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92話 悪魔

「……さん、レアさん!」


 過去を思い出していると、ふと肩を揺さぶられて声をかけられることで意識が戻りました。


 肩を揺らしてきたのはどうやらリンネさんのようで、リンネさんへ視線を返した私を見て、少しだけホッとしたような表情で言葉を続けます。


「よかった、レアさん、戻ってきましたか?」

「…すみません、ちょっと別のことに意識が逸れていました」


 深く思考を巡らせて過去を振り返っていた私を見て、リンネさんはどうやら心配になって声をかけてきたみたいです。


 考えに夢中になっていてリンネさんに心配させてしまうなんて、少しは周りを見た方がよいですね。それに肩にいたクリアもこちらを心配するように震えていたので、私は大丈夫と伝えるかのように優しくなでなでをします。


「ならよいのですけど……それと、レアさんも知っている人が来てたのですよ」

「知っている人、ですか?」


 私がその言葉に不思議に思いつつもリンネさんの示した方へ視線を向けると、そこには灰色の髪をしたイケメンのお爺様、ソロさんが立っていました。


「ソロさん!来てたのですね!」

「ええ、ちょっと気になることが出来ましてね」


 そう言って笑っているソロさんですが、しばらくは会っていませんでしたが変わりなく元気そうなようですね。


 それと、気になることが出来たと言ってましたが、ここに何があるのでしょうか?あ、もしかして私が先程戦った悪魔についてですかね?


「実はこの街から悪魔の反応がしたので、ちょっと寄らせてもらったのですよ」


 なにが目的か気になった表情を私がしていたからか、続けてここへ寄ってきた理由を教えてくれました。


 なるほど、やはり悪魔についてでしたね。なら私はみかけましたし、それについて教えるのと同時に悪魔についても聞いてみますか。


「それならさっき戦ったのですが、逃げられてしまったのですよね」

「ふむ、逃げられたのですか…」


 私の言葉にソロさんは何やら思考し始めましたが、私はそれと、と言って続けます。


「その悪魔は自らのことを上位悪魔(グレーター・デーモン)と言っていたのですが、私は悪魔について詳しく知らないので、良ければ悪魔についておしえて欲しいです」

「いいですよ。では、まずは階級から説明しますね」


 そう言って、ソロさんは悪魔について語り初めてくれます。


「まず悪魔の階級は上から順に悪魔王(デーモン・ロード)悪魔公(アーク・デーモン)上位悪魔(グレーター・デーモン)中級悪魔(デーモン)下位悪魔(レッサー・デーモン)となっているので、今レアが言っていた上位悪魔(グレーター・デーモン)は三番目の階級なのです」


 ふむふむ、悪魔にも神様のように位が存在して意外と細かく分かれているのですね。


 私が出会ったのは三番目ということですし、位からするとそこまで強くはない感じだったのですかね?


「今レアが考えているように三番目だからといって決して弱くはないですし、それより上にいる悪魔もほんの僅かにしかいないので、上位悪魔(グレーター・デーモン)だからといっても上から数えた方が良いほどの強さはありますからね」

「あ、そうなのですね」


 ソロさんはそう教えてくれますが、今は子供に憑依をされていたから上手く戦えませんでしたが、それがなければ私でも十分戦えそうには感じましたし、これから起こるであろう悪魔関係らしきユニーククエストもおそらくは大丈夫でしょう。


 さらにそこへ悪魔の生態についても教えてくれましたけど、それについてはソロさんも詳しくは知っていないようで単に人類の悪となる行動をとっているらしい、ということだけはわかりました。


 あ、そういえば確認してませんでしたが、ついでにユニーククエストの内容も今確認してしまいましょうか。


「…っ!?」

「どうしましたか?」

「レア?」

「……?」


 クエストを確認した私は思わず息を呑んでしまいましたが、その反応に周りにいるリンネさん、ソロさん、クリアに子供たちからもどうしたのかという視線を受けます。


 ですが、それも仕方ありません。何故なら…


「…今私にクエストが出たのですが、なんと先程の悪魔がこの街に向けて魔物の大群を連れて襲いかかってくるみたいなのです」


 そんな私の言葉に、周りにいた皆さんはとても驚いたようで驚愕の表情を浮かべます。


「…なら、すぐにでも行動に移った方がよいですね」

「私はフレンドにでもこのことを伝えて人を集めてみます!」

「わかりました、では私も協力をさせてもらいます。このまま放置してしまえばここにも被害は出そうですしね」


 私とソロさん、リンネさんはそう話し合い、早速行動に移ります。


 私は今ログインしているフレンドの皆さんへとメッセージを送り、協力をお願いします。するとすぐに皆さんからの反応が返ってきて、快く協力をしてくれるみたいなのでとてもありがたいですね。


 私がそうしたことをしている間にソロさんは戦闘準備でもしていたのか、武器である長杖を取り出して確認をしています。対してリンネさんは子供たちを一度孤児院へと避難させた後に、これまたソロさんと同様に武器である短杖を取り出していました。


 どうやらソロさんだけではなく、リンネさんも一緒に戦ってくれるみたいです。


「とりあえず、クエストを確認する限り襲ってくるのは南の平原からのようなので、そちらに向かいましょうか」


 私の発した声を聞き、ソロさんとリンネさんも頷き私たちはそのまま教会と孤児院のあるここから移動して南門まで歩いていきます。


 その道中で私はふと子供たちは大丈夫なのかと思いそれについて聞きましたが、リンネさんはいつのまにか他のシスターに連絡でもしていたみたいで、その人たちに子供たちを任せるようなのであちらは大丈夫らしいです。


 それなら、特に心配もせず戦闘に集中出来ますね。


 そうして肩に乗せているクリアを含めた四人で早足で南門に向かい、そこに着いたと思ったら、すでに兄様とそのパーティの皆さんにアリスさんとカムイさんが待っていました。


「皆さん、突然の頼み事に答えてくれてありがとうございます」

「いや、特に予定もなかったから大丈夫だ」

「レアさん、今回は私たちがレアさんのクエストのお助けをさせてもらうのですよ!」


 カムイさんとアリスさんの言葉に、私は少しだけ胸を撫で下ろします。


 急な呼びかけをしましたが、特に嫌な感情などはないようで良かったです。


「ユニーククエストとは聞いたが、細かい内容はどんな感じなんだ?」

「それはですね…」


 問いかけてきた兄様の言葉に反応を返そうとしたタイミングで、後方から私に向けての声が聞こえてきたので、喋る前に振り返って確認すると、そこにはソフィアさんとネーヴェさん、クオンとそのパーティメンバーにアオイさんたちの合計七人がこちらに向かってくるところでした。


「レアちゃん、待たせちゃった?」

「いえ、私たちも今来たところなので大丈夫ですよ。それに急な呼びかけに答えてくれてありがとうございます」

「俺たちも特に予定はなかったし、全然問題ないぞ」

「私も大丈夫だよ!」

「そう言ってくれると助かります」


 私は呼びかけた人が全員来たのを確認すると、皆に聞こえるように今回のクエストについての説明をします。


 あ、ちなみにフレンドの生産者であるレーナさんなどのプレイヤーと、まだ初心者なルミナリア、マキさんに対しては実力が足りなそうではあるので今回は呼んでいませんよ。今からするクエストはかなり難易度が高そうですしね。


「今回のクエストはこちらの女性、リンネさんのところで現れた悪魔を撃退したら起こったのです」

「みなさん、初めまして。シスターのリンネと申します」

「知らない人もいるだろうし、ついでに私も紹介しておきますか。私はソロ、よろしくお願いしますね?」


 皆さんの視線がリンネさんとソロさんに向きますが、私は説明を続けます。


「クエストからすると、その悪魔は魔物の大群を連れて襲いかかってくるみたいなので、人手が欲しく皆さんを呼ばせてもらいました」

「なるほど、大群が相手なのか…」

「それに悪魔が相手なのね」

「悪魔なんて初めて聞きましたが、そんなものもこの世界にはいるのですね」


 ジンさん、サレナさん、ライトさんがそのように感想を述べますが、私はそれに対して真剣な表情で言葉を続けます。


「その悪魔は軽く戦闘をした限りではまあまあ強くはありますが、この人数でなら苦戦はしないはずです。ですが、魔物の大群も存在しているのでそちらに対しても対処しないと街を襲われもしますし、それについても頼みたいです」

「…なら、魔物の大群の方は私とアリスとソフィア、そしてそこの、ゼロだったかしら?のパーティ全員とカムイの九人で対処するわ」

「確かにそのくらいの人数がいれば、そっちは大丈夫そうだね」

「それなら、私とソロさんもそちらに向かいますね」


 ネーヴェさんの発した言葉に名前を呼ばれた人たちも頷き、リンネさんとソロさんとそちらに行くと言っているので、それでお願いするとしましょうか。


「…では、そちらはお願いしてもいいですか?」

「任せて、レアちゃん!だから悪魔の方はお願いね!」

「はい、こちらは私とクオンパーティ、アオイさんがいますし、多分大丈夫なはずです」


 人数が意外といるおかげでなんとかなりそうですし、あちらは皆さんを信頼して任せておきます。それとついでにクリアもそちらに行ってもらいますか。


 そんなことを考えつつも、私は皆に気づかれないようにクオンにチラリと視線を向けます。


 悪魔は私の過去を見通しているかのような発言をしてましたが、その細かい内容については知らないとは思います。ですがそんな悪魔の言葉を聞き、私が今も許せず後悔と嫉妬の感情が湧いてくる過去が次々と思考を巡ってきます。


 …私のこの過去は、決して忘れてはいけないのです。悠斗……私は貴方からーー


「……はどうかな、レアちゃん?」


 再び視線を下げて熟考していた私に向けて何やら声が聞こえたのでそちらに視線を向けると、そこにはソフィアさんが声をかけてきていたところでした。


「すみません、なんですか?」

「えっとね、作戦について話してたんだけど、まず大群が見えてきたら私たちで活路を作るから、後方にいるであろう悪魔に対して、レアちゃんたちはそこを通って向かってほしいかなって」

「わかりました、ではそれでお願いします」

「任せて!」


 そうして皆で作戦を話していると、平原の奥から何やら無数のシルエットが見えてきました。まだ距離があるので私の【気配感知】スキルと【魔力感知】スキルには反応はありませんが、明らかにあの大群が悪魔とその群れなのでしょう。


 では、もう少しだけ南門から離れてあれらの相手をしましょうか。


 このまま近くで戦っていると街にも被害が出てしまいそうですしね。あ、ちなみにここにくるまでにソロさんが連絡をしたのか街の住人や衛兵などは外に出てはきていません。


 プレイヤーたちはわかりませんが、今のところ来てはいないのでそちらもおそらくは大丈夫なはずです。


「…じゃあ、最初は私たちからいくわよ」

「お願いします」


 その言葉と共に、そろそろ姿を把握出来るくらいに近づいてきたモンスターたちへとネーヴェさんたちはそれぞれの武技や魔法を使用して離れた距離から一気に攻撃を繰り出していきます。


 それらの攻撃によって、前方にいた獣や人型である様々なモンスターたちは次々とポリゴンとなって倒れていってます。


 ですが、悪魔が連れているくらいなのであちらからもお返しとばかりに魔法などが飛んできていますが、それらに当たるほどここにいる全員は弱くはないので、余裕を持って回避して攻撃を繰り返していきます。


 そして近づいてきたモンスターに向けて兄様たち近接組と、私がモンスターの相手をお願いしたクリアが肩から降りて狼に変身した後に戦闘を開始して、近づいてくるモンスターたちを次々と倒していきます。


「…レア、このくらいでいいか?」

「はい、結構倒してくれていますし、多分大丈夫です。では皆さん、行きましょう!」

「おう!」


 そんな兄様たちとクリア、ネーヴェさんたちが切り開いてくれた道を私たちは駆け抜けますが、その道中ではまだ奥にいたモンスターたちが横から飛び出してこちらに遅いかかってきました。


 しかし、それらのモンスターはメアさん、ライトさん、ヴァンさん、アオイさんの四人がなんとかしてくれるらしいので、私とクオンの二人は申し訳なく感じはしますがお願いしてそのままさらに奥へと走っていきます。


「おやおや、誰かと思えば先程のお嬢さんではないですか。それに、男が一人」


 そこからもモンスターたちの隙間を駆け抜けて群れから抜けたと思ったら、予想通り一番後方でこの街を襲ってきた悪魔、ヴァルドさんが存在していました。


「…クオン、あれがこの街を襲わせている犯人である悪魔です」

「あいつか…!」


 私の言葉に、クオンもヴァルドさんへと殺気を乗せて睨みつけています。


 ヴァルドさんは孤児院で一度見た時と違いはないようで、肩まで伸びた漆黒色の黒髪に血のような赤い瞳をした男性の姿から変わってはいないです。


 しかし、孤児院の時とは違って本来の姿だからかあの時よりかは強そうにも感じますね。


「自らこちらに出向いてくれるなんて、好都合ですねぇ?」


 その言葉と共にヴァルドさんは、私とクオンに向けて黒色をした闇属性らしき魔力の球を無数に放ってきました。


 私とクオンは右と左の二手に分かれることでそれを回避しましたが、後方に飛んでいった黒色をした魔力の球は私たちの背後にいたモンスターたちを巻き込んで派手に爆散しています。


 仲間ごとやるなんて、やはり悪魔ですね。今回はモンスター以外には被害は出ていないとはいえ、魔法を使われてしまえば後方にいる兄様たちにも被害が出てしまう可能性がありますし、魔法は使わせないようにしたいですね。


「〈第一の時(アイン)〉!」

「〈星纏い〉!」


 私たちはそれぞれ自身を強化する武技とスキルを使用し、クオンはその勢いのままにヴァルドさんの横付近から一気に踏み込んでいきます。


 私は接近していくクオンをチラリと見つつ、そのサポートをするべくヴァルドさんをクオンと挟み合うかのように移動して、その横側からフェイントを混ぜた弾丸を連続して放ちます。


 ですが、それらは全て両手に生やした黒色の爪で弾かれてしまい、ダメージにはなりません。


「〈パワースラッシュ〉!」

「おっと」


 そこに剣の間合いまで踏み込んだクオンは武技を発動させてヴァルドさんへと横薙ぎの攻撃を放ちますが、ヴァルドさんはそれを軽々と空中に跳ぶことで回避して、クオンへの反撃として両手の黒い爪を振り下ろします。


 それを見た私は、即座にヴァルドさんに両手の銃の先を向けて弾丸を乱射しました。が、ヴァルドさんは振り下ろそうとしていた黒い爪をクオンに向けてではなく空中で連続で振るうことで私が飛ばした無数の弾丸を切り捨てられます。


 ですが、その一瞬の隙にクオンはこちらへ下がってきたおかげでヴァルドさんからの攻撃を受けずに済みました。

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