自らの演じる舞台を見直して彼自身が影に目を落とす
私の体の直ぐ横に、頭から外した鬘が落ちる。その鬘は、『赤』。
弥生を――…『弥生』を死に追いやった色彩……
だが、私の手元から落ちた物はそれだけではなく。目の前のベランダから姿を消した幼馴染………。
「全て、私が―――…?」
部屋の中で、石井が話していた言葉。
『春樹――…、橘を殺したのは――お前だな…』
私が、弥生を殺すはずが無い。私は確かに、弥生を愛していた。まさか――目の前で石井が落ちるとは思わなかった。まさか―――
『………春樹…、お前は――同級生の『橘』を愛していたのか――…?』
あんな事、問われるなんて―――。
私は…
「私は、弥生を愛してた。『弥生』に―――、愛されたかった。」
そうだ、『あの日』死んだ女は、青かった。それを何とも思わなかった。それが、『弥生』だったから。そして、真っ赤に染まったのは『弥生』と弥生だった。
二人を『赤』く染めたのは、『赤』い、髪だった。
「違う…、私は、何もしていない。勝手に、『赤』が私を守った結果なんだっ、!」
弥生は生まれつき聴覚が悪かった。だけど人と違う、ハンデがあると知られるのが嫌だったから補聴器をつけてそれを隠していた。
それに目を付けたのは―――。
……いや、それを知っているのは―――――――……。
石川は私の事を好いていた。そして弥生に陰湿な虐めをしていた。石川をつれて行けて、尚且つ弥生を虐めている事を知っているものはあそこには―――…。