77話 ポーション製作
「よし、まずは買ってきたばかりの触媒草で中級ポーションを作りますか!」
「……!」
先程まで肩で大人しくしていたクリアも、私とクリア以外いないのがわかっているようで床へと飛び降りてプルプルと震えて楽しそうにしています。
私はそんなクリアを見てフフッと笑った後、インベントリから下級錬金セットを取り出し、錬金を始めます。
「まずは瓶に【生活魔法】の〈飲水〉で水を入れて、そこにレシピ通り布の上に特薬草と触媒草も置いて…〈合成〉!」
〈合成〉のアーツを使用すると、置いていた三つの素材が光り、光が収まるとそこには緑色のポーションが出来てました。
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中級ポーション ランク F レア度 一般品
HPの回復効果のあるポーション。傷口に掛けても効果がある。
HP40%回復。
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鑑定をしてみた結果、レシピの通り上手く出来ました。ですが、やはりランクは上がっていないのでヴァルトさんのお店で買ったポーションよりは効能が低めです。
ちなみに、ヴァルトさんのポーションはこんな感じです。
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中級ポーション ランク B レア度 一般品
HPの回復効果のあるポーション。傷口に掛けても効果がある。
HP46%回復。
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そこまで変わって無いんじゃないか?と思う方もいるかも知れませんが、ヴァルトさんのお店でも聞いた通りポーション中毒というものがあるので、回復量が多いのはそれだけで生存確率を上がるため少しでも効能が高い方が良いのです。
そうして中級ポーションを五個作った後は、続けて中級MPポーションの製作に取り掛かります。まあ【錬金術】スキルの合成で作りますし、時間は全然かかりませんけどね。
その後は特に失敗もなく中級MPポーションを五個作り終わり、それと同時にさっき買った触媒草も無くなったので中級ポーション製作はこれで終わりです。
「では、続けて魔法薬ですね!」
まずは、ノルワルド黒森で数個採取したナテの花でポーションを作りましょう。
私はインベントリからナテの花を取り出して下級錬金セットの布の上に置き、水入り瓶と共に〈合成〉を使用します。
すると、ポーション製作の時と同じように軽く光り、それが収まるとそこには黒色のポーションが出来てました。
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解暗ポーション ランク F レア度 一般品
暗闇を治す効果のあるポーション。飲むと暗闇状態を解除する。
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前に見た説明通り、暗闇状態を治すポーションが出来ました。まあ今は暗闇状態にしてくるモンスターなどもいないですし、使う機会はもっと先になるでしょうが持っておいて損はないのでこのままインベントリに仕舞っておきますか。
「次は、ステータス上昇の魔法薬でも作ってみますか」
確かステータス系のポーションは魔物素材でしたね。なら、ストーンオオトカゲの素材を筆頭に今まで使っていなかった素材たちをこの機会に使ってしまいましょうか!
「ふんふーん」
「……!」
そこからは鼻歌を歌いながら【錬金術】スキルのアーツである〈合成〉でステータス上昇の魔法薬を量産していきます。
色々な魔物の素材を使ったからか、全てのステータス上昇系魔法薬を作れました。私は今まで使ったことはありませんでしたし、強敵を相手にした場合は使ったりするのも良いかもしれませんね。
しかもそんな中にはステータス上昇だけではなく、特殊なバフである跳躍力上昇効果や暗視効果、隠蔽効果なども出来ました。
私のスキル構成的にあまり使い道はありませんが、特殊な物が出来たのは少しだけ興味深くて面白いです。私は使わないとは思いますが、一応インベントリにでも仕舞っておくとしますか。
ポーションや魔法薬をあらかた作り終わったので一息ついて腰元にある懐中時計を確認すると、もう少しで一時間が経つ頃で、今の時刻は六時四十分でした。
「そろそろここから出てログアウトをしますか。クリア、いきますよ」
「……!」
この部屋についている窓付近で日向ぼっこをしていたクリアに声をかけると、クリアはわかった!というかのように伸ばしていたスライムボディを弾ませ、私の肩へと飛び移ってきました。
私はクリアを優しく撫でてからこの部屋の扉を開けて外に出て、そのまま階段を降りて職人ギルドの一階へ向かいます。
階段を降りている途中でカウンターをチラリと見ましたが、ミリアさんは他の仕事でもしているのか今はいませんでした。まあミリアさんは副マスターのようですから、忙しかったりするのでしょうね。
そんなことを考えつつも、私はそこで一度クリアを送還してからメニューを開き、ログアウトをします。
「…よし、夜ご飯の用意をしますか」
現実世界に戻ってきた私は、軽くストレッチを済ませた後に部屋から出てリビングへ向かいます。
今はまだ六時四十分くらいで七時までは少しだけ時間がありますが、料理を作っていればその間に兄様も降りてくるでしょう。
「…そろそろ冷蔵庫の中身も無くなってきましたし、明日にでも買い物に行きましょうか」
リビングに降り次第、私はキッチンの冷蔵庫を見てそう呟きます。それでも今日の分はありますし、早速調理を開始しますか。
そんな思考をしつつもテキパキと調理を始め、気づいたらすでに仕上げ前の段階まで進みました。
「美幸はもう降りてきてたんだな」
「あ、兄様!」
そうして仕上げも済ませて料理が完了したタイミングで兄様も降りてきたようで、そのような声をかけられました。
作っている最中は時計を見てませんでしたが、すでに七時前になっていたようです。
「ちょうど料理は出来てますが、食べますか?」
「そうだな、なら温かいうちに食べてしまおうか」
「わかりました、では用意します!」
「あ、俺も手伝うな」
用意を始めた私を見て兄様も手伝いをしてくれたので、用意はすぐに終わりました。
「では、いただきましょうか」
「ああ、いただきます」
そう言って私たちはご飯を食べ始めます。ちなみに今日の夜ご飯は酢豚です。最近は暑い日も続いているので、夏バテの予防や疲労回復に役立ちますしね。
今回の酢豚は夏野菜を多めにしましたが、なかなか美味しく出来ていたようなのでよかったです!
「あの後美幸はポーション製作をしていたんだよな?」
「ん、そうですね。そこで私も中級ポーションや魔法薬を作ったりしてました!」
ニコニコとしながらもご飯を食べていると、そのように兄様から聞かれたので、まあそれでもヴァルトさんのと比べるのやはり劣ってしまいますけどね、と苦笑しつつも私は返しました。
【錬金術】スキルで作ったアイテムはランクを上げれないせいでどうしても【調合】スキルなどと比べて劣ってしまうので、これを解決はしたいのですが今のところは目処が立っていません。
「そうなんだな。俺は生産スキルを持ってないから詳しくはわからないが、やっぱり使いにくいのか?」
「手早く作れるのだけが唯一のメリットで、他の要素は全て【調合】スキルなどに負けてしまうので、兄様の言う通り結構微妙なスキルなのですよね…」
ランクさえ上げることが出来れば【調合】スキルとは違ってゴーレムや剥製などと色々と作ることも出来るので、もっと流行りそうではあるんですけどね。
「それでも効能は最低値のポーションではありますが作れますし、使い道がないわけではないのでまだそれが救いです」
「確かに自分だけで作れるならお金もかからなそうで良さそうかもな」
まあ俺には合ってないから生産スキルを取ることはなさそうだが、と言ってご飯を食べている兄様に私は苦笑します。
兄様は昔からゲーム内で生産をしてませんけど、自分で作ってみたいと思うことはないみたいです。
「それと悠斗から聞いたのですが、明日のお昼に公式サイトの生放送があるみたいですよ」
「そういえばそんな情報が出てたな。じゃあまた悠斗も誘ってここで見るか?」
「そうしようと思ってました。兄様も一緒に見ますよね?」
「そうだな、俺もそのタイミングで見るとするか」
そこからも私たちはご飯を食べながら会話を続け、お互いに食べ終わったので食器洗いなどはいつも通り兄様に任せ、私は洗濯とお風呂に向かいます。
そして諸々を全て済ませてきた私は自分の部屋へ戻り、今日はゲームを一旦辞めて出されていた夏休みの宿題を進めていきます。宿題は結構あるので、適度に進めておかないと大変ですからね。
そうして勉強に集中して励み、一区切りがついたタイミングで時計を見るとすでに寝る時間である九時になっていました。なので私は道具たちを片付けた後は部屋の電気を消して就寝とします。おやすみなさいです。
ふと目が覚めたので時計を確認すると、いつもの時間の七時になっていました。
おはようございます、今日は夏休み最初の日である土曜日です。今日はお昼から悠斗が来ますし、それまではゲーム内で狩りにでも行ってましょうかね?
まあとりあえず、朝の支度を済ませてきましょうか。そう決めた私はいつも通りストレッチと着替えを終わらせた後、リビングに降りてまずは洗濯物を畳んで片付けます。
その後は朝食であるパンも食べ、洗顔などの諸々も済ませます。が、その間に兄様は降りてこなかったので、私は日焼け止めをいつもよりしっかりと塗ってから買い物リストを確認して、いつものお店まで食材の買い物へ向かいます。
「ふぅ、今日も暑いですね…」
ジリジリと強い日差しを受けながらもお店に向かい、買いたいものを買った後は家に戻るために歩き続けながらもそう言葉を呟きます。
暑いのでついでとばかりにお店で買った棒アイスを口にしながら歩いていますが、それでも暑さは和らぎません。
「…家に帰ったら、先にシャワーでも浴びますか」
私の家からお店までは結構な距離があるせいでどうしても歩く時間が多く、その道中で汗をかいてしまっているので早くサッパリしたいところですね。
それに日焼け止めをしっかりと塗ってはいますが、それでも夏本番である日差しはそんな私の肌を焼いていくので、肌の弱い私には大変です。
そこからも早足で歩いていくとやっと家に着いたので、扉を開けて家の中に入ります。んー、やっぱり家の中は涼しくていいですね!
家に戻った私はすぐさま買ってきた食材などを冷蔵庫へと仕舞い、やることを済ませた後はまずシャワーを浴びるために着替えを持ってお風呂へ向かいます。
お風呂場で軽くシャワーも浴びて汗を流し、綺麗な服に着替えた私は自分の部屋に戻り、一度時計を確認します。
「今は八時半ですか。悠斗が来るのはお昼くらいですし、とりあえずはゲームはしてないで勉強でもして待っていますか」
悠斗の来る時間は聞いていませんでしたが、おそらくは前と同じで九時から十時の間で来るでしょう。
買い物から帰って来る途中でスマホで見た限りでは、どうやら公式の生放送は前と同じ十時のようなので今の時刻からゲームにログインすると遅れてしまいそうですしね。
そう考えた私はそのまま部屋で夏休みの宿題に手をつけていきます。
ピンポーン
「ん、呼び鈴?…ああ、悠斗ですね」
一人で黙々と宿題を片付けていると、ふと鳴った呼び鈴の音に私の意識が戻ってきました。
私は一度勉強道具たちを片付けた後、自分の部屋から出て玄関に向かいます。そして玄関の扉を開けると、そこには悠斗が立っていました。
「よっ、来たぞ」
「暑い中お疲れ様です。中にどうぞ?」
「ああ。あ、それとアイスも買ってきたからやるよ」
「わ、ありがとうございます!早速いただきますね!」
悠斗からアイスをもらったので、私は早速とばかりに食べ始めます。んー!冷たくて美味しいですね!
「確か生放送は十時だったよな?」
「んぐ、そうですね。前と同じ時間らしいです」
私はアイスを口にしながらもそう答えます。悠斗の来た今の時刻は九時半くらいなので、もう少しで放送の時間にはなりますね。
まだ少しだけ時間はありますが……まあこのままおしゃべりでもしていればすぐに時間になりますね。
そこからも悠斗とたわいない会話をして、もう少しで生放送の時間になると思ったタイミングで兄様も私たちのいるリビングへ降りてきました。
「兄様も来たのですね!」
「もう少しで時間になるからな。それと悠斗もこんにちは、暑い中大変だったろ?」
「こんにちはです、玲二さん。いえ、家も近いので大丈夫ですよ」
兄様の言葉に悠斗はそう返してますが、暑い中ここまで来るのは大変だとは思います。私も朝起きてから買い物に行きましたが、それだけでも結構な汗もかいてしまっていますしね。
「っと、そろそろなるな」
そう呟いた兄様の言葉に私たちは時計を確認すると、もう十時前になっていました。
パソコンはすでにここへ持ってきていますし、後は公式サイトから動画を再生するだけなのでその準備をしちゃいましょうか。
そうして準備もすぐに終わり、少しだけ待っていると生放送が始まったので私たちは三人でパソコンに映っている映像を見ていきます。
『はじめましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶりです。このゲーム、"Memorial Story Online"の制作会社ユグドラシルの社長、天馬光輝と申します』
その言葉と共に最初に動画へ出てきたのは、前に見たことのある明るい茶髪をした二十歳くらいの男性でした。やっぱり前に思いましたが、こんな若そうな人が社長なんて、凄いですよね。
『この度は、我が社が開発したゲームである、MSOをプレイしていただきありがとうございます』
そう言って深々と頭を下げる天馬さん。そして頭を上げて、続きを話し始めます。
ここまでは決まった順序なのか、前とほとんど同じ言葉ですね。まあ放送する内容は違うとは思いますけど。
『今回の放送では、近々ある公式イベントについてのお知らせと説明をさせていただきます』
「悠斗の言っていた通り、次のイベントについてでしたね!」
「やはり掲示板の情報通りだったみたいだな」
「まあ皆も予想は出来ていただろうし、そこまで驚きはないな」
兄様もそう言ってますが、続けて言った悠斗の言葉にもよるとネットでも生放送の内容はイベントのことなんじゃないか、という情報が出回っていたようなので、情報を見ていれば私たち以外にも驚きはしてない人は多そうですね。
動画のコメント欄にも"やっぱりイベントについてだったか"や"内容はなんですか?"と言ったコメントがたくさん流れていってます。
『…皆さんも驚きは少ないようですね。では、気になっている人も多いでしょうし、早速発表とさせていただきましょう』
天馬さんのその言葉に、コメント欄の人たちもワクワクを隠せていないようでたくさんのコメントが流れていってます。
私たちもイベントは楽しみですし、どんな内容かは気になるので天馬さんの言葉をしっかりと聞きましょうか!




