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79話 港町

「エリアボスを超えた先からもネットの情報通り、結構平原が続いているようですね」

「……!」


 そうしてエリアボスであった大鶏もあれから特に目立つこともなく倒し終わり、私とクリアはそこを超えた先にも続いている平原を歩いています。ちなみにその大鶏を倒した時に称号を獲得しましたが、特に効果があるわけではないので割愛します。


 平原エリアはかなり大きいようですが、遮るものが何も無いからか遥か先に港町らしきものが見受けられます。


「ドロップアイテムは……大きめの肉と卵に羽毛ですか」


 先程倒してきたエリアボスである大鶏の落とした肉と卵は普通の鶏モンスターよりも大きいようで、料理に使えば一つで二、三人前くらいにはなりそうですね。


 ドロップアイテムからして鶏とほとんど同じようなので、特に目立つものはないのであまり狩りに来ることはなさそうです。


「ふんふーん」

「……!」


 今いる平原には特に何もなく、港町に向けてただ歩くだけなので少しだけ退屈ですが、クリアと一緒にリズムを刻みながら歩いているので少しは退屈を凌げています。


 この平原にもモンスターはいますが、初期の街の周囲と同じで自分から襲ってくるタイプではないですし、モンスターの種類も兎と鶏くらいで目新しさもないのでわざわざ狩りもしていません。


 素材も特に必要としてませんしね。


 出てくる兎や鶏を尻目に私とクリアは歩き続けますが、そこからさらに数十分近く歩いていると、やっと港町の入り口が見えてきました。


 それでもまだ距離はありますが、ここからでもすでに潮の香りが僅かに漂ってきています。


「この世界の海を見るのは初めてですが、どんな感じなのでしょうね」

「……!」


 私の肩にいるクリアもそんな匂いを感じたのか、少しだけ楽しそうに震えているのがわかります。


 …というか、クリアには鼻はないですが、感じ取れるのですね?まあ口や目もないのに食べたり見たりも出来ているので、今更ですね。


 ワクワクしているクリアにクスッと笑いつつもさらに港町に向けて歩いていき、特に何事もなく港町の入り口に着きました。


 港町の入り口は迷宮都市のように門番などは特にいないようで、普通に入れました。そういえば前にナンテさんが港町も自由都市に属すると言ってましたし、国ではないからでしょうね。


「うーん、結構しっかりとした作りの街なのですね。それに海も近いので、来る道中までよりも遥かに強く潮の香りがしますね!」


 この港町は入ってすぐに見渡した感じ、石造建築が多めで私の言葉通り結構しっかりとした作りになっているみたいです。まあ海が近いので、そうでもないとすぐにダメになってしまうからでしょうね。それとマップを見るに、この街はどうやら港町ピスカスと言うみたいです。


 そしてそんな港町の大通りに存在するたくさんの屋台も、海が近いので一部を除きほぼ全てが魚や貝などを売ってたりします。


 その一部については気になったのでちょっと屋台に寄っておじさまに聞いてみると、どうやらここから行ける他の大陸などから運んできたりした商品などのようで、屋台以外にもしっかりとしたお店で色々と売っていたりもするそうです。


 これはぜひ寄ってみたいですね!


 私が目を輝かせながらそう考えていると、そのおじさまの方は私へ一つのお店を紹介してくれました。


 そのお店は、ここから南にある大陸に存在する帝国から色々なアイテムを仕入れているようなので、目新しいものがあるはずと笑いながら言ってます。


 紹介されたお店の場所は私のマップにもキチンと記されたので、時間がある時に寄るとしましょうか!


「もぐもぐ……とりあえず、何かやる前に先に転移ポイントの解放にいきますか」

「……!」


 先程の屋台のおじさまに情報についての感謝と別れを告げた後、私は色々と屋台を巡って魚料理をクリアと一緒に堪能しつつそう呟き、港町の中心の広場へと歩いていきます。


 今食べたのは屋台の魚料理だけでしたが、これがまた新鮮だからかけっこう脂がのっていて大変美味しかったのです!


「いずれはクリアともどこかのお店でもっとしっかりとした魚料理を食べてみたいですね!」

「……!」


 クリアも楽しみにしているようで、私の肩で魚料理を食べながらプルプルと震えて感情を伝えてくれます。


 そんなクリアに頬を緩ませながは歩いていると街の中心である噴水に着いたので、早速それに手をついて転移ポイントの解放が完了しました。


「よし、これでやることは終わりましたね」


 やることを済ませた私は今の時刻を確認すると、まだ十二時五十分くらいでまだまだ余裕があります。


 なら、先程聞いたお店へ早速向かいましょうか!時間はたくさんあるので、海に行くのは後にします。海に行ったらクリアと一緒に海の中を泳いだりしたいので、時間が経ってしまいそうなので…


「マップを見るに、大通りからは少しだけ外れているようですね…」


 そんなことを考えつつも、転移ポイントを解放した広場辺りからマップを確認しつつ目印が載っている場所へと歩いていきます。が、徐々に人通りが少なくなっていっていますね。


 それでも人が少ないだけでいないわけではないので、別にこの辺のお店は閑古鳥が鳴いているわけではなさそうですが。


「っと、ここですね」


 そうして歩いていると、マップに示されているお店の前に着きました。


 そのお店は外観は他の建物と同じように基本は石造りの建物になっていますが、塩気に強い木も使われているようで石材と似た黒っぽい色をした木材も混じっており、結構オシャレに感じます。


 それと建物には小さめの窓が付いてはいますが、そこから見える範囲では雑多に物が置かれているように見えますね。


 おっと、こんなところで立ち止まってないでさっさと入りましょうか。


「クリア、いきますよ」

「……!」


 私は肩にいるクリアに一声かけた後、お店の扉を開けて中へと入っていきます。


「いらっしゃい」


 お店の中に入ると、そこは窓から僅かに見えていたようにたくさんの棚やテーブル、壁などに種類を問わず様々なアイテムが置かれていました。


 置いてあるアイテムは薬や本、何らかの素材らしき物の他に、アクセサリーである指輪やチョーカー、古そうな楽器やカードにランタンなどなど、実に多種多様なアイテムが手当たり次第に置かれています。


 うーん、ちょっと色々ありすぎて少しだけ驚きました。おじさまの話からすると、これらのほとんどは帝国などのこことは違う国から仕入れてきているのだとは思いますが、それにしても多すぎませんか…?


「お嬢ちゃん、何かお探しかい?」


 クリアと一緒に色々なアイテムたちを見て回っていると、いつのまにか奥にあったカウンターに近づいていたようで、そこに座っていたおばさまからそのように声をかけられました。


「いえ.特に何かを探していると言うわけではないですね。この街に来た時に屋台のおじさまから、ここなら目新しいものがあるはずと紹介されたので来たのです」

「ほう、紹介ねぇ」


 私の言葉におばさまは何やら考えごとをしているみたいですが、私はその間にもお店の中にあるアイテムたちを見渡していきます。


「じゃあ、そんなお嬢ちゃんにはこれがおすすめだよ」


 考え事が済んだのか、おばさまはそう言ってカウンターの裏から一冊の本を取り出してカウンターに置き、私へと見せてきました。


「これは…?」

「それはあたしにもよくわからないさ。だが、悪い物ではないはずだよ」


 おばさまはその本についてはよく知らないようで教えてくれませんが、別に意地悪で隠しているわけではないので本当に私へのおすすめなのでしょうね。


 ➖➖➖➖➖

 ???の本 ランク S レア度 遺物(エピック)

 とある力が宿った魔法の本。とある言語で書かれているようだが、今はまだ読むことが出来なさそうだ。

 ➖➖➖➖➖


 おばさまが見せてくれたアイテムについて鑑定をしてみたのですが、何と鑑定で全ての情報を知ることが出来ませんでした。


 ですが、見れた範囲ではどうやら何らかの言語で書かれているようなので、その言語を理解出来れば読むことが出来るようになるのでしょう。


「…ちなみに、いくらですか?」

「そうさな……お嬢ちゃんなら活かせるだろうし、割引して50,000Gだね」


 たっかいですね…!?ま、まあそれでも私は特に無駄遣いはしてないので買えはしますが、結構な代金ですね…


 それでも、この本はそれだけの価値はあるように感じますし……よし、ここは景気良く買っちゃうとしましょうか!


「…よし、それ買わせてもらいます!」

「あいよ」


 そう言って私はインベントリから50,000Gを取り出しておばさまへと手渡します。さらば、私の50,000G…!


 そしてその代わりのアイテムである特殊な本を受け取ったので、即座にインベントリへと仕舞います。今は読めるわけではないので、読めるようになるまではインベントリに保管ですね。


 あ、もしかしたらソロさんなら読めるでしょうか?今度時間が出来たらまた図書館に言って聞いてみますか。それに私のユニークスキルを使えばもし読めなくてもわかるでしょうし、いい買い物だったのは間違いありませんね!


 さて、見るものは見ましたし、そろそろお待ちかねの海へと向かいますか!


 私はそのままおばさまに別れを告げ、お店を後にします。


「ふんふーん」

「……!」


 おばさまのお店を出た後は海に向かって歩いて行ってますが、どんどん近づいているのか徐々に潮の香りが強くなってきています。先程までは肩で大人しくしていたクリアも、匂いを感じたのかワクワクしているようにも見えますね。


 そして歩くこと数分、ついに海が見えてきました。


「クリア、海ですよ!」

「……!」


 この世界での海は現実よりもかなり綺麗なようで、キラキラと日差しを受けて輝くかのような青い海に、ゴミなども一切なく透き通るようにも見えます。


 この街に来たばかりの時にはわかりませんでしたが、そんな海には無数の船が存在しており、それで運ばれてきた荷などを保管するためか今いる港にはたくさんの倉庫も建ち並んでいます。


 そして港にはこれまたたくさんの人で溢れかえっており、船に乗ったり降りたりと忙しなく人が行き交ってもいるみたいです。


「はは、お嬢ちゃんは海を見るのは初めてかい?」


 そうしてクリアと共に目を輝かせて海を見ていると、突然近くを通りがかったらしい日に焼けて小麦色の肌をした男性からそう声をかけられました。


「はい!この世界での海は初めてです!」

「この世界でってことは、お嬢ちゃんは異邦人か。どうだ、綺麗だろ?」

「初めて見ましたが、とても綺麗ですね!」


 私の言葉にその男性は少しだけ嬉しそうにしつつも、言葉を続けます。


「異邦人であるお嬢ちゃんにもそう言ってもらえると嬉しく感じるな。俺たちはこの海で漁をやっているが、綺麗なだけでなく怖い一面もあるんだぞ?」

「怖い一面、ですか…?」

「……?」


 男性のその言葉に私とクリアは首を傾げますが、男性はニヤリと笑みを浮かべて脅かすように言葉を発します。


「ああ、この海にはあの船なんかよりも大きくて強いバケモノみたいなモンスターもいるんだ。それに魚たちも、ただの魚だけではなく襲いかかってきたりするモンスターもいるから、漁をするだけでも結構命懸けなんだぜ?」


 そう言って男性が示すのは、全長50mはありそうなくらい大きい船でした。あの船よりも大きいモンスターなんているのですね。それだと男性の言った通り、命懸けの漁になるのも無理はなさそうです。


 というか、この世界ではそんな大きいものだけではなく襲ってくるモンスターもいるなんて、ヤバすぎませんか…?それを聞いてしまうとちょっと怖く感じますね…


「こら、あんたなにお嬢ちゃんを怖がらせているんだい!お嬢ちゃん、そんな危ないモンスターはもっと沖に出ないといないからそこまで怖がる必要はないよ!それに船には魔物避けの魔道具もあるから、大抵のモンスターは近寄ってもこないしね!」


 男性の言葉を聞いてクリアと一緒に少しだけ不安そうな表情をしていた私たちですが、突然男性の後ろから伸びてきた手が男性の頭を叩き、一人の女性がそのような声と共に現れました。


 その女性も男性と同じように日に焼けた健康的な色の肌をしており、その雰囲気もあってか活発そうなイメージが伝わります。


「いてて、いきなり叩くなよ」

「あんたがこの子を脅かしてるのが悪いのさ。ほら、こんなところで口喋ってないで、さっさと仕事にいくよ!」

「はいはい、じゃあお嬢ちゃん、そういうことで俺たちは行くな!」

「はい、色々と情報をありがとうございました!」


 そうしてお二人は仕事に戻るのか、私の前から去っていきました。


 そんなお二人を見送った私は、一度今いる港から離れて海へ向かうために海に入れそうな場所を探して歩いていきます。ここでは船などが多くて海に潜るのは危険そうですし、目立ちもしそうなので。


「…ここら辺で良さそうですね」


 そしてたくさんの船が浮いている港から離れて歩いていると、ちょうど海に向かうのによさそうな海岸を見つけました。ここなら船との距離もかなりあるうえに砂浜にもなっているので、簡単に行き来が出来そうなので良い感じがします!


 しかもここは街中の範囲のようで、モンスターなどもいないので遊ぶのには適していそうです。


「とりあえず、今のゴスロリ装備から一旦初期装備に変えて……あ、このままでは泳ぐのに向かなそうですし、レーナさんに泳ぐのに良さそうな服とかも作ってもらうのもよさそうですね。…ちょっと先に連絡してみますか」


 私は一度そう思考して一旦装備を変えるのはやめ、先にレーナさんへそのような趣旨のフレンドメッセージを送ります。


 待っている間はクリアと一緒に海岸沿いでも歩いて観察でもしてますか。




「ん、何やらメッセージが……ああ、レーナさんからですね」


 地面に下ろしたクリアと少しの時間一緒に海沿いを歩いていると、先程メッセージを送ったレーナさんから返信が届きました。


 内容は、ちょうどお店でも取り扱っているし、レアちゃんなら特注でも作ってあげれるわよ!とのことでした。


 特注の服はさておき、どうやら売ってはいるみたいなので海に潜る前に先に寄ることにしますか。


「クリア、一度海に潜る前にレーナさんのところに向かいましょう」

「……!」


 クリアもわかった!と言うように私の肩に跳んできたので、そのまま一緒に港町の中心へ向かい、そこから初期の街へと転移をします。


 転移はすぐに完了しましたが、やはり初期の街なので人が多くてちょっとだけ大変です。それでもレーナさんのお店に向かうので、何とか人混みをかき分けて歩いていきますが。


 今はクリアと私の二人だけなので、逸れないように気をつける必要がないのがまだ救いですね。


 それと最近はクロークをつけてはいませんが、目立ちはしますけど気軽に声をかけてきたりはしてこないようでまあまあ快適です。まあ結構な視線は私へと飛んできていますけど。


 それに私だけではなくクリアにも注目が集まってもいるようですが、クリアはそんな視線を受けても特に気にしていないようで私の肩で楽しそうにしています。


 ふふん、皆さんもクリアの可愛さにメロメロみたいですね!

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