイ!!恥を捨てろ!ヘーイ!!」
「ヘーイ!」
「よしいいぞ!」
「ヘーイヘーイ!!」
「い〜ねぇ!!その調子だ!!」
「ヘーイヘーイヘーイ!!」
ゴン!!
「痛!!純也くん、いきなり何するんだよ!」
「調子にのるんじゃねえ!」
「ええ!?」
「じゃあ次のレッスンに入るぞ」
「う、うん」
そう言って俺は休憩中の亮を呼ぶ。
「お〜い亮」
「ん?」
亮が俺たちに近づいてきた。
「亮、悪いが俺のディフェンスをしてくれないか?博司にドリブルを教えてるんだよ」
「ああ、いいぜ」
亮は低く構えた。
「いいか博司!亮みたいにヘットバンドをしているヤツがいたらチャンスだ」
俺は亮のヘットバンドを手でつかみ目の位置まで下げる。
「み、見えねぇ!」
目が見えなくてもがいている亮の顔面に俺はボールをあてる。
「痛!!」
そして跳ね返ってきたボールをつかみ一気に亮を抜き去る。
「どうだ博司。わかったか?」
「う、うん」
「わかったか?じゃね〜よ!全部ストリートの技じゃねぇか!!」
亮の飛び蹴りが純也に炸裂する。
「ぐおっ!!いてぇなコノヤロー」
このような感じで時間が過ぎていった。