表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

8 ちょっと背伸びしたってね。

その依頼を見たとき、

正直に言えば、少しだけ迷った。


「……これ、

 いつもより上ですよね」


掲示板の前で、

ミオが言うと、リナは横から覗き込む。


「うん。

 ランク一つ上」


「危なくないですか?」


「一人なら止める」


即答だった。


「二人なら?」


「様子見ながらなら、あり」


その言い方が、

妙に現実的だった。



依頼内容は、

街道から外れた林の調査と、

出没している魔物の間引き。


数が少し多い。

動きも、少しだけ素早い。


「無理そうなら、

 引くからね」


「分かってます」


装備を確認して、

二人で林に入る。


空気が、

いつもより静かだった。



最初の接触は、

思ったより早かった。


「……来るよ」


リナの声が低くなる。


魔物は三体。


いつもより、

一体多い。


「ミオ、

 右見て」


「はい」


言われた通りに動く。


体が、

ちゃんとついてくる。


考える前に、

足が出る。


(……意外と、

 できる)


自分でそう思う余裕が、

少しだけあった。



一体目を倒し、

二体目を牽制。


三体目が、

一瞬だけ距離を詰めてきた。


「っ——」


リナが、

一歩前に出る。


「下がって!」


言われる前に、

もう下がっていた。


剣が交差して、

魔物が倒れる。


息を整える。


怪我はない。


「……大丈夫?」


「はい」


声が、

ちゃんと出る。



残りは、

思ったよりあっさりだった。


「よし、

 ここまでにしよ」


リナが言う。


「深追いしない」


「……もう少し行けそうですけど」


「行けるときほど、

 やめとく」


そう言われて、

納得する。


この町のやり方だ。



帰り道、

二人並んで歩く。


「どうだった?」


「……ちょっと、

 緊張しました」


「でしょ」


リナは笑う。


「でも、

 ちゃんと動けてた」


「そうですか?」


「うん。

 無理してない感じが良かった」


褒められているのか、

評価されているのか。


たぶん、両方だ。



ギルドに戻ると、

セラが書類を受け取る。


「今回は、

 少し難度が高めでしたね」


「はい。

 でも、問題ありませんでした」


「……そうですか」


セラは一度だけ、

二人を見る。


「お疲れさまでした」


それだけ。



外に出ると、

夕方の空だった。


「ね」


リナが言う。


「今日の依頼さ」


「はい」


「背伸び、

 ギリギリだったね」


「……そうですね」


「でも、

 悪くなかった」


その評価が、

ちょうどよかった。


大げさじゃない。

軽すぎない。



宿に戻る途中、

ミオは思う。


いつもより危なくて、

いつもより疲れて。


それでも、

詰む感じはなかった。


(……まあ、

 たまにはいいか)


少しだけ背伸びして、

ちゃんと戻ってくる。


この町では、

それで十分らしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ