第18話「真実」
「こっちだ!!」
ヴィントラオムが後ろを向いて手招きする。
二人はヴィントラオムの後ろを付いて行く。
(もうすぐだ……もうすぐで幸せを手に入れられる……)
「あそこだ!あそこの部屋にテイパーがいる!」
通路の奥の広場にテイパーともう一人男が立っている。
ヴィントラオムはテイパーに向かって手を振る。
「テイパー!!」
ヴィントラオムがテイパーに抱き着こうと両手を広げた、しかしヴィントラオムが抱き着く直前でそれをヴィーナとブルーバルトが止めた。
ブルーバルトがテイパーに言う。
「テイパー!随分、熱烈な歓迎をしてくれるじゃねぇか!横のお人形が展開させてる魔法陣は何だ!?」
テイパーはニッコリと笑顔になって喋り始めた。
「ヴィン!久しぶりだな!さぁ行こう!地上に出たらうまい物を食うって約束したことを覚えてるよな!」
テイパーの言葉には何の矛盾も違和感もなかった。
しかし子供たちはテイパーの声に猛烈な不安感を覚える。
「さぁヴィン!行こう!」
テイパーはヴィントラオムに手を差し伸べる。
ヴィントラオムはテイパーの手を払いのけて言う。
「テイパー……テイパーは何で手を差し伸べる……すまないけど俺は今、あんたを疑ってしょうがないんだ」
テイパーの顔から笑顔消える。
ヴィントラオムが聞く
「お前……本当に味方か?」
テイパーの隣の男が喋り始めた。
「おかしくなる………順番が……おかしくなる!!」
テイパーがため息をする。
「だから僕は言ったんだ!!いくらこいつらに価値があろうと、不意打ちでぶち殺しておいた方が良いって!!それなのに君は話も聞かずに!!おかげで僕の順番が!!おかしく!!なった!!!」
ヴィントラオムはテイパーに向かって叫ぶ。
「テイパー!あんたに何があったのかは知らないけど……俺たちの事くらいは教えてくれ!!」
テイパーは人が変わったように話始める。
「良いだろう、死ぬ前に教えてやる、そもそもお前たちがここである程度の自由を許されていたことには、しっかりとした理由がある」
ヴィントラオムは唾をのむ。
「ヴィン、いや、ここにいる子供たちは皆、我々、総魔学会によって作られたクローンだ、お前たちが親と言っていた者たちも役者にすぎぬ」
3人は絶句する。
「ヴィーナ、お前は完璧な複製品を超えた、最強の生物だ、我々が世界最強と謳われた英傑の肉を使い作り出したお前たちを制御できるタイムリミットを12年に定めた、もうタイムリミットなんだよ」
テイパーが剣を抜く。
ヴィントラオムはヴィーナに言う。
「ヴィーナ……お前だけでも逃げ…」
ドガァァァ!!
ヴィントラオムが言い終わる前にヴィーナは壁を壊し、ヴィントラオムに包みを渡すとブルーバルトと一緒に水路に突き落とした。
「ヴィーナ!!!!」
ヴィーナはヴィントラオムを見下ろして言う。
「じゃあね、お兄ちゃん」
ザバーン!!
「ヴィーナ!!ヴィーナが!!!」
ブルーバルトがヴィントラオムを必死に抑える。
「ヴィン!!やめろ!!暴れんのは陸に上がってからだ!!トレリーノーミ!!」
ドン!!バゴォン!!
ブルーバルトは壁を破壊してヴィントラオムを抱えながら通路に上がった。
「ブルーは逃げてろ!!俺はヴィーナの所に行く!!」
ブルーバルトは静かに言う。
「行くのは止めねぇ、だけど、さっき渡したプレゼントは返してくれ」
ヴィントラオムは服の下から箱を取り出しブルーバルトに渡す。
箱を受け取ったブルーバルトは笑顔になって言う。
「地上で待ってるぜ!!」
ヴィントラオムは返事もせずに先ほどの広場に戻って行った。