89話 教会へ
そうしてそこからは注文した料理を食べ、食べ終わった後も軽くおしゃべりをしつつ私とアリスさんはネーヴェさんとのフレンドも交換しました。
そしておしゃべりをしているとちょうどいい時間になったので、会計を済ませてからカフェを出て、近くのお店で金銀財宝と無数の宝石などをお金に変えて分配し、一度解散してから私はログアウトをした後に現実世界に戻ってきました。
「ふぅ…よし、ご飯の準備でもしますか」
現実世界に戻ってきて確認した時刻はもう六時を少しだけ過ぎているので、ご飯の用意をしていればいい時間にはなりそうです。
ということで、私はいつも通りストレッチを済ませて自分の部屋からリビングに降り、早速夜ご飯の用意を始めます。
「ふんふーん」
スマホでお気に入りの曲を聴きながら夜ご飯の支度をしていると、少しの時間が経った後に料理が完成しました。
夜ご飯を作り終わった今の時刻は六時半近くですし、いつもの時間よりは結構早めに終わったみたいですね。
「なら、またスマホで軽くMSOについての情報でも見てますか」
私は兄様が降りてくるまでの間は、リビングにある椅子に座ってスマホで情報を見ていきます。
「ふむふむ、やっぱり私だけが受けたものとアリスさんたちと一緒に受けたワールドクエストについての情報は前と同じで一切ないみたいですね」
まあどう考えても凄く特別そうなクエストなのでネットに載っていないのもわかりますが、それでもワールドクエストについての情報は欲しいですね…
やはりそれらのクエストなどはソロさんに聞いた時のように、あちらの世界で住人から聞くしかわかる方法がなさそうです。
「…そういえば、神様のことも調べようと思って忘れてましたね。明日も今日と同様に予定は入ってないので、今度こそ教会に行って調べてみますか」
それとユニーククエストの時にメラスクーナさんが言っていた愛と審判の使徒という言葉にも、使徒というだけあって神様が関係はしているかもしれませんし、神様のことも調べたらもしかしたらわかるかもしれませんね…?
とりあえずは、明日教会に行った時にでも詳しく聞いてみますか。
そんなことを考えつつもネットに載っている情報を流し見していると、ふと扉を開ける音が聞こえてきました。
物音がした方に視線を向けると、そこには兄様がリビングに入ってくるところでした。
「兄様も降りてきたのですね」
「ああ、もう七時を超えてるしな」
その言葉にリビングの時計を確認すると、いつのまにか七時を少しだけ超えていました。
情報を見るのに夢中になっていたみたいですね。ちょうど兄様も降りてきたことですし、作り終わっている夜ご飯の用意をしますか。
「では、今用意しますね」
「頼む」
そこからテキパキと食事の用意を済ませ、私たちは椅子に座っていただきますといって食べ始めます。
「美幸は今日の午後は何をしていたんだ?」
「ん、そうですね。私はフレンドのアリスさんから誘われてユニーククエストをしてたくらいですね」
兄様から問いかけられた言葉にそう返すと、兄様は羨ましそうな表情をして続けて言葉を発します。
「ユニーククエストか。フレンドのものとはいえ、やはり美幸はよくそれらに出くわすんだな」
「まあ今回は私に発生したクエストではないですけどね。あ、それとその時にまたもやワールドクエストが発生したのですよ」
続けて口にした私の言葉に、兄様は驚きで料理が気管に入ったのかゴホゴホとむせているので、私は慌てて椅子から立って兄様の背中を軽くさすります。
それのおかげで兄様はなんとか治まったようで、兄様は一息ついてから私へありがとうと伝えてきた後に、私の言葉に対して言葉を口に出します。
「美幸は新しいワールドクエストを受けるなんて、本当にすごいな?」
「ただ運がいいだけですよ。それに、今回は私だけではなくフレンドの三人にも一緒に発生しましたしね」
今回はアリスさんに誘われたから行ったのであって、私だけの力でもないですし、本当に運がいいだけです。
それでも兄様の言い分も十分理解出来るので、苦笑はこぼしてもそれについての反論は出ませんけどね。
あ、そういえば報酬と称号についての確認はまだしてませんでしたね。それについてはまた明日ログインした時にでも確認をしましょうか。
そこからもたわいない会話を続け、ご飯を食べ終わったので食器洗いなどは兄様に任せ、私は着替えを持って洗濯とお風呂に向かいます。
そしてお風呂から上がり、その間に洗濯も済ませていたのでそれらを干してやらなくてはいけないことは終わりです。
「よし、今日は寝るまでは宿題でもしてますか」
そう呟きつつ部屋に戻ってきた私は、寝る時間の九時までは黙々と勉強を続け、時間になり次第ベッドに横になって就寝します。おやすみなさいです。
窓から入る日差しで目が覚めました。おはようございます、今日は月曜日です。
月曜日と言ってもしばらくは夏休みなので、学校に行く必要はありません。
ですが、私は学校のある平日と同じ時間である六時半に起きたので、いつも通りで特に眠くもないですし早いですけど行動に移りますか。
私はそんなことを思考しつつ身体を伸ばし、ベッドから降りて今度はストレッチを済ませます。寝汗もそこまでかいてはいないので、今日はシャワーを浴びなくても大丈夫ですね。
「…ではリビングに降りますか」
そう声に出しつつ、着替えも済ませた私は自分の部屋から出てリビングに降りますが、今日も昨日と同様で兄様は降りてきていないようです。
それでも私はいつもの朝の支度を全て終わらせてリビングの時計を見ると、今の時刻は七時半になっていました。
「…とりあえず兄様は降りてこないので置いておくとして、私は早速ゲームと洒落込みますか!」
こんな朝からゲームが出来るなんて、学生はやはり楽でいいですね!…まあきちんと勉強などもしないといけないので、そこはしっかりとしますけど。
それはさておき、今日はログインしてからは教会に行って神様のことについてでも聞きましょう!それにワールドモンスターに関しても、もしかしたら神様に関係している可能性もあるような気もするので、それについても知れるといいですね?
「では、早速!」
部屋に戻ってきた私は、ベッド横に置いてあったヘッドギアを装着してベッドへ横になり、朝からゲーム世界へとログインします。
ログインしてすぐに視界に映った景色は、空が曇っているせいで薄暗く、なんというか気が滅入りそうで不安な雰囲気のように感じます。
こんな天気ではいつ雨が降り出してもおかしくなさそうですね。
それに私のスキルにはなんの反応もありませんが、なんとなく嫌な予感のようなものも感じ取れ、朝から気持ちがダダ下がりです。
「…まあそれはいいとして、前に聞いたことのある初期の街の教会に向かいますか」
そんな曇った空の下、私は今いる迷宮都市から広場まで移動して転移を行い、初期の街へと転移を完了させます。
「確か、この街の教会は東方面にあるんでしたっけ」
前に聞いた限りでは、街の東に重要な建物が建ち並ぶと記憶しています。
ここは初期の街なので迷宮都市などと比べると小さいので、そこまで迷わずには行けそうではありますが、一応そちらに向かう道中で住人などから教会の場所を聞いたりしつつ向かいましょうか。
あ、それと向かってる途中でステータスの確認もしておきますか。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv17】【鑑定士Lv9】【錬金術Lv13】【採取士Lv12】【気配感知Lv16】【隠密Lv15】【鷹の目Lv16】【ATK上昇+Lv17】【AGI上昇+Lv17】【DEX上昇+Lv17】【体術Lv50】【気配希釈Lv16】【採掘士Lv4】【INT上昇+Lv15】【第六感Lv13】【飛躍Lv4】【夜目Lv39】【言語学Lv25】【魔力制御Lv10】【魔力感知Lv6】【魔力希釈Lv5】【MP上昇Lv30MAX】【HP自動回復Lv30MAX】【MP自動回復Lv30MAX】【栽培Lv3】【調教Lv15】【STR上昇Lv18】【料理Lv7】【刀剣Lv22】【生活魔法】【水泳Lv7】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 48
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の祝福〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
〈時駆ける少女〉
〈蟲惑の暗殺者の弟子〉
〈南の平原のボスを倒し者〉
〈北の山のボスを倒し者〉
〈人業のお気に入り〉
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確認するとこのようなステータスになっていました。その中にある進化出来る三個のスキルを進化させた結果はこうなります。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv17】【鑑定士Lv9】【錬金術Lv13】【採取士Lv12】【気配感知Lv16】【隠密Lv15】【鷹の目Lv16】【ATK上昇+Lv17】【AGI上昇+Lv17】【DEX上昇+Lv17】【体術Lv50】【気配希釈Lv16】【採掘士Lv4】【INT上昇+Lv15】【第六感Lv13】【飛躍Lv4】【夜目Lv39】【言語学Lv25】【魔力制御Lv10】【魔力感知Lv6】【魔力希釈Lv5】【MP上昇+Lv1】【HP自動回復+Lv1】【MP自動回復+Lv1】【栽培Lv3】【調教Lv15】【STR上昇Lv18】【料理Lv7】【刀剣Lv22】【生活魔法】【水泳Lv7】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 42
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の祝福〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
〈時駆ける少女〉
〈蟲惑の暗殺者の弟子〉
〈南の平原のボスを倒し者〉
〈北の山のボスを倒し者〉
〈人業のお気に入り〉
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進化したスキルはそれぞれの効果のままに、さらに対応される力が上がった感じのようでなかなか良さげですね。それと他のスキルも順調に育ってもいるのでいいペースです。
そして【双銃】スキルはレベルが十五になったことで〈マナ・ガンアクション〉という魔力を纏わせた銃による格闘を起こせる武技を、【刀剣】スキルはレベルが二十で〈ラッシュ〉という連続した斬撃を放つ武技をそれぞれ獲得しました。
それらは近接相手に使う武技ですし、近づかれたりした場合には使うかも?と言った武技ですね。まあいつかは使うこともあるでしょう。
次は【錬金術】スキルで、こちらはレベルが十に達したおかげで〈魔石加工〉のアーツを獲得しました。これは説明を見るに、魔石を加工して素材に使える状態にするようなので、これはこれで使いそうかもしれませんね?
最後は、お待ちかねである称号についてですね!〈南の平原のボスを倒し者〉と〈北の山のボスを倒し者〉については記念称号なので特に言うことはありませんが、一番の目玉は〈人業のお気に入り〉です!
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〈人業のお気に入り〉
人業に特に気に入られた者に与えられる称号。他人からの第一印象を良くし、他人に嫌われづらくなる。そして不思議の力が獲得者に宿る効果がある。
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ふむふむ、説明を見る限りは人との関係を良くしやすくする効果のようですね。それと〈深森の興味〉と同じように不思議な力が宿るとも書いてありますが、今の段階でもまだ詳しいことはわからないので結局は放置ですね。
さらに前に獲得した〈蟲惑の暗殺者の弟子〉の称号もありますし、今回の称号のおかげでさらに第一印象などが良くなるみたいなので、なかなかありがたい感じです!
「とりあえず、確認することはこれくらいですね。あ、それと最近は呼んでいませんでしたし、クリアと一緒に向かいますか」
ステータスの確認を済ませた私は一度立ち止まってからクリアを呼び、私へと挨拶をするかのように震えているクリアにクスッとしつつも肩に乗せて周囲を確認しますが、ここからでは特に教会らしきものは見当たりません。
それなら、近くの住人に聞いてみましょうか。ここに住んでいる住人なら場所は知っていそうですしね。
「あの、すみません」
「ん?なんだ、嬢ちゃん?」
その道中の大通りで、屋台をやっている住人であろうお兄さんにそう声をかけて教会の場所を聞いていると、軽く教えてくれました。
教えてくれた情報からすると、どうやらここの大通りを道なりに歩いていき北側に向かうと教会があるようだと教えてくれました。
なるほど、東側の北方面ですか。東門までの道などは何度か歩いたことがありましたが、その時はあまり街並みを見てなかったので知りませんでしたね。
私はお兄さんに感謝を伝え、そのついでに売っていたタレが塗られた串焼き肉を私とクリアの二つ分を買ってその場を離れ、そのまま教えてくれた教会へとマップを見ながら向かいます。
「もぐもぐ…これはなかなか美味しいですね!」
「……!」
このタレは食べた感じ、こってり甘めの醤油だれの味のようで、なかなか味わい深くてとても美味しいです!
というか、探していた醤油がこんなところにありましたね。まあ今は教会へと向かう途中ですし、醤油についてはまた今度聞いてみましょうか。
それにクリアもこの味を感じて嬉しそうに食べているので、やはり用事が済み次第聞きに行くとしましょう。クリアにももっと料理を食べさせてあげたいですしね。
「っと、あれが教会ですかね?」
そんなことを考えつつも、東に続く大通りから少しだけ北にズレて街中を歩いていると、それらしき建物が見えてきました。
その建物の周りは庭のようにかなり広がっているおかげで確認出来ましたが、教会の建物は真っ白な見た目をした礼拝堂と、同じく真っ白な見た目の住居スペースであろう司祭館と孤児院のようなものが存在しています。
なぜ建物の一つが孤児院と私が思ったかというと、それは単純明快で、教会周りの庭らしき場所でたくさんの子供達が楽しそうに遊んでいたからです。
そして曇っている天気の中でも楽しそうにしている子供たちを見守るかのように、人の良さそうな雰囲気を醸し出しているシスターさんもいて、孤児院のようではありますが結構穏やかに感じます。
「あ!」
そんな子供達を眺めつつも教会へと足を動かしていると、ふとそのような声を一人の女の子があげ、それに釣られて他の子供たちとシスターさんからの視線がこちらに向きます。
「あなたは?」
そして一人の女の子が私の元へ近づいてきて、そう聞いてきました。
「私は異邦人のレアと申します。それとこちらが私のテイムモンスターであるクリアです」
「……!」
それに対して私はそう返し、肩にいるクリアもよろしく!と手を上げるかのようにスライムボディを手の代わりとして触手のように伸ばし、挨拶をしているのを見て、その女の子はニコニコと笑みを浮かべて言葉を発します。
「わたしはアン!あなたたちもここでせいかつするの?」
そう言ってきた身長100cmくらいで茶色の髪と目をした女の子、アンちゃんはどうやら私も孤児院に入る子供のように見えたようでそう聞いてきました。
「いえ、私はこれでも十五歳ですし、それが目的ではありませんよ」
「じゃあなんできたんだ?」
私の言葉に、アンちゃんの後ろから続けてひょっこりと出てきた身長110cmくらいで赤髪赤目である男の子からさらにそう聞かれたので、私は特に隠すことでもないので正直に口にします。
「私はここでなら神様について知れるかと思ってきたのです」
「かみさまかー、たぶんシスターならしっているとおもうよ!いまつれてくるね!」
その言葉に、アンちゃんは少し離れた場所でこちらを見ていたシスターさんの元へテテテッと小走りで向かい、そのまま手を引いてこちらに向かってきました。
シスターさんは少しだけ困ったような表情ではありますが、アンちゃんに手を引かれるままに着いてきていますし、周りの子供たちの表情からもシスターさんがとても慕われているのがわかりますね。
それにそんな表情をしてはいますけど、それは子供たちを心配してだとは思うので、子供たちを邪険にしているわけでもなさそうでもあります。