No.136 教育ママ襲来!?
黒沢戦は早めに投稿したいなぁ。目標ですがw
部活動が終わり亮と我利勉の2人は同じ自宅への帰路を歩いていた。というのも現在我利勉が家庭の事情から「家出」をしている最中であり、その間は1人暮らしの亮のアパートへと間借りしているのである。
自宅につき、早速2人で明日の試合の話題となる。明日は進藤力也監督率いる競合「黒沢高校」との試合があるのだ。
「薫さんは、ああ言ってくれたけど、今の俺で黒沢に通用するんでしょうかね…」
亮は先ほどの練習のことが今だに気になっているらしい。我利勉は心配した様子でそれに答える。
「大丈夫ですよ。不思議とキャプテンが言ったことは現実になりやすいからね。あまり気にしすぎるとかえって動きが悪くなると思うので、いつもどおりのプレーをするべきだよ。」
「そうですか…」
一応亮は納得した様子だったが、まだ何か自分の中で引っかかっているらしかった。軽い返事をした後にまた1人で考え込んでしまった。そして暫くしてから口を開く。
「明日の試合、俺の予想なんですが、我利勉さんが『キーマン』になるんじゃないかって思うんですよ」
「ええ!? 僕がかい?!」
「ええ」
亮はしっかりと我利勉の方を向いて答えた。その目からはとてもお世辞で言っているようには思えなかった。
「黒沢高校の平均身長は189cmです。そして自分たちは10cmほど低い181cm。永瀬さんの実力は十分に知っているつもりですが、それでもインサイドだけでウチが黒沢を崩せるとは思いません。博司もオフェンスはまだまだですからね」
「確かに、ミスマッチは気になりますね…」
「ミスマッチを埋めるために、明日の試合、薫さんは中で働くことが多くなるはずです。オフェンスでもディフェンスでもね。そうすると純也よりも『外』を持っている我利勉さんの方が相性がいいと思うんです」
「で、でも…僕が純也君に外以外で勝っているとは思えない。特に僕のスタミナはチームでも下から数えたほうが早いから…」
「勿論純也が居ることのメリットも理解しています。ヤツは20センチほどのミスマッチなら十分に克服できる『当たりの強さ』や『ジャンプ力』を持っていますからね。それでもワンポイントでかまわない…我利勉さんの力が必要な時が来るはずです」
亮はそう言って我利勉を鋭い目つきで見つめる。我利勉は一瞬圧倒されそうになったが、すぐに気持ちを切り替えて返事をした。
「頑張るよ。自分の力がどれくらい通じるか分からないけど、『シックスメン』として、いつでも戦える準備をしておく」
その時だった。
ダンッ!!
亮のアパートの扉が勢いよく開かれる。そして物凄い足音が自分たちのいる部屋に接近してくるのがわかった。亮と我利勉の2人は身構えつつも、その足音の人物を確認する。
「か、母さん…」
「翔ちゃん!こんな所にいたのね!早く帰るわよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! どうしてこの場所が…」
我利勉次の言葉を伝えようとした瞬間、薫が亮の部屋に入ってきた。
「我利勉…本当にすまない。流石に警察を呼ばれてはまずいと思ってここを教えてしまった」
朱雀高校のキャプテン、薫が入って来て我利勉に謝罪した。
「いやいや!キャプテンは悪くないですよ!母さん!頼むから部員の人には迷惑をかけないでくれよ!」
その言葉を聞いた我利勉の母親は、顔を真っ赤にしながら怒鳴りつける」
「アナタ!最近学校の成績を下がってきたでしょう!! 入部する時に約束したじゃない、成績に響いたらやめさせるって!」
「ま、まぁまぁ、お母さん落ち着いてください。我利勉君は十分に頑張って…」
薫がフォローに入るが、母親はキッと睨みつけ言い放った。
「そもそも進学校でここまで部活動に力をいれる必要はあるんですかね!? 毎日遅くに自宅に帰ってきて、母さんはどれだけ心配していると思ってるんですか!」
「母さん!本当にやめてくれ!部員の人には迷惑をかけないで欲しいんだ。薫さんは俺のことを心配してくれているだけだし、あまり酷いこと言わないでくれよ!」
「何!? お前が母さんにここまで反抗するなんて… これも全部バスケットのせいだわ! とにかく今日は家に帰らないと警察に連絡しますからね!」
「け、警察…」
我利勉の顔が一気に青ざめる。今ベスト4を決めた朱雀高校にとって大事な時期なので、警察沙汰を起こすわけには行かない。それにヒステリックを起こしている母親には何を言っても無駄だと悟ったのか、我利勉はそのまま母親と自宅に帰ってしまった。
取り残された薫が亮に話しかける。
「すまなかったな…。いきなり自宅に来られたものだったからついつい…」
「仕方がないですよ…我利勉さんの家は結構厳しいって部内でも有名でしたからね…」
「とにかく、明日の朝もう一度様子を見よう。と言っても試合当日なんだがな…。亮も気持ちを切り替えて明日に備えてくれ。じゃあな」
バタンッ!
ドアの閉まる音が聞こえてくる。
「マジかよ…我利勉さんがいないのか…」
――――ちとキツイかな…
そう思いながら明日の準備に取り掛かる亮であった。