No.12 純也VS亮 後編
10話です。ここまで読んでくださった方、ありがとうございますm(__)m
亮はステップでフェイントをいれ純也を撹乱する。
そして得意のクロスオーバーで一気に抜き去る。
キュッ!
「しまっ――。優!カバーを頼む!!」
「まかせろ!」
亮がドリブルで向かってくるのを優は腰を落として待ち構える。
レイアップシュートの体勢にはいった亮を止めるべく優も跳ぶ。
優のジャンプはドンピシャリのタイミングだった。
「よし!止める!」
「あまいな」
亮はそう言って一度シュートをしかけていた手をひっこめて優をかわし、空中で体勢を建て直し再びシュートをした。
スパッ!
見事に亮のダブルクラッチが決まった。
「う……うまいなぁ。今は完璧にやられたよ。さすがは黒沢からスカウトが来た人だ」
「優!なに感心してるんだよ!はやくせめるぞ」
優が亮に感心しているのを純也が注意をする。
再び純也ボール。
亮は純也をいつも以上に厳しくマークする。
「ちっ…こざかしいぜ」
純也はひとまず中に入った優へとパスをだす。
そして博司とマッチアップとなった優はドリブルで博司をかわしシュートをするため跳んだ。
「これで9点――」
優がボールを手放そうとした時だった。
「今だ!!」
突然亮が叫んだ。
それに合わせて博司が跳ぶ。
「うわぁぁぁ!!」
「何!?」
バァン!
優の放ったボールは博司の腕によってブロックされてしまった。
「よしっ!!よくやったぞ博司」
亮は博司に駆け寄る。
「亮くん……なにがなんだかさっぱり…」
「いいブロックショットだったぞ」
「ブロックショット?」
「ああ、そうだ。相手のシュートを阻止する……お前のその身長でブロックショットは武器になる。これからもっと磨いていくといい」
「う……うん」
その二人の会話を純也が止める。
「おい!たかがマグレのブロックがきまったくれぇで喜んでんじゃねぇよ!!今に負かしてやるからよ」
「ふ、今にみてろよ」
亮たちのオフェンス。
「博司!行くぞ」
「うわぁ」
亮のパスを博司が受け取る。
ボールをもった博司を優が厳しくマークする。
「届かねぇ!」
博司はボールを高い位置でキープをしているため、優はそのボールに触れることができなかった。
「り、亮くん。どうすればいいの!?」
優のプレッシャーが厳しく博司は亮に助けを求める。
「こっちだ!!」
亮は博司からボールを受けとる。純也からそのボールをカットされそうになるが必死にこらえ、なんとかボールを受け取った亮はそのままシュートをする。
ボールは一度ボードにあたり、その後リングに吸い込まれた。
「よっしゃあ!!4対7だ!!」
「ちくしょう!もうすこしでパスカットできたのによ」
純也たちの攻撃。
今度は優がガードになり、それに亮がディフェンスをする。
「優!こっちだ!」
優は純也へとパスを出す。純也は背中で博司を押すようにしてリングにジリジリと近づいていく。
「おらおらどうした博司!?お前の力はそんなもんか?」
「だ、だって、純也くんの力が強すぎ……」
純也の力により、博司は次第に後退していく。
それを見ていた亮は叫んだ。
「博司!負けるな!お前も決して力なら負けてないハズだ。教えたとおりにやってみろ!」
「教えたとおり……」
すると博司は腰を低くしてがっしりと構えた。足腰に力を入れる。
「な?」
このとき博司の後退がとまった。
純也は驚いた顔をしている。おそらく力で止められたのは初めてだろう。
純也はいったんボールを優にかえした。
「もらったっ!!」
それを狙っていた亮はすぐさまボールに飛び付き、スティールする。
「博司、お前なかなかつえ〜な」
純也がめずらしく博司をほめる。
「そ、そう?」
「ああ、お前小さい頃から農業手伝ってたろ?」
「うん。そうだけど………それがどうかしたの?」
「ば〜か。それが知らないうちにお前の足腰を鍛えてたんだよ」
「そ、そうなんだ。知らなかったよ」
「よし!お前に『畑のボス』の称号を与えよう」
「畑のボス!?」
「まあ、意味は特にないんだがとりあえず喜べ」
「え?なんで?」
「喜べ」
「や、やった〜」
ゴン!
「痛!なにするんだよ純也くん!?」
「喜んでねぇではやく試合を再開するぞ!空気読めよ」
「ええ!?」
その後波にのった亮チームはすぐに追加点を決めて、6対7と純也チームにせまる。
更に博司のマグレのブロックなどで相手のオフェンスを阻止し、亮が点をきめる。
これで8対7と亮チームが逆転した。
「純也、逆転したぜ?」
「ちっ、調子に乗らせすぎたか……」
優がボールを持ち、純也たちのオフェンスが始まった。
「優」
純也が真面目な顔で優にパスを求めた。
「ふ、なるほどな」
優はそうつぶやき、パスを呼んでいる純也にパスをだす。
そして、博司を睨み付けて一言、
「わりぃな。黙って負けてやるほど俺は優しく無いんでね」
そう言って先程のように背中で博司を押すようにしてリングにむかう。
それを博司は体をはって止めるのだが、
「え!?」
全力をだしているにもかかわらず博司はズルズルと後退してしまう。
「純也くん!!さっきとは全然違うじゃないか!?」
「まあな。お前程度ならわざわざこんな力で勝負しなくても抜いて普通にシュートは決めれるんだが………俺は負けず嫌いなんでね」
そのまま純也はゴール下まで行き、思いっきりジャンプする。
「う、うわぁぁ」
そのままびびる博司の上からダンクをかました。
ダァン!!!
リングが揺れ、キシキシとした音が鳴り響いた。
「ま、これが俺とお前の違いってヤツだ」
唖然とする博司。これで、9対8となった。
「あと一本決めたほうが勝ちだな」
亮が口を開いたときだった。
体育館の入り口付近である人が試合を見物していることに亮は気付く。
その人物が近づいてきた。
「か、薫さん!」
その人物の正体は薫だった。亮は驚いた顔をしている。
「いつから見てたんですか?」
「ん?最初から見てたよ。いい試合だったね」
「薫さんはどうしてここに?」
「いや、バッシュを忘れてとりにきたらたまたま試合をしてたんだ」
「そうだったんですか……すみません。ボール磨きの最中に……」
「いいって。それより君たちはなかなか凄いものを持っているな。純也や亮はわかっていたが、正直博司も練習次第ではうまくなりそうだ。それと……そこのキミ」
薫は優を指差した。
「ええ!?俺ですか?」
「そうそう。君はうまくなる。バスケをやってみないか?」
その言葉に優はすこし悩んでから答える。
「すみません……俺、バンドが忙しいんで……」
「そうか別に無理はしなくていいが……残念だ。しかし今年の一年生は凄いヤツが集まったものだ」
そして薫はボールを拾う。
「俺もすこし練習していこうかな?」
そう言ってリングにむかってシュートする。
パスッ!!
ボールはリングの淵にはあたらずに綺麗に吸い込まれた。
「木下薫!!俺と勝負しろ!!」
と純也。
「薫さん!シュートフォームを見てくれませんか!?」
と亮。
「せ、先輩!!ぼ、僕にその……ディフェンスを教えてください!!」
と、更に博司。
薫は一瞬驚いた顔をしてから、
「あ、ああ。一度に全員は無理だから一人ずつな」
その言葉に一年生三人(純也、亮、博司)は……
「うるせぇ!!黙って俺と勝負しやがれ!!」
「薫さん!!教えてください!!」
「ぼ、僕にディフェンス……」
純也・亮『うるせぇ!博司は黙ってろ!!』
「うう……」
こうして練習は学校が閉まるギリギリの時間まで行なわれた。
ちなみに純也の戦績は……11戦1勝10敗だった。
そのうちの1勝は先にゴールしたほうが勝ちと言うルールを純也がつくり、試合開始早々てきとうに放り投げたシュートがマグレで決まったものだ。