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70話 予定

「そういえば、あっちの方でも銃はあるんでしょ?」


 軽い乱闘のせいでHPが少し減っているルミナリアは注文した料理である焼き鳥を食べながらそう聞いてきたので、私は口に入っていたポテトを飲み込んでからそれに答えます。


「…そうですね。私も使ってますし、ちゃんとありますよ。それにスキルというものがあるおかげで大抵の武器はあるとは思いますね」

「ふーん、そうなんだね」

「ルミナリアは銃しか使えないし、なかったら多分やることはなかっただろうな」


 私のスキルの説明には特に関心はないのか、ルミナリアは軽く焼き鳥をつまみながら聞き流していますが、少しは銃以外にも興味を持って欲しいですね…


 このゲーム内でのルミナリアは二丁の拳銃がメインですが、他にも銃ならば多種多様に使いこなせるので銃の腕前に関しては私と並ぶくらいはあるとは感じます。…まあその分近接戦闘についてはハッキリ言ってしまえば弱いので、クロガネの言う通り銃がなければゲームをすることすらしなかったでしょうね。


「初期の街では新しい銃は買えないようなので、結構不遇扱いはされていますけど……ルミナリアなら私と同じで多分大丈夫でしょうね」


 ルミナリアの銃の腕前は十分すぎるので最初は初期の拳銃でも大丈夫だとは思いますが、一応それについては説明しておきます。


「なるほど、不遇かぁ……」

「しかもスキルだけではなくユニーク装備やユニークスキルなんてものもあちらにはあるので、こちらとは結構違うので軽く確認はしておくと良いですよ」

「オッケー、じゃあログアウトしたら適当に見ておくね!」

「…うーん、なんだか心配ですね…」

「まあルミナリアなら問題ないだろ」

「そうだといいのですけど…」


 私はジトーっとした目でルミナリアを見つめますが、それを気にも留めないで焼き鳥をパクパクと食べながらニコニコしています。


 …まあ、そこまで堅苦しく調べろというわけではないですし、クロガネの言う通りあまり気にしなくても良いですかね。


「…話はこれで終わりだな?なら、今度は俺とPVPをやらないか?」

「いいですよ!時間もまだ大丈夫ですし、早速やりましょうか!」

「レア、こんなやつギタギタにしちゃえ!」

「あ?お前から先に倒してやろうか?」

「なに、やる気?」

「もう、二人とも!そこまでですよ!クロガネは私とやるんでしょう?ルミナリアもいちいち噛みつかないように!」


 ルミナリアとクロガネがまたもやばちばちに視線を交わし始めたので、私はそう言って一度二人を抑えます。


「…はぁ、まあいいか。じゃあレア、早速やろうか」

「わかりました!」




 そうしてそこからクロガネとも戦い、その後は私が久々に来たのを確認してやってきた他のトッププレイヤー達とも戦いを続け、気づいたら時間が七時近くになってきていたのでログアウトをして現実世界に戻って来ました。


「さて、夜ご飯の支度は出来てますし、とりあえずリビングに降りて兄様を待つとしますか」


 私はログアウト後にしっかりとストレッチをした後、そう呟きつつ自分の部屋から出てリビングに降りて行きます。


 リビングに入るとまだ兄様は来ていないようなので、私はそのまま椅子に座ってMSOについての情報を確認していきます。


「見た限り、特に新しい情報はなさそうですね」


 今日はログインしてませんでしたが、一日くらいなら特に状況に変化はないようです。


 それと今日はもうゲームをしないで勉強でもしてようと思いますが、明日にはナンテさんから頼みたいと言われていた依頼を受けてそちらを進めるとしましょうか。


「…お、美幸はもう降りてきてたんだな」

「あ、兄様!」


 そんな風に考えつつスマホで情報を見ていると、そのような言葉と共にリビングに兄様が入ってきました。


 兄様も来ましたし、作り置きをしていたオムライスを出して温めますか。


「今ご飯の用意をしますね!」

「わかった」


 私は椅子から立ち上がって冷蔵庫に仕舞っていたオムライスを取り出し、レンジで温め始めます。


「今日はバレットフェスタオンラインにログインすると言ってたが、どうだったんだ?」

「前と同じようにたくさんPVPをしたくらいですね!それとそのゲーム内のフレンドもどうやら第二陣としてゲームを持っていたようなので、今度あちらの世界の紹介ついでに一緒にやろうと決めたのです!」


 ご飯を温めている少しの間に兄様からそう聞かれたので、私はゲーム内のことを軽く喋ります。


「学校だけではなくゲーム内のフレンドもあのゲームを持っているなんて、よくもまあそんなに出会えるものだな?」

「あはは……それは私も思いますね」


 それを聞いた兄様は少しだけ呆れたような表情でこちらを見つめてきますが、私はそれに対して苦笑を浮かべながら言葉を返します。


 兄様の言う通り、私の知り合いは持っている人が多いようなのでちょっと自分でも驚きが大きいです。


 ですが、それは私のせいではないですし知り合いと一緒にゲームを出来るのは嬉しいのでそこは気にしないでおきましょう。


「あ、温め終わったようです」

「お、もうか」


 そんな会話をしているとレンジの完了の音が聞こえ、終わったようなのでテーブルに置いて準備は終わりました。


「では、いただきましょうか」

「そうだな、いただきます」


 そう言って私たちはご飯を食べ始めます。今回のオムライスは作り置きなのでフワトロではないですが、上手い感じに美味しく出来ているのでなかなか良さげです!


「美幸はまた後でゲームをするのか?」


 オムライスをパクパク食べている最中に兄様からそう聞かれたので、私は一度手を止めて答えます。


「いえ、今日の残り時間は勉強でもしてようとかと思ってます」

「そうか、ならMSOに来るのはまた明日か?」

「ですね。明日はゲーム内の予定があるので、そちらを済ませてくる予定です」


 明日はナンテさんの依頼をやろうと思っているので、一応の予定は決まっています。


 兄様パーティとの狩りや悠斗パーティとダンジョン攻略なども空いた日に行く予定ですが、早めにやらないといけないことはナンテさんの依頼くらいですし、明日のうちに終わればすぐに行けるとは思うので大丈夫でしょう。


「多分明日以降なら大丈夫だとは思うので、明日の夜にでも一緒に出来る日を伝えますね!」

「わかった。ならそれまでは待っているな」


 そこからもご飯を食べつつ、MSOについての会話を続けます。


「そういえば私、解放されている港町にはまだ行っていないのですよね」

「そうかのか?まああそこのエリアボスはそこまで強くもないし、美幸くらいの実力なら一人でも行けるとは思うぞ」

「そうなんですか?じゃあまた時間がある時にでも行ってみます!」


 港町なら色々な魚と海があるでしょうし、あちらの世界での海はまだ見たことがないので今からもう楽しみです!


 それに多分私のテイムモンスターであるクリアも海は見たことがないでしょうし、そちらの反応も気になりますね!


 そんな会話をしているといつのまにかオムライスを食べ終わっていたので、私と兄様は流しに使った食器を置いた後に兄様は洗い物を、私はそのまま着替えを持って洗濯とお風呂に向かいます。


 そうしてやることを全て終わらせた私は自分の部屋に戻り、そのまま寝るまでは勉強に励み、寝る時間の九時になり次第就寝とします。




 窓から入ってくる日差しで目が覚めました。おはようございます、木曜日です。今日もいつも通りの時間なので、早速学校の支度を済ませてきますか。


 そこからはいつもと同じように諸々を済ませた後に、こちらもいつものメンバーで学校に向かい、それぞれの教室に着きました。


 そして午前中の授業もつつがなく終わってお昼の時間です。私はお弁当を鞄から取り出して悠斗がこちらに来るのを待ってから、一緒に食べ始めます。


「美幸は今日は何か予定はあるのか?」


 お弁当を食べている最中に、悠斗からそう聞かれました。


 予定というのは、まず間違いなくMSOについてでしょう。


 今日の予定はナンテさんの依頼をする予定ではありますが、暗殺者のことは言えないので、少しだけ濁しながらですが私はそれに答えます。


「今日はゲーム内での予定はありますね」

「そうか……なら、来週なら空いてるか?」

「多分大丈夫だとは思います。兄様との狩りの予定も入ってはいるのですが、それはおそらく今週中には終わると思うので」

「じゃあ来週のどこかで前に言っていたダンジョン攻略を一緒にしないか?」

「いいですよ!楽しみに待っていますね!」

「ああ。じゃあ細かい日数と時間については俺のパーティメンバーにも聞いておくから、また近くなったらで」

「了解です!」


 今約束した悠斗や兄様以外にも、いつ来るかはわかりませんがルミナリアとの約束もしているので、そちらもする予定なので意外と予定が出来ましたね!


 まあ悠斗との予定はそこそこ先ですし、今週いっぱいで学校は夏休みとなって長期休暇となるおかげで時間もたくさんあるので、特に問題はないでしょうが。


 それにダンジョンにはまだ入ったことがないので、今からもうワクワクですね!


 お弁当を食べ終わった後もそんな会話をしていると、いつのまにか終わりの時間になっていたようでチャイムの音が鳴り響きました。


 それを聞いた悠斗は自分の席へと戻っていったので、私も準備をして午後の授業に備えます。




 そして午後の授業も終わっていつも通りに悠斗と兄様を含めた三人で帰路に就き、無事に家に着いたので私は先に夜ご飯の支度を済ませます。


「今の時刻は……ちょうど五時ですね」


 そうして軽く片付けをしつつ時計を確認すると、すでにそんな時刻になっていました。


「ゲームをする時間は結構ありますし、早速ゲームとしましょうか!」


 私は鼻歌を歌いながら機嫌良く自分の部屋に戻り、置いてあるヘッドギアを頭につけて一日ぶりのMSOにログインをします。




「ここは……確かナンテさんの家の特訓場でしたっけ」


 視界が変わり、気づいたら私はかなりの広さを誇る草の生えた地面と黒い壁で仕切られた場所の中心付近で立っていました。


「とりあえず、ナンテさんのところに向かいますか」


 私はそう決めた後、この場から移動して前にここへ来た時の道を歩いていきます。


 その道中では特に目立つこともなく、歩きながら【気配感知】スキルと【魔力感知】スキルを使用していると、スキルに反応が出たのでそちらに向かっていき、そして一つの部屋の前に着きました。


 私は部屋の扉を躊躇いなく開け、中に入っていきます。


 中に入って軽く見た感じ、どうやらこの部屋は前に入ったことのある応接室みたいな部屋と似た雰囲気のようで、ナンテさんはその中に置いてあった黒い椅子に座りながら何やら手紙のようなものを読んでいるところでした。


「おや、レアか。一日ぶりだね」

「こんにちは、ナンテさん」


 私はナンテさんに軽く挨拶をした後、続けて声を発します。


「ナンテさん、前にナンテさんが言っていた依頼を出来そうなので受けに来たのですけど…」

「お、もう大丈夫なのかい?」

「はい。なので依頼についても聞いてもいいですか?」

「わかった、ならちょうどいいし、今から依頼の説明をするね」


 ナンテさんは手に取っていた手紙をそばにあったこれまた黒いテーブルの上に一度置き、依頼について説明を開始してくれます。


「まず今回の依頼なんだが、実は暗殺系の仕事ではないんだ」

「そうなのですか?」

「ああ、それでも表で出来ない仕事ではあるから、重要な依頼だけどね」


 ナンテさんから頼まれる依頼は暗殺者ということでしたので暗殺系だけだと思ってましたが、それ以外のものもあるのですね?


 暗殺ではないということですし、ちょっと覚悟していたのとは違う依頼ですが上手く出来るでしょうか?


 まあそれについてはまず依頼について聞いてから考えるとしましょうか。


「依頼内容は、この迷宮都市にあるとある悪徳商人の商会から不正の証拠を見つけてきて欲しい、というものだね」

「なるほど、要するにスパイのようなものですか」

「その解釈で間違いないね。で、受けてくれるかい?」


 ナンテさんは真剣な表情でこちらを見つめてくるので、私も気を引き締めつつナンテさんに視線を返しながらそれに答えます。


「わかりました。その依頼、受けようと思います」

「よし、じゃあお願いするね。あ、それとその潜入に使うための装備も渡しておくよ」

「装備ですか?」

「もちろんさ。お前さん、まさかその姿のまま行こうと思ってないだろうね?」


 私はその言葉を聞いて、目をぱちくりさせながら自分の今の姿を確認します。


 今の私の姿は、黒薔薇のついた髪飾りにフリルやベールがたくさんついた黒色のゴスロリドレス、そして同じくフリルのついた漆黒のブーツの姿です。


「…流石にこの装備では目立ちますね」

「それに明らかに一点物だし、もし見つかったらすぐに特定もされてしまうだろうから、こちらで用意した装備に変えた方がいいのさ」


 確かに、ナンテさんの言葉通り装備は変えた方が良いですね。暗殺者の時の姿が今とは違う見た目なら私と気づかれることもないでしょうし、ナンテさんの用意してくれたという装備に変えるとしましょうか。


 ちょっとどんな見た目の装備か少しだけ不安になりますが、ナンテさんなら変なのは用意はしていないとは思うので多分大丈夫でしょう。


「じゃあ、これがその暗殺者衣装だよ」


 そう言って収納の指輪からナンテさんが取り出したのは、ピチッとした肌に吸い付くような露出の一切ない漆黒色をしたボディスーツに、同じく漆黒をした私の膝あたりまでの長さがあるフード付きのクロークの二つでした。


 見た限りこのボディスーツには肌の見えるところはなく、細かい飾りのようなものも結構あるので、思ったよりもとてもオシャレでなかなかいい感じです!


 それと黒いクロークに対しては、前に壊れるまで使っていた漆黒色をしたクロークと同じような形と見た目、大きさのようなのでそこまで違いはありませんが、見た目からは前のよりもさらに頑丈そうに見えるので、こちらも良さそうです!


「あ、それとこの髪飾りも使いな。これならそのとても目立つ白髪も隠せるからね」


 そう言って何やらもう一つ収納の指輪から取り出し、その手に持つ髪飾りを私に渡してきました。


 その髪飾りはどうやら黒色をメインに、アクセントとして紫の水晶のような飾りが付いた蝶の髪飾りのようです。


 これはまた、芸術品のような綺麗さで素敵ですね!

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