20 ランドスケープ
派遣先の町は、思ったより静かだった。
人はいる。
店もある。
でも、急かされる感じがない。
「悪くないね」
リナが言う。
「うん」
フィアも頷く。
「住むには、ちょうどいいかも」
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依頼の報告を済ませて、
簡単な宿を取る。
一泊分だけ。
部屋は狭いけど、清潔だった。
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荷物を置いて、
三人で簡単な食事を取る。
特別な話はしない。
道中のこと。
依頼の段取り。
明日の予定。
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「……ねえ」
食事が終わりかけた頃、
フィアが言った。
声は、少しだけ探るよう。
「この町さ」
リナが顔を上げる。
「うん?」
「しばらく、拠点にするのどう?」
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一瞬、間が空く。
「拠点って?」
リナが聞く。
「部屋、借りるとか」
フィアは、言い切らない。
「……三人で」
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「急だね」
リナは言うけど、
驚いた顔はしていない。
「でも、ありかも」
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ミオは、少し考える。
派遣期間。
依頼の密度。
町の規模。
「現実的だと思う」
短く答える。
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フィアは、少し肩の力を抜いた。
「無理だったら、やめてもいいし」
言い訳みたいな言い方。
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「やめる前提で借りる部屋って、逆に安心じゃない?」
リナが笑う。
「逃げ道あるし」
「……それは、確かに」
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ミオは、二人を見て言う。
「一人で決めなくていいなら、問題ない」
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フィアは、一瞬だけ考えてから頷いた。
「……じゃあ」
小さく息を吸う。
「住んでみよう」
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決意、というほどじゃない。
覚悟、でもない。
ただ、
今の三人なら大丈夫だと思えた。
それだけだった。
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窓の外では、
夕方の光が町を照らしている。
見慣れない景色。
でも、落ち着く。
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「明日、部屋探そうか」
リナが言う。
「安いとこがいい」
「できれば、風通しのいいやつ」
「欲張りだな」
軽口が戻る。
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フィアは、そのやり取りを聞きながら思う。
前に出るかどうかじゃない。
背負うかどうかでもない。
一緒に暮らす、という選択が、
今は一番自然だった。
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「ねえ」
リナが言う。
「ここから、どうなるんだろ」
フィアは、少し考えてから答える。
「……さあ」
でも、
声は軽い。
「行ってみないと、分かんない」
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ミオは、その言葉を聞いて頷いた。
不確定でもいい。
逃げ道があってもいい。
続けられる形が、一番だ。
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外は、もう夕暮れだ。
でも、今日は終わらない。
三人の生活が、
ここから始まるだけだ。
1章、ここまでになります。
次回からは新天地でのお話になります。お付き合いいただけますと幸いです。それでは良いお年を。




