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バッドエンドのその先にある転生  作者: 八十神 たたま
第二章:吸血王決戦編
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第26話「大脱走」

 男が二人中庭で向かい合っている。


 月光がスポットライトの様に二人の男を照らし、今から起こることを隠すまいとしている。


「初めて……やった……リディにあんなことを言われたのは……アイツは世界をずっと傍観してきてる……色んな方法で、世界に何回も痛めつけられてきた……だからあいつは、自分だけは良い奴でいようって決めた奴や……そんなアイツに初めて……死ぬほど苦しい思いをさせろなんて……」


 べゾルバはポケットから赤と白の二本の短剣の絵が描かれたカードを出す。


「リディとワイは子供の時から一緒や……だからあいつの考えてることは大体わかる……ヴィン、アイツはお前を救おうとしてた……このくそったれな世界から」


 ヴィントラオムはさほど驚かなかった。


 ただべゾルバという風に身を任せ、なるようになっている。


「ワイはお前を追い詰めた……その結果お前はリディアを追い詰めた……自分の感情をリディアにぶつけた……これでハッキリしたんやないか?自分の人生がおままごとじゃない、本物だってことが……アイツのおかげで……」


 依然としてヴィントラオムは口を開かない。


「はぁ……一言もしゃべれんか……まぁ無理ないな、お前は今、怒り、恐怖し、後悔してる、もう自分が何をすればいいのかなんてとても考えられない状況やろうな……逃がしてやるよ、そこから……話はその後や」


 べゾルバは手の中のカードから赤と白の二つの短剣を抜き始める。


「まだ自己紹介もしてなかったな……ワイはべゾルバ・ボンベレード、用心棒や……よろしく」


 ズズズ………ジャキィィィン!

 

 二つの短剣が完全にカードから引き抜かれる。


【フォトスカード:ディミ・シングロ】


 キィィィィン……


 べゾルバが二つの短剣をぶつけ、振動させる。


「幸せになりたいんやったら、ここで死ぬな」


 ブン!!


 べゾルバが白い短剣を勢いよく振った。


 ヴィントラオムは寒気を感じた、そうするといつの間にか体を右に逸らす。


 スパン!!


 ヴィントラオムの左腕が綺麗に斬れた。


(あ、これは……)


 ヴィントラオムが腕があった場所を押さえ後ずさる。


 ブチブチ!!


 ヴィントラオムの肩の肉が泡の様に膨れ上がり、左腕に成ってゆく。


(なんだろうな……もう腹が立ちすぎておかしくなったのか……べゾルバが……あのべゾルバが……遅く見える……)


「治り早くなったやないか、ならもっと切っても平気やな」


 ィィィィィィ!!シュバ!!


 べゾルバは先ほどヴィントラオムを斬った見えない斬撃を乱射する。


(べゾルバのこの攻撃は何だ……)


 ヴィントラオムは影を盾にして持ちこたえる。


(とにかく今は耐えるしかないか……)


 シュパ!!スパ!!スパ!!………


 やがて斬撃がやんだ。


(今)


 ヴィントラオムは高速で移動し、一瞬のうちにべゾルバの懐に潜り込む。


 ブシュ!!


 ヴィントラオムは影を鋭くしてべゾルバの喉を貫いた。


 ニヤ……


 それは悪手だった。


「罠か!」


「正解!!」


 スパァン!!


 一瞬のうちにヴィントラオムの体は赤い短剣で二等分にされる。


 べゾルバはヴィントラオムの上半身を壁に向かって思いっきり蹴り飛ばし、ヴィントラオムが吹っ飛んだ方向に赤い短剣をぶん投げた。


 ドゴォン!!ズブッ!!


 ヴィントラオムの上半身は赤い短剣に貫かれ壁に固定された。


「ハァ……ハァ……へへ……やってくれたなぁ……べゾルバァ!!」


 ヴィントラオムは影の触手ですぐに短剣を引き抜き、影で足を形作ると、ヴィントラオムに向かって突進した。


「ノッてきたなぁ!ヴィン!!」


 ブン!!


 キィィィン!!!


 べゾルバが白い短剣でヴィントラオムの赤い短剣による攻撃を防ぐ。


 激しい火花が散ると同時にべゾルバが体勢を崩した。


 ヴィントラオムはその隙を逃すまいと影の触手を四本出しそのすべての先端を極限まで鋭くする。


 するとその触手で連撃を放った。


 べゾルバは防戦一方になる。


 カキン!!カキン!!カキン!!


「どうだ!!べゾルバ!!これが俺の力だ!!」


 べゾルバは静かに、しかし確かな興奮を隠せずに言う。


「あぁ、期待にそぐわんなぁ……そんじゃもう一発期待に応えてくれや」


【ディミ:天震斬ディアホリゾー】 


 ブン!!


 ブシュ!!ズガァァァァン!!!!!


 ヴィントラオムの首が飛び、後ろにあったハーリッド邸も半分に切れた。


 ズガガガガガガガ…………


 べゾルバは笑顔で言う。

「おぉい!!こんなんで終わらないよなぁ!!ヴィン!!」


 天空で回る生首の脳内では冷静な思考が展開されている。

(あ……この感じ首が飛んだな……まぁいっか)

 

 シュルルル……


「もう対策はしてる……」


 ヴィントラオムの首からは影が伸びていた、その影が一気に収縮するとヴィントラオムのバラバラになっていた体が全て繋がる。


 スタッ


 ハーリッド邸の残骸に着地したヴィントラオムはべゾルバを見下して言う。

「おーい!!まだ、俺は逃げれてねぇぞ!!……べゾルバ!」

 

 べゾルバは嬉しそうに言う。

「………そう来なくちゃな!!」


 べゾルバはポケットから緑色の三叉槍が書かれたカードを出す。


 ズズズ………ジャキィィィン!


 カードから三叉槍を完全に引き抜く。


【フォトスカード:瓶天ノ風】


 左手に白い短剣、右手に緑色の三叉槍を持ちべゾルバは言う。

「さぁ、ラウンド2や!!」

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