7話 木綿と合流
ログインして周りを確認すると、そこは昨日ログアウトした場所である路地裏のお店の前でした。
周りを確認していると、ふとピコーンッと音がしました。確認すると、フレンドであるレーナさんからのメッセージが届いていたようです。その内容を見ると、どうやら革防具が出来ているようでいつでも取りに来て良いと書いてありました。
なので、私はログインして早々に取りに行こうと思います。ついでに、レーナさんのお店へ向かう途中でクオンへメッセージを送っておきます。内容はレーナさんの革防具が出来たみたいなので先に行って受け取っています、と書きました。
クオンへメッセージを送り終わって、しばらく歩いていると、レーナさんのお店が見えてきました。
「レーナさん、いますか?」
「は〜い、ちょっとまってね〜」
そして着いたので店内へ入って、店員さんもいなかったのでカウンターの奥へと声を掛けると、そんな返答が返ってきました。
朝早いからか、この時間には中の人はほとんど居ませんでした。そんな中で私は来るのを少しだけ待ってると、意外と早くレーナさんが奥から出てきました。
「おまたせ〜、おお、レアちゃん〜!」
「こんにちは、レーナさん」
レーナさんの言葉に、私はそう挨拶を返します。
「革防具を取りに来たの〜?」
「はい、今大丈夫でしたか?」
「全然大丈夫よ〜、まってて、ちょっと取ってくるから〜」
レーナさんはそう言ってカウンターの奥へと向かっていきます。そしてしばらくすると、一つの革防具と革製だろうベルトを手に取って戻ってきました。
「おまたせ〜、これがブラウンベアーの皮を使った胸当てよ〜。それと皮が少しだけ余ったから、サービスのベルトもあるわ〜」
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革の胸当て ランク F レア度 一般品
DEF+4
MND+2
耐久度 100%
ブラウンベアーの皮を使って作られた革の胸当て。
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革のベルト ランク F レア度 一般品
DEF+2
MND+1
耐久度 100%
ブラウンベアーの皮を使って作られた革のベルト。
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初期装備とは比べ物にならないくらいの強さですね!見た目はそのまんま、茶色の胸当てとベルトって感じです。私は早速装備欄からこの二つを選んで装備します。
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装備欄
右手 無垢の魔銃
左手 無垢の魔銃
頭 なし
胴 革の胸当て
手 なし
脚 初心者の半ズボン
足 初心者の靴
アクセ1 ???
アクセ2 革のベルト
アクセ3
アクセ4
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装備してみると、こんな感じになりました。装備欄でもこの時計の情報はわからないのですね…
ちなみに、胴の装備である革の胸当ては、初心者の服の上から着ている感じです。
「レーナさん、装備ありがとうございます!」
「いいのよ〜、またこれからもご贔屓にしてくれると嬉しいわ〜」
私はそう感謝すると、そのように返ってきました。もちろん、贔屓にさせていただきますとも!
「そういえば、皮は狩りで手に入りますが、洋服などの材料はどこで手に入るのでしょうか?」
ふと気になったことを、私はレーナさんへ聞きます。レーナさんのお店には、まだ少ないですが洋服やローブなどが置いてあるのです。その材料を持ってくれば、私もオシャレな服をゲット出来ると思ったのでそう問いかけました。
「洋服とかの材料は木綿だね〜、確かこの街から南の平原に生えてるわよ〜」
そうなのですね。じゃあ、お昼まではそこで木綿の確保と武器の確認をしましょうか。
私たちがそう話していると、お店の扉が開いてクオンもやってきました。
「クオンですか」
「おう、今さっきログインしてメッセージを見たから俺も来たんだ」
「クオンくんもこんにちは〜」
「レーナもこんにちは。とりあえず、俺の防具も受け取れるか?」
「もちろんよ〜、取ってくるわね〜」
そう言ってレーナさんは再びカウンターの奥へ向かいます。すると、そのタイミングでクオンは私へと何やら話しかけてきました。
「この後は、レアはどうするんだ?」
「私は木綿の確保と、新しく買った武器の確認をしようと思っています」
「武器、売っていたんだな?確か初期では入手出来なかったはずだが…」
「フフーン、実はこんな物が売っていたのですよ!」
私の言葉に気になっていそうな表情をしているクオンへ、私はドヤ顔で武器の情報を説明します。
「そんな凄い物が売っていたんだな……俺も欲しいな」
「東の大通りの路地裏の奥の奥でやっているお店で買えましたが、今はもう買いに行けるかは分かりませんね」
「そうなのか……残念だ」
クオンが残念そうにそう言葉を漏らしていると、カウンターの奥からレーナさんが私に渡してきた物と同じ物を持って戻って来ました。
「はいこれ、レアちゃんと同じ物よ〜」
「お、ありがとう」
レーナさんはそう言ってクオンへ革の胸当てとベルトを渡します。レーナさんに言葉を返し、クオンは貰った装備をササっと装備します。
「じゃあ俺は今度は北で鉱石を採掘してくるわ」
「それは武器とかに使うためですか?」
「ああ、フレンドの鍛冶屋にも頼まれているし、そのついでだな」
「では私は、さっき言ってた木綿を手に入れるため南へ向かいます」
「気をつけてな」
「はい、クオンもですよ」
「いってらっしゃい〜」
レーナさんに見送られ、私たちは別れて目的地へと向かいます。
「よし、まずは銃の確認からしますか」
南の平原に着いた私は、まずインベントリから2丁の無垢の魔銃を取り出して確認をします。今は休みとはいえ朝の早い時間なので、周りにほとんど人はいないので自由に試せます。
「見た感じ、説明に書いてあった通り弾丸を入れる場所はなさそうですね…」
リロードがなくなる、と書いてありましたしね。ということは弾薬切れなどもないでしょうし、なかなか使いやすそうではあります。
「次は、試し撃ちをしましょう」
そう思い、私は南の平原に居る兎たちへ視線を送ります。そしてそのまま兎へと右手の長銃の銃口を向け、引き金を引きます。すると、灰色の魔力で出来た半物質の弾丸が放たれ、兎の頭へと命中してポリゴンになります。
「使った感じ、普通の銃とはほとんど変わらないですね。」
変わったのは、弾丸が魔力になったのと弾切れがなくなったことだけですね。私的には弾丸のリロードと弾を買わなくて済むようになったので初期装備などと比べるとやはり使いやすい気がしますね。
ゲームを始めたばかりですし、弾丸が魔力になるという効果は今のところ大した効果がないように思いますが。
それに現実のマスケット銃は命中率が悪いらしいですが、どうやらこの武器ではそんなこともないようです。
「それと、武技も試してみますか」
武器の性能の確認を済ませた私は、そのまま今度は別の兎へと照準を定め、武技を発動します。
「〈パワーショット〉!」
その声と同時に武技が放たれ、兎の頭へと弾丸が命中した瞬間、赤いポリゴンを撒き散らしながら兎の頭が破裂しました。うわぁ、なかなかグロテスクな状態ですね…
現実よりもデフォルメされているようですが、かなりヤバい状況です。ちょっと兎へは過剰すぎる攻撃だったみたいですね…
そう考えていると、破裂した兎の体がポリゴンとなって消えていきました。
それとMPも少し消費するようで、今の私のMP量では一度使うのに二割程使うみたいです。それにリキャストタイムが三十秒あって連発も出来ないみたいですが。
「試したいものは終わりましたし、早速木綿を採取してきますか!」
そして2丁の銃をインベントリに仕舞い、私は歩き始めます。
少し歩いていると、木綿の生息地らしき場所が見えて来たので、サクサクと回収していきます。
「ふう、このくらいあれば良さそうですかね?」
インベントリを見ると、だいたい三キロくらいの量を採取していたみたいです。無心でやっていたからか、気づいたら辺りにはもう成長しきっていない木綿しかありませんでした。成熟してないのは材料にならないので、そのままです。
そしてメニューを開いて今の時間を見ると、まだ十時くらいです。
「時間もまだありますし、森へ狩りに行きますか」
そう呟き、私は街へ戻ってから東方面へと移動します。あ、その前に冒険者ギルドで依頼を受けてから行きましょう。
ギルドで討伐依頼を受けてから森へ向かいます。今回は兎を狩らないで急いで来たので、十五分くらいで森に着きました。
「では、狩りといきましょう!」
インベントリからいつでも銃を出せるようにセットして、私は森の中を歩き始めます。
そうそう、このゲームでは武器欄にセットした武器はいつでも思考することですぐに手元に呼び出すことが出来るようなので、わざわざ出したままでなくても問題ないみたいです。
戻す時は同じように、仕舞うと思考することで戻せます。ちなみに、他人の武器などにはこれは使えません。まあ当然ですね。
そんな思考をしつつ歩いていると、早速【気配察知】のスキルに反応があります。【気配察知】の初期は自身の周囲と少しくらいまでの範囲でしたが、レベルが上がったお陰で、少し遠めの場所までなら察知することが出来るようになっています。まあそれでもまだ狭い範囲といえますけど。
【気配察知】に反応したのは、狼の群れでした。気配で確認する限り、全部で五匹います。どうやら風下にいるお陰か、こちらにはまだ気づいていないようです。なら、先手必勝です。
私は2丁の銃をインベントリから取り出し、右手の長銃で覚えたての〈パワーショット〉を群れのボスらしき、他の個体よりも大きめな狼の頭へと撃ち込みます。そのボス狼は頭へと弾丸を受けてHPが零になり、地面に倒れてポリゴンとなります。兎に使った時と違って頭は破裂しなかったですね。
突如飛んできた攻撃で群れのボスを失った狼たちは、突然のことに動揺しています。私はその隙を見逃さず、両手の銃を乱射して狼の群れを倒しました。
「やっぱり、初期の武器とは違って結構な攻撃力ですね」
狼の群れの何匹かは、試しに頭ではなく体に何発か撃ってみました。その狼はそれでも倒せたので、この銃の強さを改めて実感します。それに【気配察知】のスキルのレベルが上がったお陰で、先に発見出来るので見つかりもせずに不意打ちで群れを討伐出来ました。凄い便利なスキルですね!
そうして【気配察知】に反応した蛇やら鹿やらを狩りつつ移動していると、今度は熊が【気配察知】に反応します。音を出さないように歩きその地点へ向かうと、熊が食事中でした。熊が食べているのは、琥珀色で粘り気のある液体から察するに蜂蜜でしょうか。ここの森では蜂蜜も取れるのですね。
食べるのに夢中になっているらしい熊の後ろへ周り、頭に銃口を向けて武技を使用します。
「〈パワーショット〉!」
熊へと向けて撃った弾丸は、躱されずにそのまま熊の後頭部に着弾し、撃たれた熊はその衝撃で反対側へ倒れてポリゴンとなりました。
『【気配隠蔽】スキルを獲得しました』
熊を倒すと、そんなシステムの音が聞こえました。確認すると、新しく【気配隠蔽】のスキルが増えていました。これは文字通り、自身の気配を気づかせにくくするスキルのようです。便利そうなので、これは街中以外では常に使ってレベルを上げときましょう。
「それにしてもこの武技、やっぱり強力ですね…」
先ほど熊へとダメージを与えた自身の武技について思います。序盤に使える武技としては使いやすく強いので、なかなか便利ですね。まあMPをそこそこ消費するうえ、普通に撃つよりは弾速が少し遅いので、対人や不意打ち意外で使うのには向かなそうです。
私がそう確認していると、甘い匂いが漂ってきます。そちらを見ると、さっきまで熊がいた場所に蜂の巣がありました。どうやらそこから匂いが漏れていたようです。ちょうどいいですし、インベントリへ蜂の巣を回収しますか。
そして回収後にインベントリ内を見ると、蜂蜜が十五個分瓶に入って収納されているのがわかりました。瓶はどこから出たのでしょうか…?まあ気にしても仕方ないですね。
私はそのままさらに一時間ほど狩りをして、素材をたくさん手に入れます。昨日は倒しづらかった猪も、この武器なら楽に倒せました。銃弾の量を気にしなくてもよいですしね。
そしてそろそろかなとメニューを見て時間を確認すると、今は十一時半くらいでした。
「いい時間ですし、街へ戻ってログアウトしますか」
そう呟き、私は森から街へと走ります。道すがらに生えてある薬草などを採取はしますが、狼や蛇などは【気配察知】などで先に把握して、回避しつつ移動します。
そうして二十分くらいで東門へ到着しました。そこで一度ログアウトして、私のアバターは一瞬にして消えます。
一度現実世界へ戻って作り置きしていたオムレツを食べ、お手洗いなどすることを済ませた私はまたもやゲームへとログインしました。
ログインして時間を確認すると、十二時半くらいでした。
「集まる時間まではまだありますし、ギルドで素材などを売りに行ってから行きますか。」
そう考えて、私は東門のあたりから冒険者ギルドへ向かいます。そして着いたので中に入り、まずは依頼の報告をします。次に、買取受付でさっき狩ってきた素材たちを売り払います。薬草など、錬金で使ったりしそうな素材は売りませんが、それ以外の諸々で20,000Gくらいになりました。思った通り、討伐依頼なども一緒に受ければかなり儲かりますね。
ちなみに、討伐依頼は討伐の証としてわかる素材などを見せて渡せば完了となる仕組みです。
それだと自分たちの儲けが減るんじゃないか、という疑問もあると思いますが、渡した素材とは別として依頼報酬などがあるので、普通に買取してもらうのと、あまり違う金額になることはないので問題はないのです。ですが素材は無くなってしまうので、素材が欲しい人はこの依頼はしないほうが良さそうです。
「やることは済ませましたし、広場へ向かいますか」
お金を貰い、ギルドを出て中央の広場へ向かいます。そして広場に着いたので、道中の屋台で買ってきた串焼き肉を食べて満腹度を回復させつつ、時間までステータスを確認します。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【銃Lv11】【鑑定Lv5】【錬金Lv6】【採取Lv9】【気配察知Lv10】【忍び足Lv10】【遠視Lv10】【ATK上昇Lv9【AGI上昇Lv9】【DEX上昇Lv9】【体術Lv6】【気配隠蔽Lv5】
所持SP 4
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十を超えたスキルが出てきたので、SPが四も増えました。
SPとは、ポイントを消費して新たなスキルを入手できるものです。スキルは昨日のクオンとの森での狩りの時のようにそれに合った行動でも入手は出来ますが、SPを使えばその過程を飛ばしてスキルを得て使用できるようになるので、結構便利なシステムなのです。
それともう一つ、スキルの進化にもSPを二つ使うらしいのです。らしい、というのはネットで調べた時に見た情報だからです。なので、SPは無駄遣いしないで貯めておきましょう。
そしてさらに【銃】のスキルがレベル10に達したので、武技の〈クイックバレット〉を覚えました。この武技は弾丸を高速で飛ばす技らしく、説明を見た感じでは、〈パワーショット〉と同じく使いやすそうですね。
「ねえねえ、今暇?」
私が確認をしていると、横から突然話しかけられました。そちらを見ると、そこには違和感のある顔をした男性が3人立っていました。
「人を待っているので、暇ではないです」
「そんな待たせるやつなんて放っておいて俺たちと遊ぼうぜ?」
「そうそう、俺たちベータテスターだから色々と教えてあげれるよ?」
「俺たちはそこらのやつとは違うからなぁ?」
私がそう返答を返すと、そんなことを言って来ました。これはいわゆるナンパというやつですかね?今までは兄様やクオンが側にいたからされませんでしたが、初めて見ました!でもこういうのはどう言ったらいなくなってくれますかね…?
「おい、なにをしている?」
悩んでいると、今度はその男性たちの背後からそんな聞き覚えのある声が聞こえました。
「あ?お前らは関係ないだろ」
「いや、関係あるね。俺たちはそこの子と会う約束をしていたんでね」
チラッと男性たちの背後を見ると、そこには兄様と、二人の男性と女性たちがいました。
「チッ、もういいわ、行こうぜ」
「ああ」
「邪魔すんなよな…」
ナンパ三人衆は人数差で怯んだのか、そう愚痴を漏らしつつ去っていきました。
「兄様、ありがとうございます。どうしたら良いかわからなかったのですよね…」
「いや、ナンパされているのを見てついな」
兄様はそんな私の反応に苦笑しつつ、そう言葉を返してきます。
「まあともかく、お互いに紹介しようか。俺はこっちではゼロと名乗っている」
玲二だからゼロですね。いつも通りの名前です。兄様のアバターの容姿は黒髪金眼のようで、身長と髪型も合わせてリアルと同じにしてあり、種族はクオンと同じで人間のようです。
「はいはい!俺はセント!よろしく!」
さっぱりとした茶色の短髪に青目で身長170cm半ばくらいのチャラそうな人間の男性がセントさん。
「ジンだ。よろしく」
刈り上げた黒髪に紅目で身長180cmはいってそうな、強面に褐色肌で短めの角が額の横から一対伸びている種族、鬼人の姿で硬派そうな男性がジンさん。
「私はマーシャ、よろしくね?」
腰まである金髪に青目で身長160cm前半くらいの、白い肌で長い耳をした正統派エルフの見た目の大人っぽい女性がマーシャさん。
「あたしはサレナっていうの!よろしく!」
ボブカットの紅髪に緑目で狐の耳と尻尾の生えている身長150cm後半くらいの狐獣人の明るめな女性がサレナさん。
ゼロ、セントさん、ジンさん、マーシャさん、サレナさんですね。覚えました!それと皆さん初期装備で、その上から革の胸当てなどを付けています。
「私は兄様の妹のレアと申します。よろしくお願いします!」
私はペコリと頭を下げ、そう挨拶をします。