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バッドエンドのその先にある転生  作者: 八十神 たたま
第二章:吸血王決戦編
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第32話「無知」

今回結構ややこしいかもしれません

「ヒーデリカ!!」

 一人の少年が小さな扉をノックして、楽しそうに言う。

「見てみろ!!これ!!昨日市場で見つけたんだ!」


「ヴィン様!!それって!!」

 部屋の主であるヒーデリカは着替え中だったようで、その美しい曲線美を余すところなくヴィントラオムにさらしながら、ヴィントラオムが掲げている一冊の本に食らいつく。


「いやちょ!!待って!!い一旦服着て!!」

 ヴィントラオムは手で自分の目を覆いながら、ヒーデリカを影の触手もとい【黒い命友(スキアテーロス)】で押し返す。


 ドタドタ!!

 

「じゃ!!着替え終わったら教えて!!食卓にいるから!!」


 バタン!!


 ヴィントラオムは部屋から飛び出して勢いよく扉を閉めた。


 今日は大陸共通の休息日でヴィントラオムとヒーデリカはこれから一緒に歌劇を見に行く約束をしていた。


 違う言い方をすればデートである。


 ヴィントラオムが逃げおおせた食卓でリディアがニヤ付きながら大きな本を読んでいる。


「なぁにがそんなに面白いんだ?リディア」

 ヴィントラオムが机に突っ伏しながら聞く。


 リディアは楽しそうに言う。

「あぁ、これはね……1000年ごとに売られる1000年の間に起きた世界を変える出来事をまとめた本さ、今日が丁度発売日でね……前回が出たのが私が10歳の頃で、とても面白かったのを今でも覚えている……今回も非常に面白い事ばかりだよ……」


 ヴィントラオムが興味本位で聞く。

「へぇ……例えばどんなの?」

 

 リディアが楽しそうに言う。

「今期は特にこの400年が凄い、例えばこれはつい200年前の出来事だ、空を支配する組織、星徒組織フルート・オブ・スターズのトップが命神に認められたらしい……これで命神の認めし者は4人に増えた」


 ヴィントラオムは混乱しながら聞く。

「待て待て!色々知らない単語が一気に出てきた!!まず星徒組織フルート・オブ・スターズってなんだ?」


 リディアが答える。

星徒組織フルート・オブ・スターズは世界に3つ存在する世界のそれぞれの部分を支配する組織の1つだ、陸を支配する組織、帝閣五連(ていかくごれん)、海を支配する組織、マジックルート学園、そして空を支配する組織がさっき言った星徒組織フルート・オブ・スターズだ、彼らは世界中の均衡を保つことを目的としている治安組織の様な物だ………」


 ヴィントラオムは再び聞く。

「それじゃあ命神の認めし者ってのは?」


「この世を創造したとされる神、命神が付けた二つ名に命という言葉が入った者を、次の神になるにふさわしい人物と命神に認められたとする世界の決まりがあるんだ」


 ヴィントラオムは理解したように頷くと言う。

「なるほど……説明を聞いて思ったけど、俺この世界の事全然知らない気がする……」


 リディアは言う。

「フフ…これも知らないだろう?これは一番最近の出来事で13年前、天下大陸で15人目の勇王眼保持者……勇王が確認されたとか」


 ヴィントラオムは例のごとく頭の上に?を浮かべる。

「勇王眼ってなんだ?」


 ヴィントラオムの問いにリディアが「しまった!」と言う。


 ヴィントラオムが聞く。

「しまったって……それどういう意味だ?何か俺に知られたくない事でもあるのか?」


 リディアはしばらく黙り込むと、覚悟を決めた様に立ち上がり神妙な顔つきで話始める。

「これは350年前の出来事だ、主に人間種がいる純然大陸のヴェルス王国にて世界初、黄金の瞳……」


 ガタン!!


 ヴィントラオムが机に乗り出して目を見開く。


「あ、いや……えっと……続けてくれ……」


 リディアが話を続ける。

「…君が驚いた理由は分かってる………さっきの話の続きはこうだ……世界初、黄金の瞳……()()()を持つ初代勇王、リーベット・()()()()・アーサー・フォーカリプスが現れた」


 ヴィントラオムは言葉を失う。


 そんなヴィントラオムを見て言う。

「正直に言ってしまえば、彼は君のよく知るタックスだ…根拠は彼の名言の中に『兄が守ろうとしたものを守りたかった……だから王となった』というものがあるからだ」


 ヴィントラオムの瞳孔は大きく開き、息も荒くなっていく、それでもヴィントラオムは勇気を出して聞く。

「タックスは……タックスは生きているのか!!!!」


 大きな食卓を埋め尽くす大きな大きな問いにリディアは少し声を和らげて答える。

「この本に書いてある通りならば……274年前に老衰で死んでいる………」


 そう言うリディアの目には涙が零れていた。


 リディアは落ちる涙のしずくを掌ですくいながら言う。

「いざ声に出して言ったら泣くほど悲しいね……私もヴィンを通して彼の兄をこの目で()()しているから」


 ヴィントラオムは震えながら言う。

「嘘だ……」


 ヴィントラオムが吸血鬼として生まれ変わってからも……ヴィントラオムの物語は知らないところで動き続けていたのだ……それを今ヴィントラオムは弟の死と言う形で思い知る。


 その後のヴィントラオムの悲しみと後悔に包まれた魂の絶叫は言うまでもないだろう。

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