第30話「波乱」
少女もといヒーデリカの一人称はわたくしです。
ヴァンパイアヴィントラオムは赤い目の色をしていて黒髪です。
この世界は結構近代的な武器や機械がたくさんあります。
見た目のイメージ的にはスチームパンクをイメージしてます
少女はエントランスで仮面の警備を殺して回っている(正確には吸血鬼種なので死んではいない)ヴィントラオム達をキラキラした眼で見ながら思う。
(外は思ったよりも予想内でした……本で読んだとおり……すべてが予想通り……)
(……ヴィントラオム……いや……ヴィントラオム様と呼ばせてもらいます……彼は………もしやすると……本から飛び出してきたのでは?!家臣を連れ姫のために戦う……己がボロボロになることもいとわない、断固とした決意………私が恋した本の王子様とそっくり……)
少女の思考はこんな意味の分からない所に終着していた。
しかしそれも無理のない事だろう。
なぜなら彼女は300年間作法と恋愛小説で育ったようなものだからだ。
それに自分の事を真剣な目で見つめたヴィントラオムから感じとった、初めての寄り添いに心を乱されてもいる。
正常な思考はできないだろう。
少女の念願が叶ったのだから。(彼女の中では)
ヴィントラオムが男の生首を壁に叩きつけながら楽しそうに言う。
「おい!!べゾルバ!!リディア!!こいつ頭ぶった切っても他のと違ってすぐ再生するぞ!!」
ブシャァ!!
べゾルバが警備の心臓を刺しながら言う。
「あぁ!!そいつヴァレンタインの次男坊や!!王族の血が通ってるからしぶといんや!!」
「そうか!!妙にしぶといと思ったら……こいつ俺と同じ王族だったのか!!オラ!!」
ドゴォン!!
「あ!叩きつけすぎて壁が壊れた……こいつ頭固いな……」
リディアがべゾルバの後ろでうずくまりながら言う。
「ほう……それは中々面白いね……壁よりも固い頭とは…………いやいやそれよりもヴィン……なんだか君戦闘狂ぽくなってないかい!?」
「そうかなぁ?と言うかべゾルバ!!なんかお前の横の壁膨らんでないか?」
ドカァァァァン!!
「ん?うおぉぉぉぉぉ!!」
べゾルバが壁を見ると同時に先ほどヴィントラオムを少女のもとに案内した大男が壁を突き破って飛び出してくる。
「クソ!ビックリさせんなや!!」
「死ぬが良い!!!」
大男がべゾルバの顔面を殴るために一歩踏み出す。
フォン……
【罠|:魔陣式接触起爆型対水魔地雷:クロノトマス教会製サンダーバード1923式】
ドォォォォォン!!!!
突然大男が爆発四散する。
リディアがそれを見て嬉しそうに言う。
「いやぁ……張ってみるもんだな!トラップ!」
血だらけになったべゾルバが半ギレで言う。
「今の!むっちゃ高いトラップやん!!なんで今使うんや!!」
リディアは無視を決め込む。
べゾルバが警備の攻撃をかわしイラつきながら言う。
「あとで話の続きするからな!!逃げるなよ!!」
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仮面をつけた警備が大急ぎで茶髪のイケメンに何かを伝えている。
「団長!!あ、いや入婿様!!大変です!!ハーリッド家の者がいきなり暴れ始めて!!主も倒されてしまいました!!!!とにかく一刻も早く対処を!!」
男は髪の毛をくしで整えると言う。
「それは我が愛しきプリンスのピンチなのかい?」
警備は答える。
「ええ!それはもう!!ヴァレンタイン家の一大事と言ってもいいでしょう!!」
ヒュン!!
ビィィィン!!
男は警備に向けてくしを投げた。
男が投げたくしは壁に垂直に突き刺さっている。
男は恐怖で震えている警備に近づき言う。
「俺が聞いたのはそんなプリンスが生まれてきたおかげで王族序列一位になれた弱小一家の安否じゃない、プリンスの安否だ……万が一あの美しい顔に傷がついたら困るからね……あぁそうだ!!彼女何か心に傷の一つや二つ負っていないかい?婚活に利用させてもらいたいのだが!!」
警備は男の圧にやられすでに気絶している。
男は警備に痰を吐き捨てて言う。
「この役立たずめ……さ~て早速プリンスに恩を売りに行くかな」
ジュルッ
男は舌なめずりをすると、通路を歩きだした。
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円卓にて、ヴィントラオムが凄い険相でヴァレンタイン家長男、ジャタ・ヴァレンタインの胸ぐらを掴み話している。
「これから先……あの少女に自由を与え、お前ら家族が愛を持ってちゃんと育てろ、どうせお前らはあの子を自分たちの私利私欲のために使ってんだろ?わかるんだよ……お前らのその冷たく酔った目を見ればな……それもやめろ、これからは一人の少女として彼女を扱え、出来ないんだったら俺はここでお前を殺す」
そんなヴィントラオムを少女は陰から見ながら考える。
(やっぱり……私のために戦ってくださるあの姿………ヴィントラオム様は私の初恋の人……あの本の王子様です!でも……だとすると彼はもうすぐ………)
ヒュン!!キィィィン!!
突然ヴィントラオムの後ろから斬撃が飛んできて、ヴィントラオムがその斬撃を影の触手で防ぐ。
「なんだ!!まだいたのか」
ドン!!
「ぐ?!」
ドカァァァン!!
ヴィントラオムは斬撃を防げたものの、その状態から放たれた腹蹴りには対応できず吹っ飛ばされて壁にめり込んだ。
【ディミ・シングロ】
キィィィン!!ブン!!
「ん?」
ヒョイッ
バァァァン!!
茶髪のイケメン男がべゾルバの攻撃を避ける。
「おぉあぶね!避けてよかった!」
べゾルバがとてつもないスピードで男の懐に入る。
「これも避けた方がええで!」
キィン!!キィン!キィン!キィィィン!
男はべゾルバの斬撃を全て防ぐ。
「っな!全部しのいだやと!?」
男はニコッニコで言う。
「お前強いな!!俺の奴隷にでもならねぇか!?」
べゾルバは俯いて言う。
「クソ!このままじゃ負ける」
ザシュ!!
べゾルバの攻撃が男の腕を斬る。
「かボケ」
男は切れた腕を押さえて叫ぶ。
「ガァァァァ!!いたい!!いたいよぉ!!」
べゾルバは男に近づくと再び連撃を繰り出す。
ザシュ!
男は悶絶しながら言う。
「グアァァァ!!まさか!!お前俺に攻撃のリズムを覚えさせたのか!!」
べゾルバは落ち着いた様子で言う。
「お前はまぁまぁ強い、ただまぁまぁ強いせいでお前は死ぬんや、調子乗った奴にはお似合いの死に方やろ」
「クソ!!」
男は瓶をポケットから取り出すと言う。
「お前だけは絶対に殺すからな!!」
パキッキィィィィン……
男が瓶を割ると魔法陣が展開されて、とてつもない光が放たれる。
べゾルバは目を覆って言う。
「くっなんや!!」
光が消えるとそこに男はいなかった。
リディアがサングラスをクイッとすると。
「今のは瓶詰め加工した転移魔法だね」
ガラッ
壁の瓦礫をどかしてヴィントラオムが起き上がる。
「あれ……あの男は?」
べゾルバが答える。
「逃げた」
ヴィントラオムはそれを聞くと安心したようにため息をついて言った。
「そんじゃ逃げるか!」
そう言うヴィントラオムを少女が引き留める。
「待ってください!!」
リディアたちが驚く。
「おや、あの子は君の遊び相手じゃないか」
少女はもじもじしながら言う。
「そ、そのぉ……お話があるんです……ヴィントラオム様に」
ヴィントラオムは驚く。
「さ……様?」
30話も連載できた自分を褒めたいですね。
投稿頻度が遅くてすみません。
その分出来の良い話を書けるよう精進します。