73話 暗殺者ギルドへの登録
「じゃあ今から登録するから、この水晶に手をついてもらってもいいかな?」
「はい」
私はルルさんの指示通り中央に置いてある水晶に手をつくと、何やら魔力が僅かに吸われた感覚を感じ、それと同時に視界に映っているMPゲージもほんの少しだけ減りました。
職人都市でも登録の時に感じましたが、暗殺者ギルドの場合でも登録に使うアイテムの形は違いますがやり方はほぼ一緒のようですね。
「…はい、これで登録は完了したよ!」
ルルさんはいつのまにか出していた黒色のボードを見つつ、そう声をかけてきました。
よし、これで私も暗殺者ギルドの一員になりましたね!これからも依頼はくるでしょうし、失敗しないように頑張りましょう!
暗殺依頼の場合はまだちょっとだけ不安ですが、それでもやっていけばある程度は慣れるとは思うのでそこまで心配はしなくても大丈夫ですかね?
「これで異邦人の暗殺者は二人目になったね!」
「え、私以外にも暗殺者ギルドに入ったプレ…異邦人がいるのですか?」
その言葉に私は少しだけ驚いて思わず聞き返すと、ルルさんは世間話でもするかのように軽く説明してくれます。
「そうなんだよ!その人は大体一週間くらい前かな?そのくらいの時にマスターが直々にスカウトをしてここに登録しにきたんだよ!」
私の場合は副マスターであるナンテさんからでしたが、その人はどうやらトップであるマスターから誘われたのですね。
私はそのマスターには会ったり話したりもしてないのでどんな人かはイマイチわかりませんが、トップから直接スカウトされるなんてそのプレイヤーは余程優れた暗殺者だったのでしょう。
「そうなんですね。これから私も暗殺者ギルドとして依頼をしていればいつか会ったりしますかね?」
「多分会えると思うよ!それに暗殺者としてはすでに結構な経験をしているから、困ったら私やナンテさん以外にもその人に聞いたりしてみるといいよ!」
「わかりました」
ルルさんがそう続けて教えてくれたので、私はそれに素直に頷きを返します。
まあ今すぐに会うわけではないですが、いつかはそのプレイヤーとも会えるでしょうね。
「そういえばレア、時間は大丈夫なのかい?」
「あ、今何時でしょうか」
話が一区切りついたタイミングでナンテさんはそう声をかけてきたので、私は腰元の懐中時計を手に取って確認すると、今はすでに九時半近くになっていました。
「…そろそろ戻っておかないとやばいですね」
「そうかい、なら今日はこれでお開きだね」
「ならレアちゃん、この暗殺者ギルドの二階に休憩室があるからそこで休むといいよ」
すぐにでもログアウトをしようと考えていると、ルルさんが横からそのように声をかけてきました。
「いいんですか?」
「もちろん!暗殺者ギルドの仲間なんだし、好きに使っていいからね!」
「…ありがとうございます、それならちょっと使わせてもらいますね」
私はルルさんとナンテさんに一度挨拶を返してからそのまま別れ、その足で横にある階段を登って二階に移動します。
二階に上がると、そこは長めの通路とたくさんの扉が存在しており、そこにある何個かの扉には休憩室と名札のようなものが付いていたので場所はすぐにわかりますね。
そしてすぐ近くにあった休憩室である一つの部屋の扉を開けて入ると、中はまあまあ広くて簡易なベッドが何個かとテーブルと椅子も数個だけあるの部屋でした。
「まあ落ちるだけなので、特に気にすることはありませんね」
私はそんな部屋を軽く見てから、メニューを操作してログアウトを選択します。
現実世界に戻ってきた私は、軽いストレッチを済ませてから部屋の電気を消して就寝します。
朝になりました。おはようございます、今日は金曜日です。
寝るのが少し遅かったですが時刻はいつも通り六時半ですし、学校は今日で夏休みに入って終わります。
それに今日は午前中で学校が終わるのでお弁当もいらないですが、とりあえずいつも通り朝の支度を済ませてしまいましょう。
私はいつものストレッチをササッと完了させた後、制服に着替えてからリビングに降り、朝ごはんである食パンを焼き始めます。
そして少し待つとすぐに焼き終わったので、今日はマーガリンを塗って食べ始めます。うーん、やはりこれはお手軽で美味しいですね!
「…美幸か、早いな」
「あ、兄様!」
私が一人でモグモグと食べていると、いつのまにかリビングに降りてきていた兄様が聞こえたので、食べる手を一度止めてから挨拶を返します。
「おはようございます、兄様。今日はなんだか眠そうですね?」
「ああ、おはよう。昨日の夜は長くやっていてしまってな」
そんな返事と共に軽くあくびをしながら、兄様も食パンを取りだして焼き始めます。
どうやらまた長くゲームをやっていたみたいですね。私も人のことを言うのは難しいですが、少しはする時間を減らしてはどうでしょうか…?……まあ現実に影響が出ているわけではないですし、大丈夫ですか。
「それと昨日言ってたことだが、特に問題はないから学校から帰り次第、迷宮都市の広場で集合でいいか?」
「いいですよ!」
兄様のパーティメンバーの方も一緒にやるのは大丈夫なようなので、今日の午後には兄様たちと一緒の狩りにいけるようですね!
私は新しいエリアにはまだ行ってませんでしたし、兄様のパーティメンバーの方とも会うのは久々ですから、今からもうワクワクです!
私と兄様はお互いにそんな会話をしつつも食べ進め、私が先に食べ終わったので会話を一度中断して、洗顔、歯磨き、スキンケアや洗濯物を畳むのなどの諸々を済ませてきます。
その後は兄様も諸々を終わらせた後、時間になるので二人で悠斗を迎えに行ってから学校へと向かいます。
「美幸、知ってたか?明日のお昼にまた公式が生放送をするらしいぞ」
悠斗を含めた私たち三人は何事もなく学校に着いた後、学級が違うので別れた兄様を除き、二人で向かった教室で悠斗からそのような情報を聞きました。
「そうなのですか?知りませんでした」
「俺が見た掲示板の情報では、おそらくは次のイベントについてじゃないかと言ってたな」
「そういえば一回目のイベントが終わってからすでに結構経ってますもんね」
悠斗はネットの他に掲示板などからも情報を手に入れてきているようで、それについて教えてもらいました。
前にやったイベントから結構な日数も経過しているので、その掲示板の情報通り次のイベントについての生放送だとは私も思いますね。
「なら、お昼にまた私の家で一緒に見ませんか?」
「そうだな、それでいいか?」
「私は全然問題ありませんよ!ではそうしましょうか!」
前の生放送の時も一緒に見てましたし、そのくらいは一切気にしませんよ!
ついでに土曜日はお昼ご飯も私の家で食べて行くとよいですよ、とも伝えると、悠斗は少し考えた後にそれで頼むと返してきました。
どうせ兄様と私の分は作りますし、二人分と三人分も変わらないのでそこまで手間はいらないですしね。
そんな会話をしているとチャイムが鳴ったので、さっさと終業式なども済ませてきますか!
そうして夏休み前の最後の学校も無事終わったので、これからしばらくは夏休みです。
「どっか遊びにーー」
「宿題めんどくさいーー」
「帰ろうぜーー」
同じ教室のクラスメイトたちもそれぞれワイワイと賑やかそうに声をあげ、色々と行動に移り始めています。
「美幸、帰ろうぜ」
「そうですね」
私と悠斗もそんな声を交わしながら帰る支度をして、学校を後にします。もちろんその途中で兄様と合流もして、ですよ。
「夏休みになるし、リアルでは会うことは少なくなりそうだな」
「まあそれでも連絡先は交換してありますし、話したい時はそれですればいいですよ」
「それもそうだな」
その帰り道でも、私たちはたわいない会話をしながら歩き続けます。
「それと前に言っていたダンジョン攻略なんだが、それは次の火曜日でもいいか?」
「特に予定は入っていないので多分大丈夫です!では日程はそれでお願いします!」
「了解、あと集合の時間はまた近くなったら連絡するな」
「わかりました!」
そして分かれ道に着いたので、悠斗とはここで別れて私と兄様は二人で家へ向かいます。
「美幸は悠斗とのダンジョン攻略に行くんだな」
「そうなんですよ。ダンジョンにはまだ潜ったことがないので、少しだけ楽しみでもあるんです!」
そんな家に向かっている道中で兄様からそのように聞かれたので、私はそれに笑みを浮かべながら言葉を返します。
それに悠斗パーティとの行動をするのは結構久々でもあるので、少しだけ皆さんの成長具合とかはどうなっているかも気になります!
「そうか、楽しめるといいな。それと美幸、今日俺たちと行こうと思っているエリアは迷宮都市の東にある森に行く予定だが、大丈夫か?」
「あそこの都市の東には森があるのですね。特に否定する理由もないので私は問題ありませんよ」
続けて兄様はそうと聞いてきたので、私はそれに対してもすぐに返事をします。
まだ行ったことがなかったですが、森のエリアなどなら私は得意なので足を引っ張ることはない、といいですね。
「よし、ならそうしようか」
そこからも兄様と共に歩き続けていると私たちの家に着いたので、私たちは家の中に入り次第、ゲームへログインをする前にお昼ご飯を食べ始めます。
ちなみに今日のお昼ご飯はすぐに作れる素麺にしました。今日も日差しが強くて結構暑かったですしね。
そうして私たちは素麺をパパッと食べ、片付けを済ませた後はお互いに自分の部屋に戻ってゲーム世界へ向かいます。
その前に部屋で時計を確認すると今の時刻はどうやら十二時半くらいなので、結構な時間やっていられますね!
時間もたくさんあるので今日の午後は基本狩りをし続けるでしょうし、一度ログインしたら先にステータスの確認をしておきましょうか。
「ここは、確か暗殺者ギルドの休憩室でしたね」
ログインしてまず視界に映ったのは何個かのベッドとテーブルに椅子でした。
「よし、じゃあ集合場所に向かいますか」
私はそこの部屋から出て、そのまま人のいない暗殺者ギルド内を歩いて外に出ます。
あ、そういえばクロークは壊されたままでしたね。一つだけあるクロークも暗殺者用の物ですし……今は仕方ないのでそのまま行きますか。
そんな思考をしつつも、私は今いる暗殺者ギルドがある冒険者ギルド本部の後ろ辺りの道から横道を通って大通りに移動し、そこからさらに歩いて兄様たちとの集合場所である迷宮都市の広場に移動し続けます。
その道中ではすれ違ったりするプレイヤーたちからの視線は結構こちらに向きますが、移動し続けているおかげで話しかけてきたりはされません。
「モグモグ……声をかけてはこないようですし、ある程度の視線は無視でいいですね」
満腹度が結構減っていたので行くまでの道にあった屋台で売っていたアメリカンドッグと、おそらく鶏肉であろう串焼き肉を食べながらそう呟きつつ、プレイヤーたちの視線を無視して歩いていると、やっと集合場所の広場に着きました。
やはり迷宮都市は今までの街よりも大きいので、街の中や外への移動には意外と時間がかかってしまうのが唯一の難点ですね。
まあそれでも、その分たくさんのお店やナンテさんのように特殊そうなイベントもあるようですし、広いのは全然悪いことじゃないのでいいですけど。
「兄様たちはまだのようですし、先にステータスの確認をしておきますか」
私は待っている間に一度ステータスを開き、今の状態を確認します。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv13】【鑑定士Lv7】【錬金術Lv9】【採取士Lv8】【気配感知Lv13】【隠密Lv12】【鷹の目Lv13】【ATK上昇+Lv13】【AGI上昇+Lv13】【DEX上昇+Lv13】【体術Lv45】【気配希釈Lv12】【採掘士Lv4】【INT上昇+Lv11】【第六感Lv9】【跳躍Lv30MAX】【夜目Lv35】【言語学Lv25】【魔力制御Lv5】【魔力感知Lv3】【魔力隠蔽Lv30MAX】【MP上昇Lv29】【HP自動回復Lv26】【MP自動回復Lv26】【栽培Lv3】【調教Lv9】【STR上昇Lv13】【料理Lv3】【刀剣Lv16】【生活魔法】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 42
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の祝福〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
〈時駆ける少女〉
〈蟲惑の暗殺者の弟子〉
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スキルも全体的に育っている様でMAXになっているものもあるので、それらを進化させるとこうなりました。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv13】【鑑定士Lv7】【錬金術Lv9】【採取士Lv8】【気配感知Lv13】【隠密Lv12】【鷹の目Lv13】【ATK上昇+Lv13】【AGI上昇+Lv13】【DEX上昇+Lv13】【体術Lv45】【気配希釈Lv12】【採掘士Lv4】【INT上昇+Lv11】【第六感Lv9】【飛躍Lv1】【夜目Lv35】【言語学Lv25】【魔力制御Lv5】【魔力感知Lv3】【魔力希釈Lv1】【MP上昇Lv29】【HP自動回復Lv26】【MP自動回復Lv26】【栽培Lv3】【調教Lv9】【STR上昇Lv13】【料理Lv3】【刀剣Lv16】【生活魔法】
ユニークスキル
【時空の姫】
所持SP 38
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の祝福〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
〈時駆ける少女〉
〈蟲惑の暗殺者の弟子〉
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【跳躍】スキルは【飛躍】スキルになってさらに高く跳べるようになり、【魔力希釈】スキルはその前の【魔力隠蔽】スキルよりも強い効果になっているようです。
進化はしていない他のスキルもスキルレベルの成長と同時に強くなっているのもわかるので、いいペースですね。
このまま育っていけば、いずれあのワールドモンスター、深森のアビシルヴァも倒せるようになるでしょう!…まあそうなればいいなという感じですが。
まあそれは置いといて、【刀剣】スキルのレベルが十五を超えたことで新たな武技である〈スマッシュ〉を覚えました。
これは強力な打撃を放つ攻撃のようなので、斬撃や刺突が効きづらい相手には使うかもしれませんね。
そして最後に確認することは〈蟲惑の暗殺者の弟子〉についてですね。
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〈蟲惑の暗殺者の弟子〉
蟲惑の暗殺者の弟子となった者に与えられる称号。他の暗殺者や貴族などからの印象が良くなる。
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どうやらこの称号は自分以外の暗殺者や貴族からの印象を良くする効果を持つようなので、結構ありがたそうな効果のようです。印象が良くなるとレアそうなイベントも起きる可能性が高くなりそうですしね。