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72話 暗殺者ギルド

「暗殺者ギルド…」

「そうさ。レアには詳しく言ってなかったけど、あたしはそこの副マスターをしていてね。お前さんみたいな優秀な人材をスカウトしたり、他のメンバーでは難しそうな依頼をしたりしているのさ」


 暗殺者ギルドというものがあるのにも驚きましたが、なんとナンテさんはさらに副マスターの立場にもいるようで、これは暗殺者ギルドがあるということよりも驚きが大きいですね…


 まあ驚きはしましたが、ナンテさんの実力は今の私の腕前では計り知れませんし、副マスターなのには納得です。


「暗殺者ギルドは冒険者ギルドの本部にあるから、早速行くよ」

「あ、わかりました!」


 ナンテさんは私がテーブルに置いていた不正の証拠を全て収納の指輪に仕舞い次第、立ち上がって歩いていくのでそれに遅れないように私も慌ててついていきます。


「ところで、そこにいかなくても指輪については私が鑑定した結果を説明しますよ?」

「ああ、それなら暗殺者ギルドに着いてから聞いても良いかい?」

「わかりました!」


 私は歩いている途中で暗殺衣装からいつものゴスロリ装備に瞬時に変えた後、ナンテさんについていきながらそう声をかけるとナンテさんはそう返してきたので、私はそれに了承を返します。


「それと依頼の報告も依頼主であるあいつに話す必要があるし、ついでにあたしの弟子になったんだ。レアにも暗殺者ギルドに入ってもらおうと思ってね」

「暗殺者ギルドですか、私が入っても大丈夫なのですか?」

「もちろんさ。あたしの弟子でもあるし、依頼もしっかりとこなせているんだ。レアに対する文句はつけさせないよ」


 ナンテさんはさらにそう言葉を続けたので、私はそれに納得します。


 というか、私も暗殺者ギルドにはいることになりそうですね。まあ悪いことではないですし、レアそうなイベントにも感じるので少しだけワクワクが出てきますが!


 ということはこれからも時々依頼をこなすことになりそうですし、いつかは暗殺依頼もくる気がするので少しだけ覚悟はしておきましょうか。


「っと、着いたね」


 そこからもナンテさんの家からしばらく歩くこと数十分。目的地である冒険者ギルドの本部……の後ろ辺りに着きました。


 流石に正面からは入らないようで、ギルドの背後の裏通りからその建物に入るみたいですね。


 あ、それと道中ではクロークなどを着けてませんでしたが、人通りの少ない道を歩いてきたおかげでプレイヤーとは一切出会わなかったので全然目立たないでここまで来ることが出来ました。


「おーい、誰かいるかい!?」

「はーい、今行きますー!」


 その暗殺者ギルドの中に入り次第ナンテさんはそう声を上げると、何やら女性らしき声が返ってきたと思ったら、すぐに奥からその声の主であろう身長160cm半ば辺りである茶髪に茶目の明るそうな女性がこちらに向かってきました。


 そうそう、この裏口から入った暗殺者ギルドの内装はどうやら前に行ったことのある冒険者ギルドと少しだけ似ているようで、冒険者ギルドと比べると少しだけ狭いですが中央は広場みたいになっており、壁に置いてある掲示板のような物の一面にはたくさんの依頼のようなものが貼ってあります。


 流石に酒場のようなものはここにはないようですがテーブルと椅子が数個だけ置いてあって、そこで依頼について相談したりもするのでしょう。


 そして冒険者ギルドとは違って受付やカウンターなどはないようで、その代わりとしてこの広場の横あたりにある二階に続く階段や、手前から奥まで続いているなんらかの部屋に繋がっているであろう無数の扉などが存在しています。


「あら、ナンテさんじゃないですか!今日はどうしたんですか?」

「実はあたしの弟子がしてきた依頼について聞くのと、その依頼主に報告をするために来たのさ」

「弟子、ですか?」


 その言葉を聞いた女性はナンテさんの隣にいた私に視線を向けてきたので、私はすぐに挨拶をします。


「初めまして!ナンテさんの弟子になりました、レアと申します!よろしくお願いします!」

「君が弟子のレアちゃんね!私はルルって言うの!よろしくね!」


 ルルさんですね、覚えました!


「それと、あたしの弟子を暗殺者ギルドにも入れようと思ってね」

「そうなんですか。なら、早速登録をしますか?」

「いや、その前にまずはイザベラに依頼が済んだからこいと伝えてくれ」

「わかりました、じゃあ登録はその後ですね。では伝えてくるのでいつものところで待っていてください」

「あいよ。レアもいくよ」

「あ、わかりました」


 ナンテさんとルルさんはそんな会話をした後、ルルさんは奥にある一つの部屋に向かっていき、ナンテさんは私を連れて無数にある部屋の一つに入っていきます。


 ナンテさんと私の入った部屋はどうやら応接室のようで、中央には綺麗な焦茶色をした木目のテーブルが置いてあり、それを挟むようにこれまた綺麗な茶色をした革ソファが二つ存在しており、さらに壁付近には様々な本があるらしい本棚のようなものまであります。


「ナンテさん、さっき伝えていたイザベラさんとは、依頼を頼んできたという貴族の方なのですか?」

「ああ、そうだよ。貴族ではあるけど、あいつはそこまで堅苦しくないやつだからそこまで緊張はしなくても大丈夫だぞ」

「そうなのですね。なら少しだけ安心、ですかね…?」


 それからもソファに座って待っている間に今までは知らなかった貴族などについて色々と聞いてみたところ、どうやらこの世界には無数の国と貴族などが存在しているらしいです。


 この世界での国はかなり細かく別れているようで、それぞれ一つの都市を中心に周りのエリアがその国の領地のような仕組みになっているようです。なので大体の都市には城や大きめの屋敷などがあり、そこに都市と国を管理している王様や領主の様な偉い人がいるらしいです。


 そしてそんな国には、この迷宮都市のように数はそれぞれで違いますが少数の貴族も存在しているようで、基本的に貴族は王様や領主などと一緒に街の管理をしているようです。


 それら無数の国々に対して初期の街とその周囲のエリア、職人都市と第二の街、そして港町については自由都市となっており、どこの国にも属しておらず自由に行き来ができる領地となっているみたいなのです。


 さらに国の都市には騎士団や衛兵なども存在しており、それらが現実で言うところの警察のような仕事をしたりもしているとのことです。それに王様直々の配下である近衛騎士団などもいるようで、それらは基本王様や貴族などの重要な立場にいる者の護衛をしたりもしているとか。


 最後に、今までは知りませんでしたがさらに教えてくれた情報では、この迷宮都市ラビュラスはラベラ王国と言うようです。


 まあ国の名前については知っていても特に何か変わることはないので、そこまで覚えておく必要はそこまでないでしょうけど。


「待たせたわね」

「お、来たかい」


 そうした会話をしていると、そんな声と共に扉が開いて一人の女性がこの応接室に入ってきました。


 その女性はサラサラと流れる絹のような銀色の髪に澄んだ湖のように輝く蒼い瞳をして汚れのない白い肌をした、超がつくほどの美少女の見た目をしています。


 身長は見たところ150cm半ば辺りですかね。髪は腰までのロングで、それらを彩るように黒いキャスケット帽を深く被り、綺麗な白色シャツに黒色をした丈の短いホットパンツを着ており、動きやすそうな服装のようで活発そうなイメージを感じますね。


 貴族ではあるようですが見た限りお忍びといった印象を受けるので、護衛もいないで一人なのでしょうかね?


「あら?ナンテ、その子は?」

「ああ、紹介するね。こいつはレア、最近あたしが弟子にした子だよ」

「初めまして、私はレアと申します」

「ご丁寧にどうも。私はイザベラ・ルシェアラートと言うわ。よろしくね、レアちゃん?」


 そんな美少女へ私が挨拶を返すと、その美少女であるイザベラさんも軽く笑みを浮かべながらそう言葉を返してきました。


「じゃあ挨拶はこれくらいにして、早速取ってきた情報を渡すよ」

「お願いするわ」


 ナンテさんはイザベラさんもソファに座ったのを確認した後にそう前置きをしてから、来る前に収納の指輪に仕舞っていた不正の証拠たちをテーブルの上へと出していきます。


 イザベラさんは出された証拠たちを手に取って確認していきますが、やはりそうだったかと言わんばかりの表情をしてそれらを次々と見ていきます。


「…やっぱり、予想通りの結果ね」


 無数に書かれている証拠を一つ一つ確認しつつ、イザベラさんはそう声を漏らします。


「そうだろうね。あと、あれも伝えないとね。レア、詳しい情報を頼むよ」

「わかりました」

「あれ?」


 無数にある証拠の紙を難しそうな表情で見ていたイザベラさんは、ナンテさんのその言葉に一度顔を上げて話してくれというようにこちらに視線を送ってきたので、私は一緒に出されていた黒色の指輪を手に取り、それについての説明をします。


「…なるほど、精神支配の指輪ね」

「あたしも今聞いたが、そんなやばい効果持ちのアクセサリーだったのか」

「劣化しているようなので効果は薄れているみたいですがね。それでも危険な効果なので使われる前にこっそり取ってきましたし、これで大丈夫だとは思います」


 私の話した説明を聞いたお二人は先程よりも難しそうな表情をしますが、私の言葉を聞いてそのアイテムは今ここにあることを思い出したのか少し表情を緩めます。


「…まあとりあえずは不正の証拠も確保したし、そんな危なそうなアイテムも先に取っておくことが出来たから、これで依頼は完了でいいかい?」

「ええ、これだけあれば言いのがれは出来ないし、精神支配をしようと目論んだ証拠の指輪もこちらにある。なら、ここからは私の出番よ。あの商会は確実に潰れることでしょうね」


 イザベラさんはそう言ってその顔に自信満々の感情を浮かべ、嘲笑をこぼします。


 イザベラさんは貴族のようですし、貴族は貴族のやり方であのおじさんは裁かれることでしょう。ここからはもう、私やナンテさんの出番はないですね。


「そうかい、ならこれで依頼は終わりだね。レア、よくやったよ」

「あら、今回の依頼はナンテがやったのではなくて?」

「いや、今回は弟子のレアに頼んだのさ。あたしはもう歳だからね」


 そんなことを述べるナンテさんですが、私はその言葉にジトーっとして目でナンテさんに視線を送りつつ言葉を返します。


「いや、普通に弟子にする前に私と戦いましたよね?それに全然私では勝てそうにはないのですけど…」

「はっはっは、そんなこともあったねぇ」


 そんな言葉に私はさらにジト目になってしまいますが、ナンテさんは一切気にしていないのか笑いながら言葉を続けます。


「ということで、何か依頼があるならレアに頼むといいよ」

「そうね、ならまた頼む時はナンテだけではなくレアちゃんにも頼ませてもらうわ。あと、これを渡しておくわね」


 テーブル上に出されていた証拠の紙や指輪を収納の指輪に仕舞ってから、そう言ってイザベラさんは何やら収納の指輪から証拠の代わりのように、銀色をメインに金と黒の装飾で飾られた勲章みたいなものを手渡してきました。


「これはなんですか?」

「これは私がその人を認めたという証よ。これがあればこの街にある貴族街などにも入れるし、生半可な貴族ならこれを見せれば平伏させることが出来る物よ」


 な、なんか凄そうなアイテムを渡してきましたね…!?こんなアイテムを私が受け取っても良いのでしょうか…?


「これ、私が持っていても大丈夫なのですか…?」

「問題ないわ。レアはナンテの弟子なんだし、それで人柄も把握出来るしね」


 イザベラさんは軽く微笑みながらそのように返してきますが……うーん、それならいいのですけど……よし、断り続けるのもあれですし受け取るとしますか。


「…では、ありがたく受け取りますね」

「ええ、それとまた依頼を出すかもしれないから、その時はよろしくね?」

「はい、任せてください!」


 私は受け取ったそれを軽く確認してからインベントリに仕舞い、視線をイザベラさんへ戻します。


「それと、報酬はこれでいいかしら?」


 そしてイザベラさんは勲章の他に、何やらお金らしきものが入った袋も取り出してからナンテさんに渡し、ナンテさんはそれを確認していきます。


「…うん、これで問題ないさ」

「じゃあ、私はそろそろ行くわね。あの商会も潰さないといけないし」

「そうかい、なら入り口までは見送るよ」


 ナンテさんの確認が済み次第、イザベラさんはそう言ってからソファから立ち上がったので、私とナンテさんも同じように立ち上がって一緒に応接室を出ていきます。


「そういえば、貴族なのにここに来るまでで護衛とかはいないのですか?」


 その途中で私はふと気になったのでそう聞いてみると、イザベラさんは軽く答えてくれました。


「護衛はちゃんといるわ。この暗殺者ギルドの入り口で待たせて中に入れてないだけよ」

「なるほど、流石に護衛もなしではないですか」


 まあ当たり前ですね。こんな夜の時間に貴族の立場の少女が一人でこんな場所に来るなんて、護衛がいないと危ないとは思いますしね。


 そんなことを話しながら歩いているとすぐに入り口に着きました。


 暗殺者ギルドの扉を開けると、すぐ外にはイザベラさんの言っていた通り護衛らしき女性が立っていました。


 その女性は身長170cm半ばくらいで肩で切り揃えた赤い髪に同じく赤い瞳をして、騎士の装備らしき銀色の軽鎧をつけた見た目をしています。


「イザベラ様、終わりましたか」

「ええ、問題なく完了したわ。ではナンテにレアちゃん、また会いましょうね?」

「あいよ、またね」

「また会いましょう!」


 その女性の言葉にイザベラさんは軽い調子で言葉を返し、こちらに振り向き視線を送ってきてからそう声をかけてきたので、私とナンテさんも返事をします。


 イザベラさんはそんな私たちを軽く見てからスタスタと護衛の女性を連れて歩いていきました。


「レア、この報酬はお前さんのさ」

「いいのですか?」

「もちろん。依頼をこなしたのはお前さんだしな」

「…なら、ありがたく受け取りますね」


 歩いて去っていく二人を見送った後、ナンテさんはそう言ってこちらに先程受け取った報酬を手渡してきました。


 なので私は感謝の言葉を返してから、それを自分のインベントリに仕舞います。


『サブクエスト【不正の証拠】をクリアしました』


 そしてそのタイミングでクエストクリアのメッセージも流れました。これでやっと依頼は完了のようですね。


「…さて、依頼もこれで全て完了したし、レアの暗殺者ギルドへの登録をするか」

「わかりました」


 ナンテさんのその言葉に、私たちは再び暗殺者ギルドの中に戻っていきます。


「ルル!いるかい!」

「はーい、いますよ〜」


 そして最初に来た時と同じようにナンテさんがそのように声を上げると、再びルルさんが一つの部屋から出てこちらに向かってきたので、ナンテさんはさらに言葉を続けます。


「今から暗殺者ギルドの登録をするから、頼むよ」

「任せてください!じゃあレアちゃん、一緒に来てもらってもいいかな?」

「はい!」


 私はそのように言葉を返し、ルルさんはじゃあついてきて!と言ってそのまま歩いて行くので、私もそれに倣ってついて行きます。


 そんな私の後ろにはナンテさんもついてきていますが、ナンテさんは何かやるわけではないのでそこまで気にする必要はなさそうですね。


 そしてルルさんの案内に従ってイザベラさんと話していた応接室とは違う部屋に入ると、そこはどうやらこぢんまりとした空間となっており、中央には小さなテーブルがありその上には丸い水晶のような物が置かれています。


 その他には特に何も置かれていないようですが、水晶のみが置いてあるからかなんとなく占い屋さんのようにも感じますね。


 それと部屋自体が少しだけ小さめでこぢんまりとしていますが、私たち三人くらいならそこまで狭くも感じません。

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