No.14 反省
「おっしゃあ!間に合ったぁ〜!!」
教室に入り時計を確認してみたらどうやら間に合ったようだ。
「ふぅ〜」
「どうしたんだ?かなり疲れているな」
いつものように優が話し掛けてくる。
「朝から色々あってな」
「そうか……」
俺たちが話していると久留美が近づいてきた。顔はどこかニコニコしている。
「あら、純也くん」
「くっ、久留美!お前を待っていたら遅刻しそうになったぞ」
「あら、ごめんねぇ〜。忘れちゃったの〜」
ごめんとは言っているが謝る気はあまり無さそうだ。
「はぁ〜……忘れるなんて久留美は幼稚だな。ホラ、タコでも食うか?」
そう言って俺はタコを取り出す。
「いらないわよ!って、このタコ生きてるじゃない!!」
「君の姉さんからさ。素敵なプレゼントだね」
「お姉ちゃん?まったくもう……」
「え?久留美、タコいらないのか?」
「だからいらないわよ!!」
そう言って久留美は立ち去ってしまった。
「なぁ優」
「……食わないぞ」
「……そうか」
――――――
――――
――
時は昼休み。
その場で弁当を食べるもの、購買へと向かうものさまざまだ。
俺は弁当を手に入れるべく久留美に向かう。
「久留美」
「ん?何、純也くん?」
久留美はとてもニコニコしている。
「弁当も忘れたわけじゃないだろうな?」
「忘れるわけないじゃな〜い。ハイ、お弁当」
俺は弁当を受け取り中身を見る。
「………」
「どぉしたの?純也くん」
「久留美、これはなんだ?」
「何って、お弁当じゃない」
俺はもう一度弁当を見る。
ごはんの上に梅干しが一つ乗っかっている。
まさしく絶滅種の『日の丸弁当』というヤツだ。
「久留美、この手のギャグはやめてくれないか?洒落にならん」
「ギャグなんかじゃないわよぉ〜。たんと召し上がれ〜」
「久留美、昨日から様子が変だが怒っているのか?」
「別に怒ってなんかないわよおぉ」
「そうかそうか、腹が減っているんだな。よしよし、このタコを――」
「食べないわよ」
「……そうか」
オカズをもらう作戦が無いわけではない。
俺は叫んだ。
「お〜い、クラスのみんな!聞いてくれ!」
クラスメイトたちの視線が俺に集まる。
「久留美が俺にこんなもん食わせようとするんだ。助けてくれ!」
そう言ってタコを取り出す。
うねうね
タコは相変わらずタコ踊りを続けている。
『おい!あれ生きてるんじゃねえ?』
『まじかよ!春風!いくらなんでも可愛そうだろ!』
『いくら純也だってそりゃないだろ!』
『火星人みてぇだ!!』
中にはよくわからない声も聞こえてきたが、とりあえずうまくいったようだ。
『ほら、純也!そんなもん食ってないでコレでも食え』
『俺もやるよ!!』
ごはんをかたずけるのに必要なオカズは集まった。
「うう、みんなありがとうな」
そう言って俺は久留美に言った。
「ふふ、どうだ?」
「もう知らない!!」
久留美は教室を出ていってしまった。
「……なに怒ってるんだアイツ?」
「いや、純也。今のはひどいだろ」
優が突然話し掛けてきた。
「なんで?」
「久留美ちゃんだってがんばって弁当つくってきてるんだぜ?」
「日の丸はないだろ」
「はは、たしかにな。でも謝ったほうがいいぞ」
「そうか?」
「ああ」
――確かに俺が悪い気がするなぁ。
「ま、そのうちな」
そう言って俺は弁当を食べた。