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バッドエンドのその先にある転生  作者: 八十神 たたま
第一章:シュピーゲル編
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第1話「神との性交と転生の成功」

15歳以下の方は閲覧しない方が良いです。

 パチュ!プチュ!

 ……音だけで何が行われているのか分かった人もいるだろう、だが分かっていない人のために結論から言おう。

 

 男は今、神とセックスをしている。

 なぜそうなったかは、男が生きている時まで遡る……

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「お願い……殺して……」

 出張から帰ってきた男の目に入ったのは、血と痣でもうそれを顔と呼んでいいのかと疑ってしまう程、変わり果てた男の弟、達也の顔と、まるで魚のゲロの様な状態の腕を地に着けて、目玉が入っていたはずの空洞を片手で必死に隠している、男の母親だった。

 

 男には何があったのかは全く分からない、分かるのは彼女たちにはもう生きるという選択肢がないという事だけだった。

 

 フローリングの床には一本のサバイバルナイフが置かれていてナイフの下には「自殺用」と印刷されている紙が置いてあった。

 

 達也の「ヒュー、ヒュー」と言った微かな呼吸を聞きながら、涙の代わりに真っ赤な血液を流している母親を見ていると、男は馬鹿になって単純な思考だけが脳内を駆け巡った。


(何があった?!)

(嫌だ、こんなの嫌だ!)

(こんなことをしたのは誰なんだよ!)

(痛そうだし、苦しそうだ……早く救急車呼ばないと!)

 

 達也がまるで焼かれているこんにゃくの様な声で言う。

「うぅ……ぁあ、あぁぁぁ、痛いぃぃぃ」

(チクショウ!どうやったら楽にしてやれ……)

 

 男の目線はナイフに行く。

 

 そこから先を男が思い出すと男の頭がおかしくなってしまいそうだ。

 

 その数日後、男は死刑判決を受けた。

 

 面会者は居ない、男の家族はもういない、男の父親はヤバい薬に手を出して、中毒で死んだから居ない。

 

 男の死刑囚ライフはまるで棺桶の中で虫に食いつくされるのを待っている死体かの様な、棺桶ライフだった。


 男は一日中本を読んで、ただの屍のように生きていた。

 飯の時も、もちろん屍だ、飯の味はしていたが男はそこに何か思うところは無かった。


 別に感覚が欠損しているわけではない、だが感情は欠損していた。

 

 そんな屍のある日の朝、男はとある変化に気が付いた、独房の扉にカギが掛かっていないのだ。

 男は気になって扉を開けると、そこには真っ白な8畳の四角い部屋が広がっていた。

 

 椅子が二つあり机がその間を遮っている、奥の椅子の前には白い和服を着た老婆が立っていた。

「ちこうよれ」

 パチン!

「?!」 


 老婆が指を鳴らすと俺はいつの間にか椅子に座っていた。


 老婆は机の上に一枚の手配書の様な物を置く。

 男は机の上に置かれた白い紙を不思議そうに眺めている。


 紙には男の顔とその下に三十億という数字が大きく赤文字で書かれていた。


 数字の横には見たことのないメダルの様な絵が描いてあって男はその絵にどんな意味があるのかと言う疑問を抱いた。


「それの読み方は30億金貨じゃ」

(うわ!急に喋り始めた!) 


 老婆が急に話始めたので男はびっくりして椅子から落ちそうになる。


「おぬしに三つ選択肢をやる」

 老婆の言葉を聞いた男はたくさんの質問をし始めた。


「何を言ってるんだ?……大体ここは何処なんだ?お前は誰なんだ!?」

 男の声には未知への恐怖が籠っている。


「落ち着くが良い、この空間は接触の間、死んだ人間と神が接触する空間だ」


 男はその言葉を聞いて声を荒げた。

「待ってくれ!死んだって……俺は死んだ覚えなんてないぞ!?」


 老婆がため息をつく。

「お前は死んだ、3分前に首をつるされてな、今頃はお前の糞尿を誰かが掃除している頃だろう、ほれ思い出せ」

 パチン! 

 

 老婆が指を鳴らすと、男に雷に打たれたかのような衝撃が駆け巡り、記憶がその姿をあらわにした。

 男は思い出したのだ、自分が今朝、大勢の警察に連れ出されたことを、小さな部屋でクッキーを一口齧ったことを、自分の人生が終わったことを。


「……うそ……だろ……」

 男は苦しそうに頭を抱え、何かに取りつかれたかのように何かをぶつぶつと言い続けている。


 そんな男の異常な反応を老婆は異常とも捉えずに話を続けた。

「先ほども伝えた様に、おぬしには三つの選択肢がある、そこに書いてある、価値にして30億金貨分の罪を背負い新たな人生を生きるか、それともこのまま終わりにするか、それとも、そのどちらをも選ばずにこの部屋で永遠に過ごすか、さぁ選ぶが良い、1分やる、決断しろ」


 老婆はそう男に伝えるとカウントを開始した。


「は?!ま、待ってくれ!まったく意味が分からない!選択肢って、30億金貨分の罪って、新たな人生って、一体なんだ?!」


「生まれ変わるという決断をすればわかる、さぁ、10秒経過したぞ」


 男は自分の運命を呪い始めた。

(クソ!クソ!クソォ!なんで、何で俺がこんな目に合ってるんだ、なんで……)


 老婆は答える。


「理由などない」


「……え?今何て…」


「苦しみに理由なんてものは無いと言ったのじゃ、いうなればくじを引くようなものだ、今回たまたまお前が引かれただけで、そこに理由などと言う大層なものは無い」


 男はそれを聞いて、さらに絶望した。

「そん……な……」


「一つ言っておこう、来世では幸せになれるかもしれぬが、今終わればおぬしは苦しみしか知らぬまま終わることになる」


 老婆は男の頬を撫でて言う。

「終わるのは、幸せを知ってからでも良いと思うがのぉ」


 男は海底で溺れている様な気分になった。

(思えば…俺の人生はクソだった…親父にはヤバイ借金を背負わされ、学校では虐められて、書き始めた小説も俺の人生と同じようにクソで、いつの間にか入ってた会社では毎日、周りに嫌悪されていた…しまいには…)


 男は顔を上にあげる。

「幸せってどんなものなんだ?何が幸せなんだ?今それを知るチャンスが俺にあるのか………」


「ふむ、残り十秒だ、九、八」


「今まで一度もチャンスを与えられたことなんて無かったのに…いやただ俺がチャンスをクソに変えてただけか…」

(いつもいつも…クソをクソにしてたのは俺だった…もう嫌だな…)


 男は老婆の方を向いて言う。

「決めた……」


 老婆が聞く。

「申してみろ」


「……生まれ変わる事にした」

(……転生して、必ず俺は幸せになる、それが今までの俺への謝罪になるのなら…)

「どんなことでもする」


「わかった、その願い聞き入れよう、それじゃぁ手順として、儂と性交してもらう」

「……はぁ?」

「理由としては……」


 男は首を振りながら言う。

「待て待て待て!説明しろ!なんでその工程が必要なんだ!?」


「だから説明すると言っておろう……おぬしを転生させるには儂がおぬしの転生したいという願いを叶えることによって転生できるのじゃが……わしが願いを叶える為にはまずおぬしがわしの願いをかなえなければいけん」


「その…………お前の願いとやらが……」


「性交じゃ」


「なんで!?」


 もじもじしながら老婆が答える。

「じゃって、こんな老いぼれとだれも性交などしてくれんし……欲求不満なんじゃ!」


 それを聞いた瞬間、男の今までのストレスが爆発した。

「ふざけんな!何言ってんだババア!ちくしょう!!逃げ」


「待てぇい!なんでもすると言っただろうが!さっさとするぞ!ガキィ!」

 パチン!


 老婆が豹変し指を鳴らすと俺、老婆ともども素っ裸になっていて、老婆が仰向けになっている俺の上に乗っかっていた。


 まるで麻袋の様な乳が右、左と揺れている。

「ぎゃぁぁぁ!たぁすけぁてぇぇぇ!!てか、何で勃って……」  


 ズブ

「あ、」

 そこから先を男が思い出すと男の頭がおかしくなってしまいそうだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 気が付くと、薄暗い洞窟のような場所で頭蓋骨の形がハッキリ分かる程、瘦せ細った女が赤子を宝物の様に大事に、大事に抱いていた。

「あぁ、私の赤ちゃん……ッス、フゥ……」


「あぃぁ」


 赤子はいつの間にか、すすり泣く、女に、とても小さい手を伸ばした、その伸ばした小さな手が女の頬骨に当たると、その瞬間赤子の目から大粒の涙が溢れた。

 赤子が大泣きする声が聞こえる。


「幸せになって……」


 女はそう言って赤子の額に短くキスをした、そしてそのまま毛皮の詰まった小さい買い物かごに俺をソっと置くと、女は倒れてベチャ!という音を鳴らした。

 

 赤子は……まだ、泣いていた。

 

 


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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