表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥田と田楽 桶狭間 全八章  作者: あっちゅ寝太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

泥田と田楽 桶狭間 第二章

第二章:泥の再会、黄金の計略

◆ 【木曽川の朝霧と鉄の匂い】

 木曽川きそがわの支流、蜂須賀はちすかの寄せ場を包む朝霧は、ひやりと肌を刺す鉄の匂いがした。

 霧の向こうから現れた数人の男たちが、抜き身の槍を突きつける。その中心にいたのは、野武士の頭目、蜂須賀小六だ。彼の眼差しは鋭く、獲物を捕らえるかのように秀吉しゅうきちを射抜いていた。

「……止まれ。ここは商人の通る道じゃねえ」

 小六の言葉は明確な警告だった。男たちの装いは質素だが、その筋肉質な体つきと槍を構える手つきは、この「泥田どろた」で生き抜いてきた者たちの持つ独特のしたたかさを物語っている。

 秀吉のなりは、みすぼらしい行商人に過ぎない。だが、小六はその瞳の奥に宿る、彼らの誰もが持たぬであろう強烈な光を見逃さなかった。

 一歩詰め寄り、躊躇なく秀吉の胸ぐらを乱暴に掴み上げたその時、ふところから竹皮の包みが泥土の上に転がった。中から現れたのは、香ばしい焦げ目のついたあゆの塩焼きと、純白の握り飯だ。

「……あ?」

 男たちの獰猛な動きが止まる。小六がその握り飯をじっと見つめ、低く問うた。

「……川の深さは?」

 秀吉は、胸ぐらを掴まれたまま、飢えた狼のようなニヤリとした笑みを浮かべた。

「――なごやの赤味噌の濃さよ。……あっはっは。久しぶりだなぁ、小六!」

 一瞬の静寂の後、寄せ場に地響きのような笑い声が弾けた。

「この猿め! 生きていやがったか!」

◆ 【黄金の味噌と「マンガ」の計略】

 その夜、焚き火をおこし、香ばしい赤味噌を肴に安酒を酌み交わした。

 秀吉は懐から、しわくちゃになった数枚の紙を取り出す。それは彼が諸国を歩き、見たこともない景色や技術を書き留めた、絵物語のような「マンガ」であった。

 そこに描かれていたのは、流線形の**「新造小型船」や、「茶碗一つ割らぬ梱包の技」**の図面だ。

「小六、ただの野盗はもう終わりだ。俺たちは、この川の物流ながれを支配するんだ」

 秀吉は、泥にまみれた紙の上で未来を説いた。小六は、その熱弁に、かつての吉法師(信長)が語った「理」の再来を見る。

「おめえ……何者になるつもりだ」

「天下を動かす男の、一番槍だよ。吉法師様は必ず、この尾張を黄金の国にする。俺は、その道筋を作る」

 翌朝、秀吉は詳細な設計図を小六に託し、再び霧の中へと消えた。目指すは那古野なごや。その背中は、一点の迷いもなく巨大な龍の尾を掴もうとしていた。

【第二章用ハッシュタグ】

#木曽川 #蜂須賀小六 #豊臣秀吉 #再会 #物流 #イノベーション #戦国サバイバル #泥田と田楽

第二章をお読みいただき、ありがとうございます。

 今回は、信長の「理」を現場で形にする男、秀吉の再登場です。

 彼が懐に忍ばせていた「マンガ」のような図面……。文字が普及しきっていない時代において、視覚的なイメージで技術を伝えることは、何よりも強力な武器になったはずです。

 「川の深さは?」「赤味噌の濃さよ」という合言葉は、泥土で繋がった彼らだけの特別な絆を表現してみました。

 いよいよ物語は、この物流の知恵が「天下」という巨大な歯車を回し始める段階へと進みます。次章もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ