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舞台の中心で微笑んでいた彼女が見れば
「知らない! 冬哉なんて、殺してない! 兄なんていない!」
彼女は『冬哉』の存在を知った。
そして、冬哉すらも知った。
全てを受け持つ『冬哉』と
全てから守ろうとする冬哉を。
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「春樹君、もしかして、幽霊でも見てる…?」
【事故】の日、弥生は私にそう言った。だが私にはよく解らなかった。首をかしげて弥生を見ていると、弥生は私の頭を見て口を開く。
「違うよね。春樹君、【冬哉】になりきっているんでしょ?」
私の頭にある鬘を見て、彼女はそう言った。彼女は、『冬哉』と会話する春樹を見てしまった。
春樹にとって冬哉は、『冬哉』は影で守るものでなくてはいけなかったのだ。
「【冬哉】がきてから、春樹君、不安定だったもの。だけど、最近元通りになったと思ったら、【冬哉】になりきって全部大変なところは『冬哉』に任せてるんでしょ」