第15話「魔法を作ろう!①」
ペルファを殺した一行は、タックスを心配して探しに来たタックスの両親によって保護された。
あの一件以来、子供たちの仲はますます深まり、ヴィントラオム自身も人を殺したという責任を最初こそ感じたが、大切な家族を守るためにやったことだから責任感をそこまで感じる事は無いと割り切ることが出来た。
しかしそんな子供たちに含まれない子供もいた。
「私は…あんな物を……」
ヒーナ・ブラッドレイであった。
ヴィントラオムは虫の羽音すらも聞き取れるくらいに静かな部屋で、静かに読書をするヒーナの事を不思議そうに眺めていた。
(最近…ヒーナの様子がおかしい……なんだか元気がない……ペルファの一件か?ヒーナってあんな事の一回や二回でそこまで追いつめられる様な人間だったか?)
ジー………
ヴィントラオムのヒーナ観察が始まってからすでに1時間が経過していた。
「ん?」
ヴィントラオムはヒーナのとある仕草に目を付けた。
(ヒーナ、なんかやけに目を細めながら本を読んでるな……家族団らんで飯を食ってるのに新聞を読んでたおばあちゃんを思い出してくる…)
ヴィントラオムはヒーナに話しかける。
「ヒーナ、もしかして本、読みにくかったりしないか?」
ヒーナは目を見開いて答える。
「え?!なんで分かったの?!」
ヴィントラオムは答える。
「いや、なんか読みにくそうにしてるなって…………もしかしてここの所元気が無いのはそれが原因か?」
ヒーナはコクリと頷く。
「う、うん……実は…やっぱり本が読めないと精神が不安定になっちゃって…………目が悪くなり始めたのは、よりによってあんなことがあった後だし…………」
ヴィントラオムはそれを聞いて考え込む。
(大体、転生物の主人公だったら、ここら辺で前世の記憶を使って眼鏡を作ったりできるんだろうけど…………俺にはそんな知識ないし…………そうだ!)
ヴィントラオムは立ち上がりヒーナに言う。
「ヒーナ!目を良くする魔法を作ろう!昨日丁度部屋の床下に隠されてた「魔法の起源と作成法」って本を見つけたんだ!これを参考に作ってみよう!」
それを聞いたヒーナは驚いた!と言う代わりに両手を広げた。
「とりあえずこの本を読んでみるか!」
ヴィントラオムはヒーナの横に座り本を開いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5時間後…
「なんだこの本!最初の500ページくらいは蘇生魔法を復元する手がかりが書いてあるだけで、魔法の作り方は最後の100ページくらいしか書いてないじゃん!」
苛立つヴィントラオムをヒーナがなだめる。
「と、とりあえず本の内容を試してみようよ!ほらこれとか!」
ヒーナが706と書かれたページをめくる。
「え、えーと魔力は量さえあればどんな物にでも形を変える粘土の様な物である、魔力を何にするかを決める事が魔法製作の第一歩だってさ!」
「うーん‥‥」
ヴィントラオムは頭を抱える。
(眼鏡の事を考えると………あれって何かを歪ませてるイメージだよな‥‥歪ませてるものってなんだ?確か受験勉強の時にやった気が‥‥空間だった様な?なら空間を操れればいいのかな…)
考えた結果、ヴィントラオムはそんなわけない結論を出した。
ちなみにヴィントラオムの過去の偏差値は60を超えていた。
「それじゃあ魔力を空間を歪ませる力に変えてみるってのはどうだ?」
ヒーナは「それと視力って関係あるの?まぁヴィンが言うなら関係あるのかな!」と言うと再び本のページをめくった。
「魔力を何に変えるかを決めたならば、その次は魔力式、別名魔法陣を作らなければいけない…この作業は魔法作成において最大の難関だって!」
ヴィントラオムは腕を組んで言う。
「じゃぁその難関、さっさとクリアしてやるか!」
ヒーナは拳を天高く掲げて言う。
「おー!」
意気揚々と大きな紙を広げるヴィントラオムとヒーナ、だがヴィントラオムたちは知らなかった、この魔法陣を作るのに、2年の歳月をかけることを。
そしてこの魔法を作るという行為が最悪の事態を招くことを。
次回は「魔法を作ろう!②」です