第16話「魔法を作ろう!②」
二人がぶっ壊れます。
ヴィントラオムがこの世に生を受けて9年が経った。
「……」
ヒーナが地面に広げられている作図用の紙を指さす。
「ヴィン、ここの魔数値一桁間違ってない?」
ヴィントラオムは無言で修正を始めた。
「あとこことここの円の面積は前と同じだから修正して」
今度はヴィントラオムが指をさす。
「ここって正三角形で良いんだっけ?」
ヒーナは「駄目」と言うと正三角形を消して正四角形にするようヴィントラオムに指示する。
「よし、できた、魔力を流してみるか」
ヴィントラオムは今書いた魔法陣に手を乗せて魔力を流し始める。
魔法陣は何の反応も示さない。
「あ~これはダメな奴だ……また修正だな」
ヴィントラオムは壁に先ほどまで書いていた、魔法陣の縮小版を影の触手でコピーしその横に546と掘る。
ヒーナが魔法陣を観察しながら修正点を探している。
「やっぱりもう少し大きいかな?」
ヒーナはヴィントラオムに頼み円を書いてもらうと、ヴィントラオムが書いた円をまじまじと見つめる。
「一旦これでやってみよっか」
ヴィントラオムは頷くと影の触手で円の中に先ほどと同じ魔法陣を書いていく。
「にいちゃん!」
ヴィントラオムが先ほどヒーナに指摘された正四角形を書いている最中であった、タックスがヴィントラオムの背中を軽く叩いた。
ジッ
「あ、1ミリずれた……消すか……」
タックスは不思議そうに尋ねる。
「にいちゃん!今何してんだ?」
ヴィントラオムは死んだ目をして答えた。
「魔法陣を書いてる…これにも一応魔力流しとくか……」
ヴィントラオムが魔法陣に手を置き魔力を流す。
魔法陣が光に包まれてゆく。
「え……」×2
「わー!きれいだな!」
ヴィントラオムとヒーナは同時に倒れる。
「できた…」
「できたな…」
タックスは質問する。
「なにができたの?」
その質問をタックスがし終えたころには、すでに二人は気絶していた。
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「できたぁぁぁぁあああああ!!!!」×2
二人が悲鳴ともとれるような大声を出しながら起きる。
「わぁ!!」
ガタン!!
タックスが思いっきり椅子から転げ落ちる。
ヴィントラオムが言う
「できた!できた!タックス!そこに置いてある魔法陣取って!」
「え?」
「早く!!」×2
タックスは二人の圧に押され、魔法陣が書かれた紙を取る。
「タックス、ヒーナの方に置いてくれ」
タックスは頷き、ヒーナの方に紙を置く。
ヒーナは泣き声で言う。
「いいの?……」
ヴィントラオムも泣きながら言う。
「あぁ!お前のために作ったんだからな!」
グス!
「ありがとう!」
ヒーナはそう言いながら魔法陣に触れて唱える。
「其の御心に近づく為の希望よ、我に従い我に尽くしたまえ、空を割る力の本領を見せよ!‥‥‥えーと魔法の名前は…君が決めて?」
ヴィントラオムは号泣して言う。
「おことばにあまえてぇええ!空間操術でぇぇぇ!」
ヴィントラオムのネーミングセンスには脱帽物だ。
「空を割る力の本領を見せよ!空間操術!」
ヴオン!
ヒーナがそう言うと魔法陣が展開された。
魔法陣の目の前の空間が見る見るうちに歪んでいく。
ヴィントラオムが一冊の本を差し出し言う。
「これ!研究日誌!」
ポツッ……
ヒーナは小さなノートに涙を落とし始めた。
「見える……ハッキリ見える!よがっだよぉ~ごわがっだ~もう……本読めなくなっちゃうんじゃないがっで!」
ヴィントラオムとヒーナは抱きしめあい歓喜しまくっている。
「やっだぁぁぁぁああ!!せいごうだぁぁぁぁ!!」
「ヴィン~~ありがどおおお!すぐっでぐれでぇぇぇ!」
「ぞんなごど!ヒーナの実力だよぉぉぉ」
これ以上はもはや何を言っているのか聞き取れないレベルに突入するので、二人が落ち着くまで待つとしよう。
次回、「脱出作戦決行」
そろそろシュピーゲル編(仮)が終わります