表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春の赤 と 冬の白銀  作者: よづは
14/26

彼らの向かう先には語り狂う語り部




「…春樹、西は…?」

 学校に登校すると真っ先に声をかけてきたのは石井だった。

 昨日は結局西は帰ってこず、どうやら手紙の通りになったらしい。

 石井は私が口を聞けなかったことを知っている。だが、今の私は話すことが出来た。


「多分、行方不明…」

 私の言葉に石井が戸惑う。そして、私の肩を叩くと慌てたと言うような面持ちで問うて来る。


「えっ、どういうことだ…?」

 石井は私が昨日西と街へ出かけた事を知っていた。いったい何時から居なくなったのかを知りたいのだろうか。私はとりあえず、大体の事を話した。勿論、手紙の事も。


 話が終わると、石井の顔は青ざめていた。私が首を傾げると石井は私の行動がおかしいというように言葉を連ねる。

「そんな手紙が来たのなら、まず警察に電話すべきだろう! と言うか、その手紙を入れた人間の心当たりは無いのか!?」

 石井の言葉に、私は案外動揺していた事に気が付く。そして、少し考え心当たりは無いと答えた。


 何故だろうか、『赤』い髪の男の事は石井には言わない方が良い気がした。私の言葉に、石井は首をかしげ携帯を取り出す。そして警察に通報しようとした。


 だが、


パシッ、


 それは、止められた。

 私に――――。


 石井は唖然としている。だが、私も石井に負けじと驚いていた。何故、そんな事をしたのか私自身理解できていなかった。ただ、自然に私の腕は動いて石井の携帯を叩き落としていた。

 何処か不思議そうに私を見る石井に私は思わずといったように、……嘘を、ついた。


「西は、極稀に勝手に祖母の家に帰る事があるから………」

 何時も変に行動力があるのだと、多分、手紙は西の悪戯だと。そう言って石井を納得させようとした。だが、私と同等かそれ以上に西を知っているかもしれない石井は中々納得はしない。

 その石井の様子に私は慌てて石井に色々とその理由になるような西の性格を並べ連ねていると、石井はニヤリと笑った。

「そんじゃあ、今度お前の家に行かせてくれよ。」

 私は石井の言葉に正直、驚いた。すると、石井は何を思ったか、こう付け足した。


「二人の事件について、聞かせてくれ」


 石井は昨日の一件があったというのに全くといって良いほど懲りてはいないようだ。それどころか、西が居ないのを好都合と思っているようだ。私は呆れを通り越して感心する。



 休み時間、何故か昨日のように絡んでくる輩が居なくなっていた。昨日必死で追い払っていた西の成果なのか、よく解らなかったが。ともかく私は少しばかり安心していた。


「あの……中谷、くん…?」

 おずおずと言わんばかりに私の肩に触れる指、教室の中の右側。窓側の私は必然的に触れられるのは左側だった。触れられた方にゆっくりと顔を向ける。

 そこには、頬を赤らめた黒髪ショートヘアーの女子生徒が立っていた。一体何の用なのか私は疑問に思ったが、その生徒の隣に居たもう一人の生徒が外へと促したので付いていった。


 付いたのは中庭のベンチ、昨日のように廊下からの人目が多いが私は案外この場所は好きだ。

 目の前に居る私を呼び出した女子生徒はここに連れ出した女子生徒、こちらは茶髪の体育系。に話しかけている。茶髪の女子生徒は黒い髪の生徒を促しているようだ。

 黒い髪の女子生徒は再びおずおずと、私に声をかけようとする。


 ……あまりにも行動が遅いので私は思わず、声をかける。


「何の……用?」

 女子生徒は私が声をかけてきたことに戸惑ったが、意を決したかのように一度喉を鳴らし、言葉を放った。


「――っ、あのっ……中谷君。こんな大変な時に不謹慎だと思うんだけど、私……」

「……少し、早くしてください…」

 流石にただの休憩時間でのんびりとこの子の話を聞いている暇は無い。私の言葉に、黒髪の子はかなり困ったような顔をした。その顔に隣の子は、一歩引くよな位置から一歩出て私を睨みつけると、


「この子は、中谷君の事が好きなの。」

「付き合ってくださいっ!」

 茶髪の子の言葉に背を押されたかのように黒髪の子がいった。だが、正直私はどうでも良かった。声をかけられた時点からこの事を覚悟していた上に、初めから私はこの子の関心をもてなかった。

 付き合うなんて、あり得ない。



「……いま、親友すらも居なくなっているんだ………。多分これからも無理だと思うけど、今はそんなことは無理だ………」


 顔を伏せ、そう呟く。

 これは確かな理由、だけども理由の一つでしかない。

 告白をしてきた女子生徒は予想以上にすんなりとしていた。覚悟をしていたからなのかは、私は女子生徒ではないから解らないがそれほどまでに未練は無いらしい。振られるのを解っていて、だけど振られて踏ん切りをつけたかったのだろうか。


 暫くして、女子生徒は先程の告白を無かった事にして言葉を放つ。


「親友って石井君ですか…?」

 私はこの言葉に首を振る。そして『親友ではないが幼馴染だ』と言った。すると女子生徒二人は納得したかのように顔を見合わせた。その様子にそれが何なのかと聞くと、体育系の子の方が答える。

「石井君って言うほうが、昨日の噂を片ッ端から否定したの。その人は情報通だったから結構早く鎮火できたみたい。」

 

 私はその事実に少し驚いた。だが、それを聞いても改めて石井に礼を言う気にはならなかった。




 放課後、何故か付いて来る石井を追い払い。私は家へと帰った。

 だが、やはりと言うように郵便受には手紙が入っていた。また無機質な字で、真っ白な便箋と封筒に書かれていた。


『余計な事を散策する輩がそばに居るだろう。』


 今度は、そう書かれていた。

 私は不安にかられた。でもそれはやはり私の周りに居る人間を思ってではなかった。私が何かに支配され、凌駕されていると言う事実だった。

 私は手紙を捨て、中谷 冬哉が次に狙うであろう人物を推理した。だが、そんな人間たった一人しか思いつかなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ