11 真逆だけど、違うわけじゃない。
ギルドの掲示板の前で、
依頼を眺めていると、
横から勢いよく声が飛んできた。
「ねえねえ!」
反射的に肩が跳ねる。
「今日さ、
一緒に行かない?」
振り向くと、
見知らぬ女の人が立っていた。
明るい色の髪。
軽装。
笑顔がやたら元気。
「……え?」
「私フィア!
今日リナいないでしょ?」
即答できずにいると、
フィアは勝手に続きを話す。
「一人だと暇だし、
二人ならちょうどいいかなって」
(……距離、近い)
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「依頼はこれ!」
指差されたのは、
昨日よりは軽い、
いつもと同じ街道の見回り。
「安心して。
危なくないやつ」
「……そうなんですね」
「そうそう!
たぶん!」
たぶん、が少し引っかかるけど、
リナほどの慎重さはないらしい。
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歩き始めてすぐ、
フィアはよく喋る。
「ミオだっけ?
名前、覚えた!」
「はい、ミオです」
「覚えやすいよね〜」
褒められているのかは分からないけど、
悪い気はしない。
「リナとよく組んでるよね?」
「最近は、そうですね」
「いいなあ。
あの人、止めるの上手いし」
止める、という評価が
この町らしい。
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見回り自体は、
本当に何も起きなかった。
途中で足を止めて、
景色を見たり。
「この辺、
風気持ちいいんだよ」
フィアはそう言って、
両手を広げる。
(……余裕あるな)
緊張感は、ほとんどない。
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帰り道、
フィアが言った。
「ミオってさ」
「はい?」
「一緒にいて楽」
思わず、足が止まる。
「……それ、
どういう意味ですか?」
「んー」
少し考えて、
フィアは笑った。
「落ち着いてるから。
焦らないし」
それは、
よく言われる評価だった。
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ギルドに戻ると、
セラがこちらを見る。
「今日はフィアさんとですね」
「はい」
「お疲れさまでした。
問題ありませんでしたか?」
「はーい!
超平和でした!」
フィアの返事が、
やけに明るい。
セラは一瞬だけ目を瞬かせて、
いつも通り頷いた。
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外に出て、
フィアが手を振る。
「また行こ!
今度はもうちょい遠くまで!」
「……考えておきます」
「その返事、
嫌いじゃない!」
そう言って、
走り去っていった。
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宿へ向かう途中、
少しだけ思う。
リナといると、
安心する。
フィアといると、
場が動く。
(……どっちも、
悪くない)
今日は少しだけ、
賑やかな一日だった。




