第8話「最強!天才!ブルーバルト様!」
新キャラです。
ヴィントラオムがこの世に生を受けてから7年が経過した。
ヴィントラオムは今、雪が降る凍える寒さの氷魔研究室にいた。
その部屋は特殊研究室と呼ばれており、まるで本当の森のような見た目をしている。
広さも本当の森ほどの広さはあるだろう。
空を見上げても天井は見えず代わりに雲に覆われた空の様な物が広がっている。
そんな人口の空の下、ヴィントラオムは少女に思いっきり口ずけをしていた。
話はヴィンの誕生日の5日前にまで遡る。
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「おい!そこの地味女!地味が移るからどっか行け!」
エメラルドグリーンの様に美しい緑色の瞳、ギザギザした歯、髪は綺麗な金髪のロングヘアー、なんだか小さな二本の角の様な形をしている部分がある。
彼女の名前はブルーバルト・ガンフィート、自称完璧美少女である。(美少女だけは当ってる)
「おい!ブルー!ヒーナをいじめたらダメだろ!」
ヒーナが反応して言う目線は本に集中させたままで。
「べ、別にいじめられてはないけどぉ」
ヴィントラオムがびっくりして言う。
「ちょ!ブルー!」
ブルーバルトはサメの様にヴィントラオムにかぶりついていた、文字通りの意味で……
「痛い!痛いってブルー!」
ヴィントラオムは腕を振りまわすが全く離れる様子もブルーバルトにはなくかぶり続けるので、ヴィントラオムは観念してそのまま話を続ける。
「はぁ、お前もうちょっと丁寧な言葉でしゃべった方が良いぞ?敬語使えないと社会に出てから困るしな」
「ははいっへはんは?」
「なんて?」
ブルーバルトはヴィントラオムの腕から離れて喋り始める。
「そもそもの話!私はそこで本を読みたいんだ!それをそこの地味女が!」
ヴィントラオムは目を見開いて言う。
「ヒーナは全然地味じゃないだろ!むしろ誰よりも存在感があるじゃないか!」
「うるせぇうるせぇ!とにかくどけってんだ!」
ヒーナは読んでいた本をパタンと閉じて言う。
「こ、ここ本がいっぱいあるし読みたい本があるなら……その…………一緒に探そっか?ブ、ブルーちゃんは何の本が読みたいのかな?」
「うるせぇ!ガキ扱いするな!私は8歳なんだぞ!」
「いや、実はそこ俺も気になってた、滅多に本を読まないブルーが一体何の本を読むのか」
ブルーバルトは明らかに動揺した声で言う。
「お、お前らに関係ない!」
そういうとブルーバルトは一冊の本を電光石火の速さで取り、水路に飛び込んだ。
バッシャーン!
「あいつはいつも元気が良いなぁ」
ヴィントラオムがブルーバルトの背中を見送っていると、ヒーナが喋り始めた。
「ねぇねぇヴィン!この単語なんて読むの?ハヴィッチーネ?」
ヒーナが本に書かれている一文に指をさす。
「あぁ、これは……」
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ヴィントラオムが水路で帰る途中……
(ヒーナと話してたら日が暮れちまうな……日見えないけど)
ヴィントラオムは水路に流されながら、いろいろ考えているとある疑問が浮かび上がった。
(そういえばブルー、字読めるのか?)
そう思い立ったころには、ブルーバルトのいる部屋に上がっていたヴィントラオムである。
ブルーバルトが驚いた表情で叫ぶ。
「な、何しに来たんだよぉ!」
そのころヴィントラオムは(ブルーの部屋着ってピンク色なんだ……)と思っていた。
「いやぁお前が字読めるのか気になって……」
ブルーバルトは声を大にして言った。
「読めるわぁ!!」
「ホントにぃ?」
「あぁ本当だよ!」
ヴィントラオムはそれじゃぁと言って、本を取り開こうとした、がその前にヴィントラオムの目は本の表紙の方に釘付けになった。
(サプライズ50選?なんだこの本?)
「わぁぁぁぁぁぁ!返せぇ!」
ブルーバルトがヴィントラオムに向かって突っ込んでくる。
「え?何!?ぎゃぁぁぁぁ!」
ゴツン!
ヴィントラオムはブルーバルトに吹き飛ばされ、そのまま頭を打ち気絶した。
彼が再び起きるのは、5日後である。
次回「愛の実験」