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No.139 ぶっ潰す

今日は男女合わせて四試合行われる。第一試合の 白川第一 対 伊勢崎工業 の試合は序盤から白川第一が圧倒的実力を見せつけ、104 対 67 の大差で決勝進出を決めた。それも途中からは二軍選手を起用していたということで、白川の本当の実力はまだまだ発揮されていないと考えてもいいだろう。


そして続く第二戦。朱雀高校の部員達は女子の準決勝の試合を見つつも、自分たちの出番である次の試合に備えていた。控え室で薫が部員達に気合をかける。


「ついに黒沢戦だ。関東大会では負けてしまったが、俺たちもあの時からは比べ物にならないほど成長している。俺の目から見ても、決して戦力は劣っていない! 気持ちだけは絶対に負けるなよ!」


『オス!!!』



部員達の表情がガラリと変わった。前回の大会では純也が居なかったために、今回はどれだけ対抗できるのかが楽しみである。その証拠に純也は「しゃあああ!」と叫ぶと、笑を浮かべて手の骨を鳴らしている。


「知っての通り、黒沢高校は平均身長が県内トップだ。身長差があると、どんなパターンに気を付けないといけないのか…亮、言ってみろ」


亮が「はい!」と答えると、迷いなく次のセリフを言った。


「インサイド攻撃が怖いですね。当然外よりも中の方がシュートの成功率も高いわけですし、そこを抑えられやすいのは俺たちにとって不利なことでしょう」


「そうだな。更に気を付けないといけないことは、インサイドにボールを入れられたことにより、外に死角が出来やすいということだ。現に黒沢高校の副キャプテン『中野翼』はスリーポイントを武器にしているので更に注意が必要になってくる。かと言って外だけを警戒していれば、中野はカットインも得意なので一気に押し込まれる可能性もあるな」


『じゃあ、一体どうすれば…』


部員達からそんな声が聞こえてくる。薫は初めから答えが決まってたかのように即答してくれた。


「俺が相手のエース『安倍』を抑える。博司は大変だと思うが『細川』を頼む。練習通りにやればディフェンスでは十分にやれるはずだ。」


「ふぁい!」


博司が背筋を伸ばして返事をした。細川とは、県内3大センターの1人だ。髪を後ろに1つにまとめ、アゴには髭を生やし、高校生らしくない姿をしている。気性が激しく、荒々しいプレーも見られる。


「永瀬は『外』を持っている中野を止めてくれ。チェックが中や外に行ったり、色々と忙しいかもしれないが、永瀬にしか頼めない仕事だ」


「了解」


永瀬はクールに一言だけ答えるとまた静かに黙って薫の次の言葉を待つ。


「実はここまではそんなに身長差が無い。実力もそこまで離れてはいないだろう」


実際、県内に薫を『完璧に』止めることの出来る人物はいないのだが、薫は謙虚にそう言った。永瀬も薫まではいかないが、かなり能力の高い選手なので、互角以上で渡り合えるというのが、ここまでのマッチアップの予想だろう。


「ここからが踏ん張り所だ。純也は渡辺将についてもらう。身長は188cmとかなりのミスマッチだが、お前ならやれると思う。スタミナに定評のある選手なのでナメてかかると痛い目に遭うぞ。そして亮は関東大会の時と同じ進藤鉄也を頼む」


『はい!』


『またザコキャラかよ。しゃあねぇな、任せろよ!』



亮は関東大会では進藤に完敗しているために、気合の入り方が普段とは違うようだった。


「戦い方としては、『外』の撃ち合いは絶対に負けるな。しっかりと得点して、丁寧にディフェンスをすればそんなに差は開かないということが城清高校を見ても分かるはずだ。彼らから学ぼう。あと1つ…」


薫は険しい顔つきになり純也の方を見る。



「純也、お前に期待している」


「な、なんだよ今更」



あまりにも突然の事だったので、純也が驚いているようだった。照れ隠しなのか、目があちらこちらに泳いでいた。



「永瀬は中野のチェックに行っているため、リバウンドに参加出来ないこともあるだろう。そこで博司、純也、俺が全力でゴール下を守るんだ。純也の相手は15cm以上も背が高いが、お前ならきっと出来るはずだ」


「そういうことかよ。任せとけよ」


「身長差にビビるな。正面からぶつかろう。絶対にリバウンドでもポストプレーでも負けるな。皆、勘違いしないでくれよ。 『中』があっての『外』だからな」


誰が予想したであろうか。長身のチームにあえて「ガチンコ勝負」を挑むと薫が言っているのだ。


「速攻も自分よりも永瀬が加わることが多くなる。大丈夫、俺はその後スリーで稼いでやるさ。後の作戦は現場を見てからだな」


『おっす!!!!』



部員達の掛け声の後純也が叫ぶ。



「やり返してやろうぜ!!てめぇらビビんじゃねえぞっ!!!!文字通り正面から『ぶっ潰して』やろうぜ!!博司はガン飛ばしてやれ!」


「う、うん!」


『純也の言うとおりだよな!』


『頑張ろうぜ!』



一年生ムードメーカーの純也により、朱雀の勢いは最高潮に達していた。



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