旅路、宿泊所にて
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
年明けから2章開幕です。
街を出て、
少し歩くと道が一本に収束した。
踏み固められた土。
轍の跡。
人の往来が途切れない。
「ここ、巡礼路だよ」
フィアが、地図を見ながら言う。
「巡礼?」
ミオは聞き返した。
「うん。
アリア教の」
その名前を聞いたとき、
ミオは一瞬だけ考えた。
——聞いたことがある気がする。
でも、
思い出せない。
「国家宗教だっけ」
「そうそう」
フィアの返事は軽い。
「信仰って感じじゃないよ」
「宿とか、相談所とか」
「生活にあるやつ」
「へえ」
ミオはそれ以上、
踏み込まなかった。
今は、
歩くことで頭がいっぱいだ。
⸻
日が傾く頃、
石造りの建物が見えてきた。
飾り気はない。
でも人がいる。
入口の札には、
控えめな文字。
アリア教 巡礼者宿
「ここに泊まろう」
フィアが言う。
中に入ると、
神官が一人だけいた。
年配で、
声も動きも穏やかだ。
名前を聞かれ、
人数を確認され、
鍵を渡される。
祈りはなかった。
祝詞も、儀礼もない。
「夜間は外出を控えてください」
「揉め事があれば、
原典に従ってください」
事務的な説明だけ。
⸻
部屋は三人一緒だった。
簡素だが、清潔だ。
「十分だね」
フィアが言う。
「十分すぎる」
ミオも頷く。
リナは、
窓の外を見ている。
「何か気になる?」
「いいえ」
即答。
⸻
夕食は、
温かいスープだった。
「こういうの、助かるよね」
フィアが言う。
「考えなくていいし」
その言葉に、
ミオは一瞬だけ箸を止めて、
すぐに動かす。
「……そういう日もある」
否定も肯定もせず、
そう答えた。
リナは、
会話に入らない。
ただ、
二人の声の間を
静かに聞いている。
夜。
灯りが落とされる。
決まりだから、
誰も不満は言わない。
布団に横になって、
ミオは天井を見る。
………ふぅ




