No.102 犬猿の仲
前回少し長かった分、今回は少し短めになりました。大会になると連続して試合になると思うので、もう少しだけ合宿編にお付き合い下さいませ。
懐かしいですねー合宿(遠い目)
夕食後の体育館にて。今日何度目かわからない純也と亮の喧嘩が勃発していた。
「さっきからなにかと俺につっかかって来やがって! 猿舞わしされてぇのか!」
「こっちのセリフだ負け犬亮!」
コートで睨みあっていた。他の部員は遠くから深刻にその様子を見て……
『よし次は俺オフェンスな』
『あ、やっべ! 外した!』
などはいなかった。二人の喧嘩がすでに日常の風景になっているのだ。みんなそれぞれ自主練習をしている。
そんな中、亮が言った。
「こんなこと繰り返しても意味がねぇ…。俺らはバスケットボールプレイヤーだ」
亮の言いたいことが分かったようで、純也は腕の骨を鳴らした。
「一対一で白黒つけようじゃねぇか! ただやるのは面白くねぇ……」
不気味な笑みを浮かべながら純也が言った。
「負けた方は今日の夜に全員の前で全裸になって『三回まわってワン』だ!」
負けた方は勝った方に腹を抱えて笑われるうえに、この先ずっと三年間バカにされるに違いない。
「おもしれぇ……全裸だろうがなんだろうがやってやらぁ! おい、必ずやれよ!」
「俺に勝ってから言うんだな!」
これは燃えない訳が無かった。意地とプライドにかけて。
『最初はグー、じゃんけんぽん、あいこでしょ、あいこで――』
喧嘩の時とジャンケンの時の温度差がなんだか妙にかわいらしかった。――――――
――――
――
その頃博司は、三年生たちに混ざって練習をしていた。
「リバウンドは一度しか跳ばないとは限らないぞ。キツイだろうが連続して跳ぶということを心がけろ」
「ふぁい!」
永瀬の言葉に博司が返事をした。永瀬は博司が入部するまでセンターをしていたために、教えることがあるみたいだ。
すぐ近くでは薫と小田原くんが一対一で汗を流していた。
「最初にブロックされた時に気付いたんだが、博司はリーチが長いよな。失礼な言い方になるがあまり跳んでないのにそれなりの高さがある」
「そ、そうですかね」
最初、とは博司と純也が初めて試合形式の練習に参加したときだ。
永瀬がシュートしたボールをリバウンドしてから博司は言った。
「将来性がある。このまま努力を続ければ二年後にはきっと良い選手になれるさ」
「が、頑張りますっ!」
以前永瀬は薫との会話でも言っていた通り、博司の日々の努力を認めていた。最近では何かと会話も増え口には出さないが、永瀬のお気に入りキャラとなっている。
やがて薫が体育館にいる部員達に向かって叫んだ。
「そろそろ銭湯に行かないと。早くしないと閉まるぞー」
その言葉を聞いた部員達はボールを片付け、薫についていった。
――――――
――――
――
***
くっ、亮の野郎…。また速くなってやがる…。亮が突っ込んできてボールを左右切り替える。
「くっ…」
低い…犬みてぇなドリブルしやがって!
そして亮がシュートモーションに入った。それにあわせて俺も跳んだ。
なにっ!? フェイントかっ!
亮が後ろに倒れながらシュートを放った。ブロックが間に合わない!
スパッ!
「これで同点だ…はぁはぁ…次決めた方が勝ちだな…」
「風呂でみんな居なくなっちまったし、これで終わらせてやるよ!」
「ほざけっ!」
ヤバイ…風呂にも入りたい…。こうなったら…。
「あ、お前の後ろに幽霊」
「え!?………って」
亮は一度後ろを向き、素早く前方を向いた。
「んな古風な手に騙されるかぁ!……あれ」
亮の視野から純也が消えていた。そして――。
ドスッ!
亮が後ろを向いている間に、純也が軽く加速をつけ亮の頭の上を開脚して跳んでいたのだ。しかしジャンプ力が足りず純也のアレが亮の顔に激突した。
なんとかギリギリダンクを決める。
ガァァン!
リングにぶら下がった純也が叫んだ。
「うおーっ! キン○マいてぇぇえ!」
そして起き上がった亮も叫んだ。
「テンメェェ! 降りてこい! キタネェもんぶつけやがって!」
結局試合はドローとなった。この二人が仲良くするのは難しいかもしれない…。
こうして純也と亮は皆からの遅れを取り戻すために急いで銭湯に向かったのであった。