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90話 教会で

「アンちゃんから聞きましたよ。なんでも神様について聞きたいとか」


 そうしてこちらに来たシスターさんはそのような声と共に私に話しかけてきたので、私はそれに軽く頷いて続けます。


 それとシスターさんの見た目は、身長160cm半ば辺りで背中まで伸びている金色の髪に同じく金色の瞳をした見た目をしています。


「はい。実は私、神様に会ったことがあるのですが、神様についての詳しい知識はなかったのでもっと詳しく知りたいと思ってここに来たのです」

「あら、神様に会ったことがあるのですね」

「レアちゃん、かみさまにあったことがあるなんてすごいね!」

「うそだ!かみさまはすごいひとだから、あんたみたいなこどもにあえるわけがないだろ!」

「ちょっとケリト!あなたはまいかいそうやって!」


 アンちゃんとケリトくんはそう言って互いに口喧嘩を初めてしまいましたが、それを見た周りの子供達は、またかといった様子で見ています。


 それに対してシスターさんはそんな子供たちの反応とは違い、少しだけため息をついたと思ったら二人に一瞬で近づき、その頭目掛けて両手でチョップを放って口喧嘩を止めます。


「二人とも、お客様の前なのですから、いつもみたいな喧嘩はよしなさい」

「はーい…」

「…わかったよ」


 アンちゃんとケリトくんはそんなシスターからの叱りを受けて素直に反省をしたようで、私に向けてシスターさんと共に謝ってきました。


 まあそれについては笑って許しましたけど。だって私はこんななりなので同じ子供だと見られているでしょうし、明らかに私よりも歳下らしい子供相手にそこまで大人げなく怒りもしませんしね。


 それと性格に関してはやはりまだ子供らしくはありますが、それでもしっかりと謝ることも出来ているので、いい子であるのも間違いなさそうです。


「よろしい。では、レアさん…と言いましたね。こんなところではなんですし、まずはこちらでお茶でもしながら話しましょうか」

「わかりました、ではお邪魔させてもらいますね?」


 シスターさんの案内を受け、私は教会の隣にある司祭館の中へと入っていきます。


 あ、先程まで周りにいた子供たちとは建物の前で一旦別れているので、今はこの建物内には私とシスターさんだけですよ。


 そしてそんな司祭館の中にある応接室のような場所に私は通され、シスターさんの入れてくれお茶を飲みつつも肩にいるクリアと共にシスターさんとテーブルを挟んでソファに座り、向かい合います。


「まずは自己紹介をしましょうか。私はリンネと言います」

「ご丁寧にありがとうございます。私は知っての通りレアと申します。そしてこちらが私のテイムモンスターのクリアです」

「……!」


 クリアも私の肩で挨拶をしているようで、プルプルと震えているのがわかります。


「はい、よろしくお願いしますね。それでは、その前に…」


 そう言って一度立ち上がったリンネさんは、徐にこの部屋に唯一付いている扉に向かい、そこを開けます。


 すると、先程まで外にいたはずの子供たちが扉の前でこちらの話している内容に耳を済ませていたようで、リンネさんが扉を開けるのと同時にアンちゃんを先頭に部屋の中へと倒れ込んできました。


「全く、貴方たちったら…」

「あはは…」


 リンネさんの呆れたような声に、視線を逸らしながら笑って誤魔化しているアンちゃん。


 どうやら、その反応からして突然来た私に対して皆さん興味津々なようで、少しでも話を聞きたいと思ってこうして扉の前にいたみたいですね。


「それなら、リンネさんからお話を聞き次第そちらにも向かうので、それまで待っていてください」

「レアさん、いいのですか?」


 リンネさんが暗にそこまでしてくれるのですか?という感情がこもったような表情でそう聞いてきたので、私は微笑を浮かべつつもそ答えます。


「はい。私も子供は好きですし、特に急ぎの用事もありませんしね」

「…なら、お願いします。この子たちもレアさんに興味津々のようですしね。それでは皆さん、私たちはお話をするので少しだけ待っていてくださいね?」

「わかった!レアちゃん、まってるね!」

「はい、また後で」


 そうしてアンちゃんたちはドタドタと子供らしく走ってこの扉前から去っていったので、私とリンネさんはそんな様子に苦笑をこぼしつつも部屋に戻ります。


 クリアは空気を読んでいるのかあまり震えていないので、そのまま肩に乗せつつ私たちは再びソファに座り、改めて会話を始めます。


「それで、神様についてですね。ですが私もシスターになってはいますが、今の情勢では変わっているかもしれないですし、そこまで詳しくもないのでそこはご了承くださいね?」

「わかりました、それでもいいので教えてください」

「はい。では神様についてですが…」


 その言葉を最初に、リンネさんは続けて話し出します。


「まずこの世界には、無数の神様が存在しているのは知ってますね?」

「それは前に本で見たので、それは知っています」

「なら詳しいことに移りますが、その神様たちは何段階の位に分かれており、上から順に古神、大神、神、亜神、従属神などとなっています」


 ふむふむ、神様にも位というものがあったのですね。ということは、私が出会ったクロノスさんは自らのことを古神と言ってましたし、それの通りだとすると最高位の立場にいるみたいです。


 そこからも続けて教えてくれたリンネさんの言葉からすると、神様の数は位が上に行けば行くほど一気に減少するようで、今存在が確認されている古神は、秩序の神、星海の神、そして私の知っている時空の神だけのようです。


 それと古神は原初と呼ばれる時代から存在している神を指すようで、その下の大神、神についてはそれより後に生まれた者のようです。その中で亜神、従属神はリンネさんからの説明を確認する限り、それより上の神によって神の座に招かれたものなどを指すみたいです。


 そんなリンネさんは、時空神については私の口から聞いて初めて知ったようで、それを聞いて少しだけ驚きつつもその気持ちを抑え、説明を続けてくれます。


 古神の下にいる神様もリンネさんの説明通り結構な数が存在しているみたいで、それについても教えてはくれました。ですが、今は特にしっかりと覚えている必要もないとは思いますし、記憶の隅に置いておくくらいで良さそうですね。


「神様についてはこんな感じですが、実は今の世界で神様の声を聞ける人はほとんどいないのですよね」

「そうなのですか?」


 さらにリンネさんが語ってくれたことからすると、どうやら前の私のように神様と対話をする人が昔にはいたようですが、今はほとんどいなくなっているみたいです。


 それにリンネさんも昔は神様の声が聞こえていたようですが、そこからすでに何十年も経った今になっても声は聞くことが出来ていないらしいのです。


 …というか、失礼ですがリンネさんは何歳なのでしょうか?見た目は二十代になったばかりの女性に見えますけど、口にした言葉からするとかなりの歳をとっているみたいですが…


 まあそれはさておき、そのせいでリンネさんは私の口にした時空神について気になっていたみたいですね。


「なので、レアさんの知りたがっている神様についての詳しい説明は出来ませんが、私に教えられるのはこのくらいですね」

「それでも神様については知れましたし、大丈夫ですよ!あ、あとワールドモンスターについても聞きたいのですが、もしかして神様と何か関係してたりするのでしょうか?」

「ワールドモンスターですか……申し訳ありません、私はそれについての情報は知りませんね」

「そうですか…」


 うーん、ワールドモンスターとの関係性については知りませんでしたか…


 ですが、神様についてはある程度知ることは出来ましたし、ひとまずはこれでオッケーですかね?


「あ、そういえば…」

「ん、何か思い出しのですか?」

「はい。実はかなり昔ではありますが、私が過去に声を受け取っていた光の神は、何やら十二星座という存在に世界の管理を任せていると言っていたので、その存在ならレアさんの知りたがっていることについても知れるかもしれませんね」


 十二星座……その名前は前に聞いたことがありますね。私の出会ったことのあるのはリブラさんとカプリコーンさんですが、その立場は設定ではなく本当に神様の代わりをしているのですね。


 ということは運営の代わりだと思ってはいましたが、それとは少しだけ違って始めに言葉にしてた通り神様の使徒だったようです。


 リブラさんたちならワールドモンスターなどについて知っている可能性があるのなら、これからはリブラさんたち十二星座の人と出会うことを目標にするのも良さそうですね。


「私が教えれるのはこのくらいですね」

「わかりました、わざわざ説明してくれてありがとうございました!」

「いえいえ、こちらとしても新たな古神である時空の神についても知れましたし、有意義な時間でした」


 そう言ってもらえると、こちらとしても少しだけ嬉しく感じます。


 よし、これで聞きたいことは済みましたし、そろそろ子供たちの元へと向かいますか。


「では、ここからは子供たちの相手をしてきますね」

「改めてお願いします。あの子たちも、私や、今はいないですが他のシスターや神父様しか交友関係がないので、ぜひとも遊び相手になってくれればとても喜ぶと思うので」

「ふふ、任せてください!これでも私はお姉さんですしね!」


 そんな会話をしつつも私たちは今いる応接室から出て、そのまま外で遊んでいるらしい子供たちの元へと向かいます。


 ちなみに、お話中は肩で大人しくしていたクリアですが、私たちの会話を聞いてここからは子供たちからも関わってくるとわかっているようで、私にだけわかるように少しだけ楽しそうに震えています。


 クリアも、子供たちと一緒に遊ぶのにワクワクしているようですしね。


「あ、レアちゃん!」

「アンちゃん、お待たせしました」


 私の声に、先程まで遊んでいたアンちゃんを筆頭に子供たちが私の元へ走ってきました。


「レアちゃん!いっしょにおにごっこしよ!」

「いいですよ。では私が鬼になるので、皆さんは逃げてください」


 その言葉を合図に、アンちゃんたちは楽しそうな声を出しながら逃げていくので、私は少しだけ待った後に肩にクリアを一旦地面に下ろしてから逃げていく子供達を追いかけていきます。


 あ、もちろん手加減はしますよ!本気でやった場合は一瞬で捕まえてしまうと思うので、それでは面白くないですしね。




 そうして鬼ごっこをした後にも様々な遊びを子供たちとして、今は少しだけ休憩をさせてもらっています。


 クリアについては、今も元気そうに子供達の相手をしてくれています。クリアはどうやら子供たちから気に入られたようで、楽しそうに皆で遊んでいます。


「レアさん、遊び相手になってくれてありがとうございます」

「いえいえ、先程も言いましたが、子供は好きなのでこちらとしても全然楽しいのでそこまで申し訳なさそうにしなくても大丈夫ですよ!」


 そのタイミングで声をかけてきたリンネさんに私はそう返しますが、リンネさんはそれでもありがたそうな表情でありがとうございます、と再び言ってきました。


 それに私自身も十分楽しめたので、たまにはこうしてここに来て子供たちと遊んだりするのも良さそうと感じましたね。


 アンちゃんたちもリンネさんの教えを聞いているからか素直でいい子なので、普通に可愛いですし。


 私とリンネさんはそんな会話をしつつも、未だに楽しそうにしている子供たちを眺めていましたが、ふと私の視界に一人の子供が目につきました。


 その子は身長100cmくらいで、真っ黒な髪に血のように赤い瞳をして大人しそうな雰囲気をまとった男の子に見えますが、その子は何やら辺りを警戒しつつ孤児院の中へと入っていきます。


「リンネさん、ちょっと気になる子がいたので行ってきますね」

「気になる子ですか?」

「はい、何だか様子のおかしな黒髪赤目の男の子が孤児院の中に入って行ったのですよね」


 そう私が言葉を続けると、リンネさんは僅かに首を傾げて不思議そうにしながらも、言葉を口にします。


「黒髪赤目の男の子、ですか?黒髪黒目の子ならいますが、そんな子はここにはいませんよ?」

「…え?」


 ですが、私はこの目でハッキリと確認しましたよ?リンネさんはそんな子はいないと言ってましたが、どういうことでしょうか…?


 不思議そうな私を見て、リンネさんは再度子供たちを見渡してから、またもや首を傾げて何やら呟きます。


「…そういえば、その子の姿は見えませんね」

「…もしかして、さっきの子に何かあったのでしょうか」


 先程見かけたその子は孤児院に入っていきましたし、ちょっと不安な感情が湧いてきたので一度確認してきましょうか。


「すみません、さっきの子が心配なのでちょっと様子を見てきますね」

「なら、お願いしてもいいですか?今ここにいるシスターは私だけなので、子供たちから注意を逸らすのも危ないので」

「任せてください。では、行ってきますね!」


 私は子供たちにバレぬよう、隠蔽系のスキルに加えてインベントリを操作して黒姫の羽衣を装備して、その状態で気配を殺しつつ先程孤児院の中に入っていった男の子の後を追います。


 孤児院の中に入ると、すぐに見えるのは奥に存在する二階へと続いているらしい階段に、地下室までの階段でした。


 階段以外にも中は思ったよりも広々としており、手入れや掃除もキチンとされているようで綺麗でもありますね。


「おっと、見るのは後でいいですね。スキルからしてさっきの男の子は地下室に行ったみたいですし、隠れながら着いていきますか」


 私は急ぎつつ、しかし音や気配は出さないように気をつけながら地下に続いている階段を降りていきます。


 その階段を降りていくその道中では、魔道具らしきランプがあるおかげで特に見えなかったりはしていません。


 まあ私は【夜目】スキルを持っているのである程度の暗闇なら問題はないですが。


 そんな思考をしつつも階段を降りていると、すぐに地下室に着いたのかなんらかの部屋らしき入り口付近に着きました。


 階段横からそっとその部屋の中を確認すると、先程見かけた黒髪赤目の男の子が地下室の地面に向けて、何やら赤黒いもので何かを描いているところでした。


「ちっ、あの女め。あれのせいで少しだけ手間がかかってしまいましたよ。ですが、これを使えばあの女ごと殺せますし、計画に支障はありませんね」


 離れているからか全ては聞こえませんでしたが、聞こえた範囲では、どうやらなんらかの手段で孤児院にいるリンネさんとアンちゃんたちを殺そうとしているのはわかりました。


 今すぐ戻ってリンネさんたちにそれを伝えて逃げようとしても、おそらくは間に合わないでしょうし今ここで私がなんとかする必要がありますね。

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