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No.108 恐怖

「ちょっと! 離しなさいよ!」


久留美は自分を抑えている手を振りほどこうとするが、集団の前ではまったく無意味だった。


そしてそのまま無理矢理車に乗せられる。


エンジンがかかり、やがて窓に映る景色が流れ始めた。


 久留美が激しく抗議するが、すべて無視をされる。


暫くして車が止まり、降ろされる。そこは久留美にとって見慣れた場所だった。


張り替えた張りの壁に真新しいバスケットリング。みんなでお金を出しあって買った照明。


 ここは純也達が小さいこれからバスケットをしていたコートだった。


「こんなところにつれてきて……一体どうする気? 理由によっては許さないんだから!」


この思いでのある場所で何か変なことが起こるのが許せなかった。しかし、ある男が久留美の前に歩みより話しかける。


「どうもしねぇよ。お前が純也を呼んでくれたらな」

その男だけ、他と雰囲気が違っていた。どうやらこのグループのリーダーらしい。


「いやよ。絶対にいーや!」


久留美がそっぽを向いた。それを見た集団のリーダーがメンバーに命令を出す。


「携帯だ。そこから純也の番号を調べろ」


命令を聞いた他のメンバーが久留美の周りを囲んだ。


「ち、ちょっと! ふざけないで!」


『うるせぇよ。早く貸しやがれ!』

 

その時、久留美のバックから一枚の古びたカードが出てきた。水を吸ってしまったらしく、ふやけていた雰囲気がある。大事にケースに入れられていた。

 

『ん? なんだこれ』

 

『俺、これ知ってるわ。たしかメガトラマンじゃね?』 

 

『懐かしいな! ははは』 

「だめ! それだけはだめ!」

 

 慌てた様子の久留美を見て一瞬静まりかえったメンバーだったが。


『凄い趣味でちゅねー!』 

 

 馬鹿にしたようにそう言うとカードを地面に捨てて携帯を探し始める。

 

 

 そして、久留美の携帯を見つけたメンバーは、すぐに純也の連絡先を調べ始めた。



パシッ!


高い音が鳴り響いた。久留美がメンバーの頬を叩いていた。


「信じられない……最低…」


久留美は怒りで震えながらメンバーに言い放つ。


メンバーはニヤリと不気味に笑った。そして――。


パシィッ!


「――っ!?」


そのまま久留美の頬を平手で殴った。久留美は一瞬何が起こったか理解出来てないようだった。そしてゆっくりと頬に手を当てる。


「そんなにヤられてぇのか!? 次は平手じゃすませねぇからな!」



久留美は震えていた。先程とは違った感情で。


そんな久留美を無視してメンバーは携帯を調べ始める。


『お? このジュン、ってヤツじゃねぇ?』


『いいから早くかけろよ』


――怖い…。



――怖いよ…。



――ジュン…。



     ***



朱雀高校。家庭科室で鍋の準備をしていた薫のもとへ顔色を変えた純麗がやってくる。


「薫ちゃん!」


「ん?」


薫が声に気付き、後ろを振り向いた瞬間抱きつかれていた。


「ん? ど、どうした?」


あまりにも急な展開に、薫は驚いている様子だった。しかし、震えている純麗を見てすぐに察した。


「久留美ちゃんが…」


降り始めの雨のように、ポツリ、ポツリと言葉が出てくる。


「それで……わた…し……こわくて…え……っと」


やがて何を言っているのかわからなくなる。薫は「もういい」と言って頭を撫でた。そして、


「他の部員達が来たら予定通り準備をしてくれ! 危ないから絶対に教室を出るな!」


そう言って純也を探しに勢い良く教室を飛び出した。


――――――


――――


――




「てめぇ! 鍋っつったら糸コンだろ!」


「いいや、玉コンだ! これだから馬鹿犬は困る」


買い出しに出かけた二人はスーパーで、いつものように食材の言い争いをしていた。

周りの人がチラチラと二人を見ている。そんな中純也の携帯が鳴った。


「あ? なんだ久留美か」 

 

そう言ってから電話に出た。さりげなくカゴに糸コンを入れようとしている亮を無言で阻止する。


「よう、久留美! 鍋っつったらやっぱり玉コンだよな! ……ん? 誰だお前?」


純也の表情が変わる。そのまま電話に対応する。


「ああ、わかった。場所は? 」

 

そして電話をきった。真面目な顔をして亮を向く。


「買い出しはまかせた! ちゃんと玉コン買えよなっ!」


「ちょっと、お前! 俺一人で持てる訳――」


亮が全部言い終わる前に純也は駆け出していた。


「ちっ…昔っから世話がやけるぜ」



少ししてから薫が亮の前に現れた。


「純也はどこだ!?」


「ど、どうしたんですか急に」


血相を変えてやってきた薫に、圧倒されつつも亮は答えた。


「先程久留美ちゃんから電話が来たらしくて、電話が終わると同時に勢い良くどっかに行きましたよ。まったく…どうやって食材を持って帰れば…」


「場所は!?」


「い、いや…わかりません」


「そうか…」


どこかに立ち去ろうとする薫を亮が呼び止める。


「どうかしたんですか?」


「実は春風が――」


薫の話を聞き終えると、亮も薫と一緒に走り出していた。



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