13 お休みなら遊ばないとね?
依頼を入れない日が、
いつの間にか当たり前になっていた。
「今日は休みにしよ」
リナがそう言って、
掲示板の前を素通りする。
「賛成!」
フィアが即座に手を挙げた。
「市場行こ。
なんか食べたい」
「……毎回それですね」
「いいでしょ!」
勢いだけで決まるのが、
この三人だった。
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市場は昼前が一番人が多い。
「見てこれ!」
フィアが串焼きを指差す。
「安いし、量ある!」
「朝から重くない?」
「平気平気!」
結局、
三人とも一本ずつ買った。
味は普通。
でも、悪くない。
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歩きながら、
どうでもいい話をする。
最近受けた依頼。
誰が怪我したとか、しなかったとか。
酒場の料理が微妙だった話。
「ミオってさ」
フィアが、ふいに言う。
「一緒にいると楽」
「……前も言ってましたね」
「言ったっけ?」
笑って誤魔化すけど、
そのあと少しだけ言葉が途切れる。
「……前は」
言いかけて、
フィアは口を閉じた。
「まあ、今はいいや」
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リナは、何も言わない。
聞き返さないし、
話題も変えない。
そのまま歩き続ける。
風が、
市場の匂いを運んでくる。
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川沿いで少し休む。
「この辺、静かだよね」
フィアが言う。
「落ち着く」
「意外です」
「ひど!」
笑いながら言うけど、
その声は少しだけ低かった。
「……前はさ」
また言いかけて、
今度はすぐに首を振る。
「ごめん、
変な話」
「別に、
無理しなくていい」
そう言うと、
フィアは一瞬だけ目を丸くした。
「……ありがと」
それだけだった。
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夕方、
ギルドの前で解散する。
「またね!」
フィアはいつも通り、
明るく手を振った。
でも、
背中は少しだけ静かだった。
(……この町に、
長くいる人なんだろうな)
理由は分からない。
ただ、
そう思った。
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宿へ戻る途中、
一日を振り返る。
依頼はしていない。
事件もない。
でも、
三人で過ごす時間が
少しだけ馴染んできた気がした。




