第12話「高嶺の花には棘がある」
ブルーは天才です
4人は絶句する。
理由は何であれヴィーナが敵に回ったことに。
シュバ!
ヴィーナはペルファに殴り掛かる。
が寸でのところで拳が止まった。
「ペルファ……お兄ちゃんを傷つけたら…………ゆる……さな……」
ペルファはヴィーナの顔を掴み笑う。
「は!素晴らしい!私の絶滅因子を受けてなお、ここまで自我が残るとは!」
ヴィントラオムは声を震わせる。
「ヴィ、ヴィーナ?……」
「おに……い……ちゃん……ごめ……んね」
「ヴィーナ……な……何言って……」
ヒュン!
「ヴィン!あぶねぇ!」
ブルーバルトがヴィントラオムを押し倒す。
気が付くとヴィントラオムの頬に小さい切り傷ができる。
しかしそんなこと彼にとっては問題にすら分類されなかった。
「ヴィーナ?……おい……返事をしてくれよ……」
ペルファは叫ぶ。
「異端児ぃ、貴方にこの高嶺の花は似合わない!せいぜい棘に刺されて死ぬが良い!ヴィーナ幼女ぉ!まずはそこの異端からやってしまいなさい!」
ヴィーナは手を突き出し白い魔法陣を展開させる。
タックスが叫ぶ。
「行け!メドレ!」
「キュピピ!」
メドレの小さな体からも白い魔法陣が展開される。
ビュン!×2
そしてほぼ同時にお互いの魔法陣から魔動砲が発射された。
魔動砲の威力はヴィーナの方が強く、少しずつメドレが押されてゆく。
「今だ!にいちゃん、早く逃げよう!」
「でも、ヴィーナが!」
「今は逃げるときだろ!」
「でも!!」
「おらぁ!」
ブルーバルトが思いっきりヴィントラオムをぶん殴る。
グッタリ……
ヴィントラオムは気絶しブルーバルトが持ち上げる。
「今のうちに行くぞ!」
3人と気絶1人はそうして森の奥へ進んでいった。
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森の中の小屋で……
グググ……
「お~き~ろ~!」
ブルーバルトが気絶しているヴィントラオムの頬をつねっている。
そうしているとヴィントラオムが勢いよく起き上がった。
「ヴィーナ!おい!ヴィーナは!」
ヴィントラオムが勢いよくブルーバルトの肩を揺する。
「落ち着け、あいつはまだ生きてる」
ヴィントラオムは一息ついた後、問題がまだ沢山あることを思い出して再び絶望する。
「今ヴィーナは奴に……」
ブルーバルトは自分の胸をポン!と叩き言う。
「心配すんな、あれは解除できる」
ヴィントラオムは怒鳴るように言う。
「何を根拠に!」
「奴は「私の絶滅因子」と言った、絶滅因子っつぅのは総魔学会の奴らが持ってる特殊な因子なんだ…奴が使ってんのは、多分光属性の絶滅因子だろうな」
「な、なんだよ……それ」
ブルーバルトは椅子に座って喋り始めた。
「奴らの絶滅因子は魔力を歪ませることのできる因子だ、奴らは魔力を歪ませて自分たちの魔法を魔改造することが出来る」
「それでなんでその絶滅因子ってのが光属性ってわかるんだ…」
「奴の使っている魔法の元になった魔法の検討が付くからだ、恐らく中級魔法のフーガが元だと私は見てる……フーガは元々自分の思考を相手の思考に流すっていう魔法の筈なんだがな」
ヴィントラオムは頭を抱える。
「それで……それで一体俺はどうすれば……」
ブルーバルトはヴィントラオムの肩を強く握って言う。
「あいつを無策で倒すのは不可能だ……悪いが私は何か作戦を立てるとかはできねぇ、お前でも分かるだろ、少なくともお前以外に良策を考えられる奴を私は思いつけない……」
ヴィントラオムは再び俯き言う。
「でも……」
「でもでもうるせぇ!お前なら何か思いつくだろ!ヴィーナを救いたくねぇのか!いちいち何か理由付けて逃げようとすんな!」
ブルーバルトはヴィントラオムに訴える。
「お前は!ヴィーナの何なんだ!」
「俺は……お兄ちゃんだ……」
「そうだ!お前はお兄ちゃんだ!だったら助けるべきなんじゃないのか!」
(俺は少しこう思っていた、ブルーがペルファに触られていればって)
「お前はヴィーナを助けたくないのか!イラつかないのか!」
(今俺はブルーに助けられてるのに…俺は‥‥)
バチン!
ヴィントラオムは己の両頬を勢いよく叩く。
「あぁ……イラつくぜ全く……やってやるよ…ヴィーナを救って、ついでにあのペルファのごみ野郎をぶっ倒す!」
ヴィントラオムは立ち上がり言う。
「早速だが……俺に良策がある」