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2 冒険者ギルドにて

冒険者ギルドは、

思っていたよりも騒がしかった。


酒場みたいな匂いがして、

人の声が重なっている。


(……ちょっと安心した)


もっと物々しい場所を想像していたけれど、

実際は“仕事を斡旋する場所”という感じだ。


受付のカウンターの前で、

少しだけ立ち止まる。


どう切り出せばいいのか迷っていると、

向こうから声をかけられた。


「登録ですか?」


柔らかい声だった。


顔を上げると、

年上に見える女性が立っている。


「はい。……たぶん」


自分でも曖昧な返事だと思ったけれど、

受付の女性は笑って流してくれた。


「大丈夫ですよ。

 名前だけ教えてもらえますか?」


「ミオです」


そう答えると、

彼女は紙に書き留めながら頷いた。


「ミオさんですね」


名前を呼ばれた瞬間、

胸の奥が少しだけ落ち着いた。


(……あ、

 ちゃんと人として扱われてる)


それだけで、

肩の力が抜けた気がした。




「じゃあ、手をこの水晶に」


言われるまま、

手を置く。


ひんやりしている。


一瞬だけ、

間があったような気もしたけれど、

すぐに光が落ち着いた。


「はい、問題ありません」


受付の女性はそう言って、

事務的に作業を進める。


「未登録体質ですね。

 珍しくはないですよ」


「……そうなんですか?」


「ええ。

 出身地がはっきりしない方とか、

 記録に残ってない方とか」


なるほど、と頷く。


(……まあ、

 転生してきた身としては

 納得しかない)


深く考えるのは、

やめておいた。




渡された冒険者証は、

一番下のランクだった。


「最初は皆さんここからです」


「ですよね」


むしろ安心した。


いきなり期待されるほうが、

正直困る。


「無理のない依頼から

 選んでくださいね」


その言い方が、

妙に自然で。


(……気を遣われてるな)


と思ったけど、

嫌な感じはしなかった。




最初に選んだのは、

街道沿いの魔物退治。


危険度は低め。


「女性一人だと心配だから、

 この依頼がいいかな」


同行する冒険者が、

そう言ってくれた。


(……ありがたい)


守られてる、

という感覚よりも、

普通に親切だと思えた。


剣を握る手は、

少し震えたけど。


振ってみると、

思ったより動く。


魔物は倒れ、

怪我もしなかった。


「運いいな」


帰り道、

そう言われた。


「ですね」


自分でも、そう思う。


(……まあ、

 最初だし)


深刻に考えるほどでもない。




ギルドに戻る頃には、

すっかり夕方だった。


受付の女性が、

顔を上げて言う。


「おかえりなさい、ミオさん」


その一言で、

今日一日がちゃんと“終わった”気がした。


悪くない。


転生した先としては、

かなり当たりな部類だと思う。


「……運、いいな」


小さくそう呟いて、

冒険者証を握り直した。


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