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88話 報酬

『ユニーククエスト【色を求めるは侵略の園】をクリアしました』

『称号〈人業のお気に入り〉を獲得しました』

『ワールドクエスト【揺り動かすは業の鐘】が発生しました』


 完全に崩れ去ったメラスクーナさんを見送った後に、ふとそのようなシステムメッセージが連続で流れました。


 突然のシステムメッセージの知らせで、さっきまで出ていた驚きと羞恥心の感情は引っ込んじゃいました。…まあそれは別に大切なものではないですし、いいですけど。


 とりあえず色々と確認したいことはありますが、それらは一旦置いておくとしましょうか。どうやらこれでアリスさんの受けたクエストが終わった感じでしょうしね?


 私たちは受けてはいなかったですが、アリスさんが一緒だからかきちんとクエストクリアの報告が流れ、それと共にクエストの報酬であろう宝箱がこの空間の奥に突如出現しましたし、これできっと完了ですね!


「これでやっとクリアですね!」

「ですね!皆さん、助けてくれてありがとうございます!」

「いやいやー、こんな特殊そうなクエストに誘ってくれてこちらこそ感謝だよー!」

「…それはいいから、さっさと報酬の確認をしないかしら?それとシステムメッセージの確認もしたいし」

「あ、それもそうですね!早速行きましょう!」


 ネーヴェさんの一声で私たちはまず奥に出現していた宝箱に駆け寄り、ワクワクを隠しもせずに宝箱を開けて中身を確認します。


 確認した宝箱の中にはたくさんの金銀財宝が入っており、それらに加えて謎の本にこれまた謎の長杖、さらには西洋人形に手につけるであろう鮫型のグローブみたいな格闘武器らしきものが入っていました。


「これは、もしかしなくてもそれぞれにあったアイテムなのでしょうか?」

「多分そうですね?私は人形でネーヴェさんが杖。ソフィアさんがこのグローブでレアさんが本、ですかね?」


 宝箱の中身を見て私はそう呟きましたが、それに同意するかのようにアリスさんも言葉を続けました。


 なら、報酬を分けるのには特に困ることはないですかね?


「一応聞いておきますけど、皆さんはどれが欲しいですか?」

「私はアリスちゃんの言ってた通りグローブかなー?」

「私はもちろん人形が欲しいです!」

「…この中でなら、私は杖ね。今の杖もいいけど、ユニーククエストの報酬ならそれとは違う効果もついてそうだしね?」


 やはりそれぞれで選ぶものはハッキリと分かれましたね。なら、アイテム類はそのように分配するとして、たくさん入っている金銀財宝についてはこの後に売り払ってお金にしてから均等に分けましょうか。


「報酬はこれでいいとして、次はワールドクエストと称号についてですね」


 メラスクーナさんの言葉とシステムメッセージからして、前に私が戦ったことのある深森のアビシルヴァと同じくワールドモンスターだったのでしょう。


 その証拠に、前にも発生した【深森より見定めし異なる瞳】と同様のワールドクエストも発生しましたしね。


「ワールドクエスト……そんなクエストは初めて聞いたけど、今のあの人相手でも結構苦戦したのに、もしあれが本物だとしたら凄く難しそうなクエストだね?」

「ですね。それにここにいる四人だけが受けれましたし、本来の姿と戦うならもっと人数も必要そうですね?」

「…どうせ今すぐにやるというわけでもないし、それについては一旦置いといてもいいんじゃないかしら?」

「ネーヴェさんの言う通りすぐにどうこうできるものでもないですし、これは進展があるまでは放置で良さそうですね!」


 皆さんも言ってますが、メラスクーナさんもシキさんのように代わりの身体だったみたいでしたし、本当の姿でないから今回は私たち四人だけでも倒せたのでしょうね。


 それでも、私たちがもっと成長していけば本来の姿のメラスクーナさん相手でも戦えるようにはなる、と思いたいですね…?


 まあネーヴェさんの言葉通り、このワールドクエストについては今すぐに何かを出来るわけではないので、これからは情報などを集めつつ進めていくのが良さそうです。


 それとこのクエストだけではなく、私個人に発生している深森のアビシルヴァからのワールドクエストについても今までは放置気味でしたが、少しは調べたりするのが良いですね?


「…それとレアちゃんは称号って言ってたけど、何かもらったの?」

「え?皆さんはもらってないのですか?」


 ソフィアさんの言葉に私は少しだけ驚きつつそう言葉を返すと、ソフィアさんに続いてアリスさんとネーヴェさんも言葉にしてきます。


「私も特に称号は獲得してないのです!」

「私もないわね?レアは何か出たのかしら?」

「はい、私は〈人業のお気に入り〉という称号を一緒に獲得しました」


 皆さんの反応を見るに、称号を獲得したのは私だけのようです。


 称号の名前通り私がメラスクーナさんから気に入られたから貰えたのかもしれませんし、そのせいでソフィアさんたちはもらっていないのですかね?


「…まあそれなら、称号についてはいいですね。とりあえず確認したいものは済みましたし、ここから出ませんか?」

「そうだね、目的も済んだしそろそろ出ようか」


 私の言葉にソフィアさんはそう言葉を返してきて、アリスさんとネーヴェさんも言葉にはしてませんが頷いてはいるので、さっさとここから出ることにしますか。


 ちなみに出口はここまで来た通路を戻る必要はなく、宝箱を開けた後に気づいたらこの空間の中央付近に魔法陣が出現していたようです。


 なのでそれで帰ることが出来るので、魔法陣に私たちが乗ったと思ったら移動はすぐに完了し、即座にこのエリアに入った場所である空間の狭間前へと戻ってきました。


「…戻ってきましたね」

「ですね。…あ、空間の狭間が…!」


 元いた場所である庭の中央に戻り次第聞こえてきたそのようなアリスさんの言葉に、私たちは空間の狭間に視線を向けます。


 すると、先程まであった空間の傷跡のようなものが徐々に閉じていき、数秒経つ頃にはそこに空間の狭間があった痕跡すらわからないくらい元の風景に戻りました。


「どうやら、空間の狭間が消えてみたいですね」

「だね、これで本当にクエストは完了みたい?」


 クエストの完了はシステムメッセージでわかっていましたが、キチンと目でもしっかりと確認したのでこれで今度こそ終わりですね。


「戻ってきてくれたみたいだね?」

「あ、ゴンゾウさん」


 私たちが空間の狭間があった場所に視線を向けていると、今度は背後からそのようなゴンゾウさんの声が聞こえてきました。


「無事に消してくれたみたいだね」

「なのです!これでもう大丈夫です!」


 ゴンゾウさんに向けてアリスさんは胸を張りつつ自信満々にそう答えますが、それに対してゴンゾウさんはチラリと張られている胸に視線を移します。


 そんなゴンゾウさんはジトーっとした目で私たちに見つめられているのに気づき、慌てて視線を逸らしてこちらに顔を向けてきます。


「…と、とりあえずこれでクエストは完了だし、報酬としてこれを渡すね?」


 そうしてゴンゾウさんは懐から何やら茶色の皮袋を取り出し、一番先頭にいたアリスさんへと手渡します。


「これはなんです?」

「大したものではないけど、中には宝石が入っているから後で皆で分けるといいよ」

「宝石ですか。ありがとうございます!」


 報酬は宝石のようですし、これについても宝箱から出たお金と一緒で後で分配することにしましょうか。


「じゃあ私は戻るから、アリスたちも気をつけるんだよ?」

「はい、宝石ありがとうございました!」


 そう言って手をひらひらと振りながら去っていくゴンゾウさんを見送りつつ、私たちは一旦宝石の分配をします。


 中に入っている宝石は数は多くて大きさも立派ですが、特に稀少そうなものは四個しか入ってなかったので、稀少そうな宝石はそれぞれに分け、残りは宝箱の中身と同様に売り払って分配に回すことにしました。


 その中で私が貰った宝石は、前にも見たことのある黒宝石と似た見た目をした黒影宝石というアイテムで、隠蔽効果を強化する力を持っているらしいので今度レーナさんに持ち込んでワンピースを強化してもらうのも良さそうです。


「これで完全にクエストは終わりだし、どこかで打ち上げとして食事でもしない?」

「いいですね!私もまだ皆さんとおしゃべりをしたいのです!」


 そう言ったソフィアさんの言葉にアリスさんも同意して、二人は私とネーヴェさんはどうするかを視線を向けて聞いてきました。


「私も特に予定は入っていないので、大丈夫です」

「…はぁ、ここで私だけが抜けるのも感じが悪いし、仕方ないから一緒に行ってあげるわ」

「よし、決まりだね!じゃあここに来る前にいたカフェに行かない?」

「いいですよ、では早速向かいますか」


 その言葉を聞いた皆は各々の返事をしてくれたので、私たちは揃って今いる庭からここまで来る時に入った道場のような建物を通って外に出て、皆でクエストに向かうまでにいたカフェへと歩いていきます。


 目的地に決めたカフェに行く道中で、今の時刻を知るために腰元の懐中時計を手に取って確認すると、ここまでに結構な時間が経っていたようですでに五時近くになっていました。


 やっぱり、このような特殊なクエストなどは結構な時間がかかってしまうようです。


「レアちゃんはこの後はどうする予定なのー?」


 そんな思考をしているとふとソフィアさんからそう聞かれたので、私は少しだけ考えた後に答えます。


「私は特に予定は入っていないので、皆さんの別れた後は現実世界で宿題でもしようかと思ってました」


 今は高校が夏休みなので結構な宿題が出ていますしね、とも続けて言うと、その言葉のどこに驚いたのかは知りませんが、何やら少しだけ驚いた表情を皆さんはしています。


「レアちゃんって、高校生だったの!?」

「レアさんは私と同じで高校生だったのですか!」

「…小さいからもっと下だと思ってたわね?」


 …そういえば歳については一切教えていませんでしたね。午前中に会ったマキさんと同様に、ソフィアさんたちからもどうやら幼く見られていたようです。


 まあマキさんにも言いましたが、その反応には慣れているのでいいですけど。


「というか、アリスさんも高校生だったのですね?」

「ふふん、今年になったばかりなのです!」

「ということは、歳まで一緒みたいですね」


 アリスさんの言葉からして、私とアリスさんはお互いに高校一年生で同学年みたいです。


「レアさんも私と同じなのですね!それなら、一緒の学校に行きたかったです…!」


 そしてアリスさんは、実は私も夏休みなのですが、夏休み明けには親の仕事の都合で違う高校に転校してしまうのですよ、と少しだけ寂しそうな表情でそう教えてくれました。


 高校に入ったばかりとはいえ転校をしてしまうなんて、今までの友達も居なくなってしまいますし、少しだけ心細くなるのは仕方ないですね。


 そうしてたわいない会話をしながら歩いていると、先程までいた裏通りから抜けて人気のある道まで戻ってきました。


 そこからの道では、アリスさんは焦茶色のクロークを装備して顔を出来る限り隠していますが、私とソフィアさん、ネーヴェさんは特に隠していないのであまり効果はなさそうに感じます。


 まあ周りからくる視線はアリスさんを除いた私たちに集中しているので、少しは効果はあるみたいですけど。


 そしてカフェに向かうまでの道を、周りにプレイヤーたちからの視線を浴びながらしばらく歩いていると、目的地であるカフェの入り口に着きました。


「じゃあ入ろうか」

「そうですね」


 ソフィアさんを先頭にして私たちはカフェの中へ入りますが、そこは最初に来た通り人気はないようで、やはり落ち着いた良い雰囲気を出しています。


 ですが、今回は一人だけカフェの中にお客さんがいるようで、お店のオーナー以外の人が存在していました。


 まあその人はいいとして、こんなところで立ち止まってないで早速テーブルに移動しますか。


「それじゃあ、注文はどうする?」

「そうですね…」


 テーブル席に着き次第、私たちはメニューを見て注文するものを決めます。


 カフェらしいものが色々と載ってありますが……よし、私はペペロンチーノにしますか。それと紅茶でいいですね。


 そして注文するものを決めた私たちは、それぞれの注文を頼んだ後は届くのを待ちつつおしゃべりに花を咲かせます。


「あ、そういえばレアちゃんたちは次のイベントについての生放送は見た?」

「はい、確か無人島でサバイバル、でしたっけ?」

「私も見たのです!ゲーム内で七日間も生き抜くのがメインでしたよね!」

「そうそう!もう少しでイベントが始まるから楽しみだよね!」


 次のイベントは確か土曜日でしたし、もう残り一週間を切っているので私もすでにワクワクしています!


 それにサバイバルなんて初めての経験でもあるのでちょっとだけ心配はありますが、それと同時に皆さんと一緒にたくさん行動も出来るので今からでもすでに心が躍りますね!


「そうだ!もしよかったら、二人も私たちと一緒にパーティを組んでイベントに参加しない?」


 んー……誰も一緒に行く人がいなかったらと悠斗に誘われていましたが、別に強制されているわけでもないですし、悠斗とはよく一緒に行動をするので今回のイベントくらいはソフィアさんたちと参加でもしましょうかね…?


「…ちょっと、私は誘ってないわよ」

「またそう言って、ネーヴェだってもうレアちゃんとアリスちゃんのことを気に入っているでしょ?」

「ぐっ……」


 ソフィアさんの言葉を受けたネーヴェさんは図星なのか少しだけ怯み、頬を少しだけ赤く染めて私たちから顔を背けつつ言葉を発します。


「…別に、気に入ってなんかいないわよ」

「じゃあ一緒に行くのはやめる?」

「…………あー、もう!わかったわよ!でも、行くかどうかはレアたちの言葉を聞いてからよ!」


 そう少しだけ怒ったような声をあげたネーヴェさんは、頬を染めつつもそう言って私とアリスさんへ視線を向けてきます。


 私はアリスさんと顔を見合わせた後、それならお願いします、とお互いにソフィアさんたちのお誘いに乗ることにしました。


「よし、決まりだね!」


 そんな会話がひと段落したタイミングで、ちょうどよく料理が届きました。


 様子を伺っていたのかと思うくらいにはタイミングがよいですが、料理を運んできたオーナーであろう男性に視線を向けると、軽くウィンクを返されたのでその考えで間違いなさそうです。


 こんな細かい気配りも出来るなんて、見た目だけではなく中身までイケメンのようですね!


「よし、おしゃべりは一旦中断して温かいうちに食べちゃおうか!」

「ですね!では、いただきます!」

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