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No.10 年上の魅力

キーンコーンカーンコーン


『さようなら』


学校の終わりを告げるチャイムが鳴る。


「ふわぁ〜」


俺は欠伸をしながら背伸びをする。学校が終わったことはうれしいのだが、これから始まる部活のことを思い出してしまう。


「何で俺が部活……」


「よう、ジュン。どうした?」


いつものように優が俺に話し掛けてくる。


「見りゃあわかんだろ?」


「あ、悪い悪い。部活だったな」


「ああ」


そう言って俺は自分の席から立ち上がる。このまま席に座っていても久留美に強制的に体育館へ連行されてしまうからだ。


「じゃあな優。バイトがんばれよ」


そして俺は久留美に声を掛けようとしたときだった。


「あ、ジュン」


優に呼び止められた。


「なんだ?」


「いや、俺今日はバイトは休みなんだ。だからお前の部活を見学に行こうと思ってな」


はぁ?いきなり何言ってんだ?


「言っとくがあんなもん見てもなんも面白くねぇぞ」


「かまわね〜よ。どうせ暇つぶしだ」


「……そうか」


カランカラン


「ん?」


話をしている途中、突然優の足元に一本のシャープペンシルが転がってきた。

一人の女子生徒がこちらを見ているのでソイツが落としたものだろう。


優はそのシャープペンシルを拾い、その女子生徒に手渡す。


「はい、落とし物」


『あ、ありがとう』


その女子生徒はお礼を言ってから女子が会話をしている集団にまじる。



『キャー!優君としゃべっちゃったぁ』


『ええ!?いいなぁ』


『それでね、優君って優しいんだよ』


『へぇ』


そんな会話が聞こえてくる。

ちっ気に入らねぇ……

まあ、優だから別にいいんだが……

そういえばコイツは結構モテるんだよな。顔も結構かっこいいし。


「優君はどこかの誰かさんと違って優しいもんねぇ〜」

突然久留美が俺に向かってわざとらしく言ってきた。ちくしょう、負けてたまるか!



「ほんとだな。どこかの誰か『ちゃん』と違ってなぁ」


俺はわざとらしく久留美をみながらそう言った。


「ちょっとぉ!誰かちゃんって誰よ!!」


「久留美ちゃんだよぉ」


ふふふ、まだまだだな久留美。


「なんですって!?」


「まあまあまあ」


優が俺たちの口喧嘩の仲裁に入る。

さらに久留美に言った。


「そういえば久留美ちゃん、バスケ部のマネージャーなんだって?がんばるねぇ」


「うん。楽しいから大丈夫。そっちのバンドの調子はどう?」


「いい感じだよ」


久留美は昔、俺と優ががストリートバスケットをやっている所にたまに見学に来ていたので優とは昔からの知り合いだ。


「じゃあ私、他に用事があるから先に行くね。ジュン、サボらずにちゃんと部活にきなさいよ?」


「へいへい」


久留美はその言葉を残して教室をでていってしまった。


「はぁ、めんどくせぇ」


「ははは、がんばれよな。ジュン、早く体育館にいこーぜ」


「……見学組は気楽でいいな」


「……まあな」


そんな会話をしながら俺たちは体育館へと向かった。

――――――

 

――――

 

――

 




「集合!」


練習中に突然キャプテンの木ノ下薫の集合がかかった。

部員全員、体育館の入り口に集まる。



「え〜、マネージャーのほうから話がある」


薫は突然そんなことを言い始めた。


『はい』


呼ばれたマネージャーが前にでてくる。

前にでてきたのは久留美ではなく知らない女だった。


「ん?亮、あの人誰だ?」


俺は長谷川亮に聞いてみた。


「ん?ああ、そういえば最近あの人部活にきてなかったからな」


亮はそういって話を続ける。


「あの人は三年のマネージャー、赤川純麗〈あかがわすみれ〉先輩だ。ここ何日かは家の花屋が忙しいから部活に来てなかったんだ。可愛いし性格は良いし結構モテるぞ。まさにバスケ部の天使ってヤツさ。まあ、俺は久留美ちゃんのほうがいいがな」


ふ〜ん。最後の言葉は納得いかないが……。

身長は久留美より少し大きいかな?サラサラとしたショートヘアーがいい感じ。顔は大人っぽく綺麗だ。

と言うか……



俺のタイプじゃん!!



三年マネージャーの赤川純麗は話しをはじめる。


「今週の日曜に練習試合があります。相手は池山工業。場所は池山工業の体育館です」


おー


突然のことに大半の人は驚いている。


赤川純麗の言葉に木ノ下薫が続く。


「まあそんなところだ。池山工業は最近力をつけてきているチームだ。県でもベスト16には入っている。戦力は朱雀と同じくらいだと思うので、うちの走るバスケをしっかりとやっていこう」


オス


「それじゃあ、練習再開」


キャプテンの指示により練習が再開された。


「練習試合か……よし!!やってやるぜ!」


今週の日曜っていったらあと三日後だな。


俺がなんとなく気合いを入れていると


「ねぇ、キミが新しい部員の純也くんだよね?」


三年生マネージャーの赤川純麗さんに声をかけられた。近くで見るとさらに可愛いなぁ。


「え!?あ、はい!!私が新入部員の期待の星、石川純也でありまっす!!」


赤川純麗さんは俺の言葉を聞いて、口元に手をあててクスクスと笑った。


「そう、期待の星なの。頼もしい新人さんね」


「はい!でもキャプテンは基礎練習しかやらせてくれませんであります!ヒドイであります!」


「あら、薫君はアナタに期待していたわよ。ついこのあいだも『いい新人が入ったんだ!』って私に――」


「オホン!」


純麗さんの話を隣で聞いていた薫が咳払いをして止める。


「クスクス」


純麗さんはそんな薫を見て微笑していた。

俺は薫のほうをじっと見てみる。


じ〜


「………」


じ〜


「オホン!純也、お前はさっさと特別メニューだ。いそげ」


そう言って薫はコートに向かって走っていった。



「ちっ、シャイなキャプテンにも困ったものだぜ」


「ふふふ、おもしろい人ね。じゃあ純也くん。練習頑張って」


「はっ、はい!」


可愛いなぁ……


そう言って赤川純麗さんは仕事があるのか体育館の入り口へと向かっていった。


俺がじ〜っと後ろ姿に見惚れていたらたまたま後ろを振り返った純麗さんと目が合ってしまった。

始めはすこし驚いた表情を見せたがすぐに

『バイバ〜イ』

といった感じで笑顔で手を振ってくれた。

そして体育館から姿を消す。



「はぁ、いいねぇ」


大人の魅力があっていい感じだなぁ…


そんなことを考えていたときだった。


「ねぇジュン」


「ん?」


声のした方を振り返ってみるとそこには今度は久留美がいた。


「う〜む……」


俺は久留美の全体を見渡してみる。


「ちょっ、な、何見てるのよ」


「久留美はまだまだ子供よのぉ」


「悪かったわね!!」


あ〜怒った。あ〜恐い。純麗さんとは大違いだ。これだからガキは困る。


「ねえ、ジュン。純麗先輩と何を話していたの?」


突然久留美が俺に聞いてきた。


「ん?あなたがいれば全国優勝は間違いなしね!期待してるわ!……みたいな話し」


「……ウソね」


久留美がポツリとつぶやいた。まあ、ウソだからしょうがないか。


「しっかし、純麗先輩はいいよなぁ」


「………え?」


「性格も優しいしな。そう思わないか久留美?」


「………うん」


「おまけに可愛いし」


「………」


久留美は下を向いて黙り込んでしまった。


「どっかの誰かちゃんと違って大人っぽいしな」


その言葉を聞いて久留美は顔をあげた。


「悪かったわね!!私が純麗先輩と違って可愛くなくてガキくさくてペチャパイで!!」


――そこまでいってねぇよ……


そう言って久留美はマネージャーの仕事をしにコートの近くに行ってしまった。


「……なんだアイツ?」


――よくわからんヤツだなぁ。さっ、練習練習っと。


「お〜い我利勉!練習するぞ!」


「わかった。今行く」



そして俺は我利勉を呼び基礎練習を始めたのだった。

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