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3 飲みに行こう、って話

討伐が終わったあと、

帰り道は思ったより静かだった。


魔物は弱く、

危ない場面もなかった。


「今日は楽だったね」


同行していた女性冒険者――リナが、

伸びをしながら言う。


「ですね。

 正直、拍子抜けしました」


「最初はそんなもんだよ。

 いきなり地獄みたいなの当たらなくてよかったね」


そう言って、

リナは笑った。


気取らない笑い方で、

こっちまでつられてしまう。


(……この人、話しやすいな)






ギルドに戻って報告を済ませると、

外はもう夕方だった。


空が少し赤くなっていて、

仕事終わりの空気が漂っている。


「ねえ、ミオ」


ギルドを出たところで、

リナが声をかけてきた。


「このあと時間ある?」


一瞬、考える。


特に予定はない。

宿に戻って、寝るだけ。


「……ありますけど」


「じゃ、飲みに行こ」


即決だった。





酒場は、

ギルドから少し離れたところにあった。


騒がしすぎず、

静かすぎず。


「ここ、安いし落ち着くんだ」


リナは慣れた様子で席に座る。


「ミオはお酒いける?」


「強くはないですけど、

 嫌いじゃないです」


「それなら大丈夫だね」


軽く乾杯して、

グラスを傾ける。


(……なんだろ)


一日張っていた緊張が、

すっと抜けていく。





「ミオってさ、

 出身どこ?」


「……ちょっと、遠いところです」


曖昧な答えになったけど、

リナは気にしなかった。


「そっか。

 まあ、いろいろあるよね」


深掘りしない。


その距離感が、ありがたい。


「この街はどう?

 住みにくくない?」


「今のところは。

 人も親切ですし」


「でしょ。

 ここ、悪くないよ」


リナはそう言って、

グラスを揺らした。





国の話も少しだけした。


大きくもなく、

小さすぎもしない国。


戦争も今はなくて、

商いもそこそこ。


「冒険者的には、

 ちょうどいい国だと思う」


その言葉が、

妙にしっくりくる。


ちょうどいい。


危険すぎず、

退屈すぎず。


(……まあ、

 当たり、かな)




「ミオ、今日の動きさ」


リナが、少しだけ真面目な顔になる。


「悪くなかったよ。

 変に力まないし」


「そうですか?」


「うん。

 あと、運いい」


出た、と思った。


「運ですか」


「そうそう。

 新人であれは、

 なかなかない」


笑いながら言われると、

悪い気はしない。


「ありがとうございます」


「その調子、その調子」




店を出るころには、

すっかり夜だった。


外の空気が、少し冷たい。


「じゃ、また依頼一緒になったらよろしく」


「はい。

 今日はありがとうございました」


「こっちこそ。

 誘って正解だった」


リナは手を振って、

人混みに消えていった。




宿に戻る途中、

ふと考える。


転生して、

仕事が見つかって、

仲間ができて。


(……悪くないな)


少なくとも今は。


「運、いいな」


小さくそう呟いて、

部屋に戻った。


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