12 トリオでもね。
「今日は三人で行こっか」
掲示板の前で、
リナがそう言った。
「え、いいの?」
フィアが目を輝かせる。
「別に問題ないでしょ。
難度も高くないし」
「やった!」
即決だった。
私は一瞬だけ考えてから、
頷く。
「……お願いします」
⸻
依頼は、
街道から少し外れた丘の見回り。
いつもより距離はあるけど、
魔物の強さは変わらない。
「三人だと楽だよ」
歩きながら、リナが言う。
「前後見なくていいし」
「私は楽しい担当ね!」
フィアが手を挙げる。
(……役割、
それでいいんだ)
⸻
丘に着くころには、
少し汗ばんでいた。
風が強くて、
草がざわざわ揺れている。
「視界いいね」
フィアが周りを見渡す。
「逆に、
隠れにくい」
リナはそう言って、
足を止める。
この二人、
見ているところが違う。
(……なるほど)
⸻
魔物が出たのは、
予想より早かった。
「来るよ」
リナの声が低くなる。
「二体!」
フィアが叫ぶ。
私は、
一歩引いて構える。
リナが前に出て、
フィアが横に回る。
「ミオ、後ろ!」
「はい!」
声が飛んでくる。
言われた通りに動く。
考える前に、
体が反応していた。
⸻
戦いは、
あっさり終わった。
「よし!」
フィアが拳を上げる。
「怪我なし」
リナが確認する。
「……私も大丈夫です」
三人とも、
無事だった。
⸻
「ね、
三人だと楽でしょ」
フィアが言う。
「うるさいのが一人増えるけど」
リナが返す。
「ひどっ!」
二人が笑う。
そのやり取りを見て、
少し肩の力が抜けた。
(……悪くない)
⸻
帰り道は、
会話が途切れなかった。
「ミオってさ、
後ろ見るの上手いよね」
フィアが言う。
「そう?」
「うん。
気づくの早い」
「無理しないのが、
いい」
リナも頷く。
褒められているのか、
評価されているのか。
どちらにしても、
居心地は悪くなかった。
⸻
ギルドに戻ると、
セラが三人を見て言う。
「今日は賑やかでしたね」
「無事です!」
フィアが元気よく答える。
「それは何よりです」
いつも通りのやり取り。
特別扱いは、ない。
⸻
外に出て、
フィアが大きく伸びをする。
「また三人で行こ!」
「予定が合えば」
リナはそう言って、
ちらっと私を見る。
「ミオは?」
少し考えてから答える。
「……大丈夫だと思います」
「よし決まり!」
フィアが笑う。
⸻
宿へ向かいながら、
今日のことを振り返る。
リナといると、
安定する。
フィアといると、
場が動く。
三人だと、
ちょうどいい。
(……この形、
しばらく続きそう)




