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No.144 壁!?

朱雀高校のベンチが静まり返っていた。こちらも調子が悪い訳では無いのに、なぜかジリジリと離される。しかしながら、関東大会のボロ負けに比べれば、今回はかなり喰らいついているだろう。


「よし、純也もよくやった。お前が裏方に徹してくれなかったらもっと点差がついていただろう。あと博司」


「は、ふぁい!」


薫に突然話しかけられ、博司の背筋がピーンとなる。


「練習通りにやればいい。細川に何を言われたのか知らないが、普段通りのお前を出すことが出来れば、決して勝てない相手じゃない。自信を持ってくれ」


「…はい」


博司はもう一度返事をしたが、あまり実感が沸かないようだ。足を引っ張っている自分を申し訳なく思っているのだろう。


「何ショボくれてんだよ!」


バシッ!


「~~っ!?」


純也が博司の背中を平手で叩いた。猫背になっていた背筋が再びピーンとまっすぐに伸びる。


「この俺の『押し』を止めることが出来るんだ。細川なんて相手じゃねぇよ。試合前に言ったよな、睨み返してやれってよ」


「でも…」


「いいか?」


そう言って純也が博司の耳元でなにやら『ゴニョゴニョ』を話し始めた。


「ええ!? 無理だよ!」


「うるせー!」


パシッ!!


「~~~っ!?」


再び純也の背中がまっすぐ伸びたのだった。


***



「そうだな…相手の11番は今まで通り無視でいい。割と細川から得点が取れているな。今まで通り中をつかって確実に攻めていこう」


『オス!』


黒沢高校のベンチでは作戦会議が行われていた。


「後は6番(純也)と8番(亮)を調子に乗らせないこと。敵の確率の高いシュートさえ潰していけば問題ない。永瀬のカットインはしっかりと警戒するようにな」


「6番ねぇ。もうビビっちまって俺がいるゴール下では何もしてこねぇよ」


細川が不気味に笑った。確かにここまで純也の得点は全くない。完全に黒沢高校のゴール下に抑えられていた。


「8番だって簡単に抑えてみせるよ。敵はタダでさえパスコースが限定されているようなものだろ?」


「ああ、確かにそうなんだが…」


(俺の目に狂いが無ければ…)


「………」


考え込む力也を不満そうに見つける鉄也だった。


***



やがで第二クォーターの開始を告げる笛が鳴り響く。選手たちは作戦会議を終え、サークル中央へと向かっていった。


審判の手からボールが上空に向かって放り投げられる。それに跳びつくのは細川と博司だった。


パシッ!


細川の方が、やや勝っているようだった。弾かれたボールは鉄也に向かっていく。


そして鉄也がそのままゴールに向かってドリブルを始めた。


キュキュキュッ!



亮が着いていく。彼もディフェンスに自信のある選手だった。進藤は一度フェイントをかけると亮を抜き去ろうとする。


(いかせねぇよ!)


亮がそれに喰らいついて行った。進藤は他の選手にパスを出すと思いきや…


再びゴールに向かって距離を縮める。亮は間違いなく着いて行ってるのだが、身長差を利用されてしまい、進藤は上からシュートを放とうとしていた。


(くっ……!)


そして亮がブロックするよりも先にボールが手から放たれた。



ドン…カサッ!



一度ボードに当たったボールはそのままリングを通過して落下したのだった。


『わああああああ』


『いいぞいいぞし・ん・ど・う!!』


会場全体が沸いていた。進藤は一度亮を見ると、そのままディフェンスへと向かった。取り残された亮は悔しそうな表情を見せる。


その後も第一クォーターと同じような展開が続いた。朱雀が薫、亮のスリーポイントシュートで巻き返すが、黒沢高校は細川を起点として確実に点を重ねてくる。更には亮にライバル心を燃やしている鉄也も確実にゴールを決め、事態は悪化する一方だった。


そして…


「よこせ!」


インサイドに入った細川に鉄也からパスが出される。この試合、何度もみたパターン。しかし、このワンパターンでさえ朱雀は止められないでいたのだ。


細川がドリブルをしながら確実にゴールへの距離を縮める。博司が頑張って着いていくが、当たり負けしているようだった。


「博司!」


突然純也が叫んだ。その言葉を聞いた博司は何かを思い出したように呟いた。



「お、お前のそのヒゲ…」


「ん?」


何か呟き始めた博司に細川が注目していた。


「ひげ、その…にあわねぇな」


博司には似合わないセリフだった。恐らく純也から吹き込まれたものだろう。


「へっ…あの6番のサルに言われたのか。たがな!」


細川が一気に押し込んできた。それに合わせて博司が一気に腰を落とした。


「なにっ!?」


細川の前進が一気に止まった。幼いころから農業で鍛えられた博司の強靭な足腰は簡単には止められない。


(壁か!? まるで目の前にでかい壁があるようだ)


「た、たいしたことないな」


再び博司から棒読みに近いセリフが吐かれる。


「それもあのサルに言われたのか?」


その言葉を聞いた博司の目つきが変わった。


「いえ、これは…自分の意思です。本当に思ったより対したことなくて」


「てめぇ!!!」


細川が更に力を入れた。そして振り向きざまにシュートモーションに入る。


「うわあああああ!」


博司が得意なブロックショットを繰り出した。


「な、なんだこいつ!?あまり跳んでないはずなのに…そ、そうか、リーチが長いのか!」


ジャンプをして高いところにいけるのと、最初から高いところに有るのとでは全然違う。細川が放ったシュートを博司が綺麗にブロックした。


バシッ!


「おめぇが力を出せばそんなもんだよ!」


ガッツポーズをして自分のことのように喜んでいる純也の姿があった。






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