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格差

 統一歴657年 2月30日 時曜日 15:00 聖王宮



 王国の統治者たるラウール王が住まう宮殿、聖王宮(せいおうきゅう)


 その式典用に解放された庭園の中では、多くの従者(じゅうしゃ)達が騎士の指示の下、椅子や機材の運搬を行っていた。


 時曜日(じようび)は王国では休日とされているが、騎士は基本的に不定休である。


「騎士様、こちらの(かざ)りは如何(いかが)いたしますか?」


「そちらは入り口に飾ってくれ。終われば報告を頼む」


御意(ウィ・ムッシュー)


 手慣(てな)れた様子で指示を出す騎士や、受け答えする従者を横目に、難しい表情で原稿(げんこう)を見つめる巨漢(きょかん)の騎士の姿もあった。


 白髪が混じり始めた黒髪を短く刈り込んだ髪型に、紅玉色(こうぎょくいろ)の輝きを放つ鋭い双眸(そうぼう)


 筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)とした体格を包み込む騎士の礼服は、胸筋によって内側からボタンが弾ける寸前のように盛り上がっている。


 王国最強の騎士団、『ヴァンピール・(吸血)シュバリエ・(騎士)オルドル()』の最強の騎士と呼び声高い、騎士団長クロヴィスその人である。


「ふむ……」


 騎士団長クロヴィスは一呼吸置いた後、原稿を丁寧に胸ポケットに仕舞った。


『ガハハハッ! どうしたぁ、クロヴィス? まさか原稿が読めないのかぁ!?』


 と、騎士団長クロヴィスのすぐ背後にいる『ヴァンピール・(吸血)アルミュール(甲冑)』パシオンが、騎士団長を揶揄(やゆ)するように話し掛けた。


 通常の『ヴァンピール・アルミュール』は話すどころか、自我も持たない甲冑である。


 しかし、このパシオンは違う。


 パシオンは、『名持ち』と呼ばれる特別な『アルミュール・ヴァンピリク』なのだ。


 だからこそ、こうやって装着者である騎士団長クロヴィスと会話を行う事ができた。


「うるさいぞ、パシオン。俺は今、この困難を前に心がメラメラと燃えているのだ」


『ガハハハッ! 式典の挨拶なんて毎年やってる恒例行事に燃えるも何もあるかよ! ガハハハッ!』


「うるさい、パシオン。今から原稿を見ずに挨拶をするから、よく見ていろ」


『ガハハハッ! 何だぁ、クロヴィス? さっきから黙っていると思ったら、原稿を暗記していたのかよぉ!! ガハハハッ!』


 何が面白いのかは不明だが、赤色の『ヴァンピール・アルミュール』は高笑いを続けた。


 意思を持つ自分の甲冑(相棒)の姿に苦笑しながら、騎士団長クロヴィスは「コホン」と咳払(せきばら)いした。


「ようこそ、『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』へ。本日は我らが王、ラウール陛下がこの騎士団を結成して10年の節目(ふしめ)の年である。幾多(いくた)困難(こんなん)を乗り越え、今日という日に諸君(しょくん)らを迎え入れた事を……」


 朗々(ろうろう)挨拶(あいさつ)の予行演習を始める騎士団長クロヴィスの下へ、


「クロヴィス(きょう)! 一大事でございます!!」


 と、一人の女性騎士が慌てた様子で駆け寄って来た。


『ガハハハッ! 練習が中断されちまったなぁ、クロヴィス! おーい、ベルティーユ! 人狼でも出現したのかぁ?』


 ガチャン、ガチャンと鋼鉄の足音を響かせ、パシオンが駆け寄って来た女騎士に話し掛けた。


「いいえ、人狼とは別件です」


「人狼ではない? なら、ベルティーユ卿の報告という事は、明日、入団予定の准騎士が従者に問題でもあったのか?」


「はい、その通りです、クロヴィス卿。明日、入団予定の従者の男の子が、中央ルミナール駅の騎士に捕縛されてしまったようなのです」


 ベルティーユと呼ばれた女騎士は、困惑した表情を浮かべて、そう告げた。


 彼女は、『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』の第9大隊の隊長だ。


 本名、ベルティーユ=ド・ジルベール。


 亜麻色の髪の毛をハーフアップにした髪型に、銀縁の眼鏡を掛けた、優しい眼差しを持つ上級騎士だ。


 第9大隊の主な役目は、入団したばかりの准騎士や従者に、騎士団としての専門の教育を施す事である。


 当然、入団予定の准騎士や従者が予定の時間を過ぎても来なければ捜索する義務もあった。


「従者が捕縛された? 民間人相手に窃盗か暴行でもしたのか?」


 騎士団長クロヴィスが眉間(みけん)(しわ)を寄せながら、そう尋ねる。


 騎士団長を任されるだけあって、彼の正義感は人一倍だ。


「それでしたら入団取り消しを我々で実行するまでです。クロヴィス卿にどうしても相談したいと思ったのは、不可解な事があったからです」


「不可解な事?」


「その従者、平民の身でありながら、准騎士3名を鞘に収まった状態の従者剣で打ち倒したそうです」


 上級騎士ベルティーユの言葉に、騎士団長クロヴィスとパシオンは押し黙った。


 最初に口を開いたのは、パシオンだった。


『……ガハハハッ! そりゃ面白いな、ベルティーユ! 何だ、その従者は? 剣聖イザベラが変装でもしていたのかぁ?』


「確かに、剣聖イザベラなら肉体強化魔法を使わずに准騎士3名くらい余裕であしらうだろうな」


 パシオンの言葉に答えるように、騎士団長クロヴィスが苦笑しながら返答する。


 准騎士、という言葉を聞いただけで、クロヴィスの頭の中に今回の事件のあらましが読めてしまった。


 騎士学校を卒業したばかりの准騎士というのは、学校の外という解放感から増長し、平民に横暴を振るいやすいのだ。


 この時期の王都というのは、乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)を行う准騎士を騎士が捕縛して注意するのが恒例行事のようなものである。


 騎士や貴族が人格的に平民の模範(もはん)となる存在ならば、平民は蒸気機関(じょうききかん)を作って貴族を出し抜こうとは思わない、とはクロヴィスの考えである。


「その准騎士3名はうちの騎士団の者か?」


「はい」


「一応、どういった状況で捕縛された?」


「要約すると、平民の子供に礼服を汚された准騎士の1人が、子供を無礼打ちにしようとしたそうです。そこに割って入ったのが、先程の話題に上がった平民の従者です」


「で、3人の准騎士を撃退したのか?」


「はい。准騎士3名は現在、第5大隊で治療中です。明日の式典には間に合うでしょう」


「ふん! 予想通りだな」


『ガハハハッ! 違いない! こりゃ痛快だぜ!』


 騎士団長クロヴィスの言葉に同調するように、パシオンが返答した。


 上級騎士ベルティーユもクロヴィスの考えに同調するように、静かに微笑む。


 入団予定の従者が騎士道を体現した。


 それを誇らしく思わない騎士は、この『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』には存在しない。


「で、俺にどうして欲しいんだ?」


「身分制度の関係上、捕縛された従者の解放には騎士団長の要請が必要でございます。……サインを頂けますか?」


 上級騎士ベルティーユは、そう言って手元のバインダーに挟まった羊皮紙と万年筆を手渡した。


 羊皮紙には王国語で『釈放要請書』と記載されている。


 騎士団長クロヴィスは静かに微笑み、万年筆でサインを記入した。


「では、血統官のソレイユ卿が彼に興味があるみたいなので、彼女に迎えに行かせますね」


 ベルティーユが苦笑を浮かべながら、バインダーを脇に挟んだ。


「ソレイユ卿が? 血統官が平民の従者にどうして興味を抱くのだ?」


「ソレイユ卿は件の従者を『突然変異体』の可能性があると考えているみたいです」


 ベルティーユは苦笑しながら補足した。


 『突然変異体』とは、平民の中から魔法を行使できる遺伝子を所持して誕生する個体の事である。


 百年に1度の確立で、平民の中から現れるとされており、例外なく強大な力を所持しているとされている存在だ。


「成程、血統官なら調べたいと思うだろうな。後の事は任せる。頼んだぞ」


 騎士団長クロヴィスは合点がいったかのように、苦笑を浮かべた。


「はッ、それでは失礼いたします」


 上級騎士ベルティーユは敬礼すると、その場を立ち去った。


「パシオン、この話、クラージュに話してみるか?」


『ガハハハッ! 確かに、勇気のある人間の物語は、アイツの好きそうな話題だぜ!!』


 騎士団長クロヴィスの言葉に、パシオンは高笑いしながら同調した。



 統一歴657年 2月30日 時曜日 17:00 王都警邏騎士団中央ルミナール駅詰所 アレクサンダー



 拝啓、トルヴェール村のイザベラ先生へ


 王都ルミナールに到着して早々、俺は准騎士どもの横暴な言動に頭に血が昇り、彼らを自分の騎士道に殉じて手を下しました。ご鞭撻に背き、入団前に故郷に送り返されるかも知れません。不出来な生徒である俺をお許しください、イザベラ先生……


                                           敬具

 なんて手紙を本気で考えていた俺は、以外にもあっさりと釈放(しゃくほう)される事となった。


 事情を知った『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』の騎士団長であるクロヴィス様が、俺の為に釈放要請書を書いて下さったようだ。


 俺を詰所(つめしょ)に連れて行った騎士は平民の狼藉を不問にする事には納得いかない様子だったが、


「確かに、……クロヴィス卿のサインだな。よし、現時刻をもって、この従者を釈放する」


 渋々といった様子で俺の釈放は決まった。


 まぁ、俺がやった事といえば、貴族である准騎士を平民である従者が気絶させてしまった事である。

流石に前代未聞なのか、


従者(じゅうしゃ)准騎士(じゅんきし)に盾突くとか聞いた事が無いぞ!」


 と、王都警邏(おうとけいら)騎士団(きしだん)の騎士が不愉快そうに言っていたので、俺のやった事は本当に想定外な出来事のようだ。


 まぁ、それも仕方の無い話だろう。


 リュミエール王国は階級社会だ。


 王は貴族を従え、貴族は平民を従える。


 平民は貴族に絶対服従であり、対価として貴族は平民に安全を保障する。


 これは、リュミエール王国の絶対たる秩序の為の掟だ。


 まぁ、あの准騎士は平民に安全を保障する気が無かった気がするが、これ以上の発言は収拾がつかなくなりそうなので黙って置く。


「釈放手続きは終わった。貴様を迎えに来た騎士がいるから、彼女にもお礼を言っておくんだぞ」


「はッ! お手間をおかけして申し訳ありません!!」


「ふん! とっとと行け!」


「はッ! 失礼します!!」


 心の中で中指を立てながら、俺は出口へと向かった。


 警邏の騎士に拘束されて約3時間。


 想像していたよりも最悪の事態は免れたようで、一安心である。


 留置所の受付カウンターで荷物と従者剣を受け取り、出口に向かう。


 そこで、


「やっほー♪ キミがアレクサンダー君だね? いやー、想像以上に美少年だねぇ♪」


 可憐なソプラノボイスが、俺の耳に届く。


『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』から迎えに来てくれた担当者の正体に、俺は一瞬だけ思考が停止してしまった。


 そこに立って居たのは、長い赤毛を左右から三つ編みに垂らした髪型に、分厚い丸眼鏡を掛けた女性騎士だった。


 服装は騎士服だが、『上級騎士』の証である、赤いビロードのマントを身に纏っている。


「ええ!? じょ、上級騎士様が迎えに来てくれたんですか!?」


「んん? あぁ、コレ? 気にしないで良いよぉ、アレクサンダー君。ボクは役職の為、形式上で身に着けているだけだからさ~♪」


 赤毛の上級騎士はそう言って、安物の布を扱う様に両肩の装着具で固定されたビロードのマントを摘まみ、ヒラヒラと振って見せた。


 そ、そのマントって軍務大臣(ぐんむだいじん)から下賜(かし)される代物なんだけど……?


「そう言われましても……」


 俺は姿勢を正して反応した。


 上級騎士とは、文字通りで騎士よりも上の階級の騎士の事である。


 騎士団においては大隊の責任者を任されるか、何らかの役職が与えられる程の階級だ。


「まぁ、そんなに畏まらないで良いよぉ。まずは自己紹介をしよう。ボクの名前はソレイユ。ソレイユ=ド・ダルク。『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』で血統官をしているよ♪」


 丸眼鏡を掛けた赤毛の上級騎士様が苦笑しながらそう言った。


「あ、アレクサンダーです。明日から従者として入団予定です」


「硬い挨拶だなぁ、アレクサンダー君♪ 准騎士3人と喧嘩したって聞いたから、もっと型破りな男の子だと思っていたよぉ、ボクは♪」


 ソレイユ様の口調は間延びした感じだが、不快感の無い、耳心地の良いソプラノの声だ。


「そう言えば、あの准騎士3名は?」


「今頃、第5大隊の治療施設で復活している頃だと思うよ。明日の入団式には間に合うと思うけどぉ、アレクサンダー君は彼らと仲良くするんだよぉ? 入団式で喧嘩なんてされたら進行が滅茶苦茶だ」


「な、なるべく関わらないようにします」


「ふふふ、賢明だね♪ それじゃ、表に車を待たせているから、一緒に行こうか、アレクサンダー君♪」


「は、ありがとうございます、ソレイユ様」


 俺は背筋を伸ばし、ソレイユ様の後ろを歩いた。


 詰所の正面玄関のすぐ表の道路には、大型の蒸気自動車が停車している。


 運転席には、灰色の髪の毛をポニーテールに結い上げた女性従者が控えていた。


「お待たせ、アリーダ♪」


 フレンドリーな口調で、ソレイユ様が運転席に向かって手を振る。


 従者と上級騎士の関係だが、まるで壁の無い対等の友人のような関係に見えた。


「無事に終わって何よりです、ソレイユ様。……彼が、そうなのですか?」


 アリーダと呼ばれた灰色の髪の毛の女性従者が俺を一瞥(いちべつ)した。


 視線に若干の緊張が孕んでいる。


 まぁ、准騎士3人を打ちのめした平民従者となんて、同じ従者からしたら関わりたくは無いだろう。


「うん。悪いけど、一旦、騎士団の研究室に彼を連れて行くから、宿舎じゃなくて本部に寄ってね♪」


承りました(ウィ・マドモアゼル)


 女性従者はそう言って、後部座席の扉を開けてくれた。


「ふんふふ~ん♪」


 ソレイユ様が上機嫌に後部座席に乗り込んだ。


「し、失礼します……」


 俺は緊張しながら、後部座席に乗り込む。


「それでは、発車します」


 灰色の髪の女性従者がそう言うと、


 ──ブッシュゥゥゥ!!


 と蒸気自動車の後方ノズルから蒸気が漏れ出た。


 ガゴン、とギアが変わる音と共に、俺達を乗せた蒸気自動車は滑らかにタイヤを回転させて出発した。


 灰色の髪の毛の女性従者は運転が慣れているのか、ハンドル捌きやシフトペダルの踏み込みがとてもスムーズだ。


 幾つかの道路を経由し、大型の蒸気自動車は瞬く間に高架道路へと乗り込んだ。


「さて、落ち着いた事だし、そろそろボクが迎えに来た理由を話しても良いかな、アレクサンダー君?」


 口元をニコニコとさせながら、ソレイユ様が口を開く。


 確かに、上級騎士に迎えに来てもらった事は気になっていたので説明は助かる。


「はい。ソレイユ様は血統官ですよね?」


 血統官という役職は、騎士の血液を検査して貴族の血統、魔法師としての素養があるのか確認する役割を持つと共に、『蒸血機関』の調整役も担っている騎士だからだ。


 『ヴァンピール・アルミュール』を運用する騎士団ならば、最低1人は存在する幹部級の役職である。


 当然、平民である俺からすれば、極めて縁遠い存在だ。


 何せ、『ヴァンピール・(吸血)アルミュール(甲冑)』は貴族の血液を動力源として動くのだ。平民である俺の血なんて、欠片も価値が見いだせない存在の筈だ。


「うん、そうだよ。その様子だと、血統官の仕事の内容は把握しているんだね?」


「ええ、蒸血機関の運用において、血統官の存在は必要不可欠です。従者の資格教本にも書かれています」


 蒸血機関は魔法師の血液を加熱し、魔法エネルギーを活性化させ、その濃度を圧縮した状態にし、強力な魔法を発動させる装置だ。


 当然、血液が貴族(魔法師)の血液でなければ蒸血機関は稼働しない。


 蒸血機関に血を取り入れ、最低限の稼働ができる血液かどうかを判断するのが、血液検査の専門家である血統官の仕事だ。


「ボクはね、キミが『突然変異体』じゃないかと勘繰(かんぐ)っているんだ」


「それって、100年に1度の割合で王国に生まれる、平民出身の魔法師の事ですよね?」


「うん、ボクはアレクサンダー君が、その魔法師じゃないかと勘繰っているんだよ」


「自分が、ですか?」


 にわかには信じられない話だ。


 俺は魔法なんて使えない。だからそんな大層な話に実感も持てないでいた。


「キミは准騎士3人を、魔法を使わずに倒した。だがねぇ、剣の実力だけで平民が貴族を倒すなんて普通はあり得ない事なんだよ。貴族と平民の身体能力の差があるのは、アレクサンダー君も知っているだろう?」


「えぇ、まぁ……」


 ソレイユ様の言う通りで、貴族と平民は身体能力だけでなく知能指数にも差があった。


 貴族は魔法を使わずに3日間は不眠不休で働けるし、電卓を使わなくても3桁の掛け算を暗算で解いてしまう。


 資産の差が貴族と平民との格差を生むのではない。


 貴族なんてどれだけ没落しようとも、プライドを捨てたら幾らでもお金を稼ぐ手段はある。


 それ程までに、貴族と平民は、最初から別の種族なのだ。


 だが、実際の所、俺にはそんな大層なスペックは備わっていない。


 学力も故郷の基礎学校では平均点を上下していたし、身体能力もイザベラ先生に5分でコテンパンにされる程度だ。


「あの、……自分はトルヴェール村のアレクサンダーです。ご覧の通り、平民の従者ですよ?」


「まぁ、調べたら解るさ♪」


「平民の血を調べても何も解りませんよ、ソレイユ様。まぁ、迎えに来て頂けたお礼です。ご自由に採血して下さい」


「ふふん♪ そう来なくっちゃ♪」


 ソレイユ様は上機嫌だ。


 そうこうしている内に、蒸気自動車は聖王宮のビルの中へと入って行った。


 『ヴァンピール・シュバリエ・オルドル』の本部は、聖王宮の中にあるのだ。

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