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64話 VSクオン1

「美幸、試合は今日するって言ってたが、時間は五時くらいで大丈夫そうか?」


 そして学校に着いてから、悠人は一限目の授業が始まるまでの間にそう問いかけてきたので、私はそれに答えます。


「五時くらいであれば夜ご飯の作り置きも済んでいるでしょうし、問題ありません」

「了解、ならその時間でやろうな。あ、集合場所については初期の街の広場でいいか?」

「そちらも特に問題ないので、大丈夫です」


 じゃあそこでだな、と悠斗は続けて言って、そのタイミングでチャイムも鳴ったので悠斗は会話もそこそこに自分の席へと戻っていきました。


 まずは午前の授業ですし、張り切って乗り切りましょう!




「…よし、お昼ですね!」


 そうして午前中の授業もチャイムが鳴り、終わりとなりました。


「美幸、一緒に食べようぜ」

「いいですよ!」


 自分の席からこちらに移動してきた悠斗の言葉に返事を返し、私たちはお弁当を食べ始めます。


「MSOについてだが、最近どうだ?」

「そうですね、特に目立ったことといえばユニーククエストや兄様との特訓くらいでしょうか」

「…またユニーククエストか。本当に美幸は起こることが多いんだな」


 私がそう返すと、悠斗はジトーっとして目で見ながらもそんな風に答えてきました。


「で、でも兄様もユニーククエストが出てたみたいですし、そこまで多くはないですよ!」


 兄様はユニークスキルの時のお師匠様からで、私は特殊な本からでしたしね、とも続けて言葉にします。


「そうなのか。やっぱり、ユニークスキル持ちは基本的にユニーククエストなどが出たりするもんなんだな」

「どうなんでしょうかね?私たちは出てましたが、カムイさんやアリスさんなども、もしかしたら出たりしているのかもしれませんね」


 悠斗もゲーマーですし、そういうものは欲しいようで私を羨ましそうな表情で見つめてきます。そ、そんな目で見られても私は何も出来ませんよ…!


 まあユニーククエストは特殊なスキルを持ってなくても出るでしょうし、いつか悠斗にも出ると良いですね!


「まあそれはいいとして……今日はゲーム内で試合をするが、俺も本気で挑むからそっちもユニークスキルもありで全力で頼む」

「任せてください!悠斗なんてコテンパンにしてあげますよ!」

「お、言ったな?ならその自信を打ち壊してやるからな!」


 私たちはそんな会話をした後も、MSOについてのたわいない会話を続けます。


「そういえば、北の山のエリアボスも倒されて次のエリアが開放されていたようですよ」

「そうなのか?」

「はい。北の山の洞窟を抜けるとそこは高原のエリアになっているようで、その洞窟でのエリアボスはどうやらゴーレムみたいです」


 朝にスマホで見た情報ではストーンゴーレムと書いてありましたし、私は一度見たことがあるうえに魔法武器でもあるので一人でもおそらくは余裕でしょう。まあ一人で行くとしても油断はしませんし、今日は悠斗との試合をするので早くても明日でしょうけどね。


「その情報はまだ見てなかったな。教えてくれてありがとう」

「いえいえ、いつもは悠斗から教えてもらってますし、このくらいは大丈夫ですよ」


 私は軽く笑いながらそう答え、そのまま続けて高原のモンスターについても口にします。


「それとその高原にいるモンスターは牛や羊、犬に虎のようです」

「高原は獣系が主か。ドロップアイテムについては書いてあったか?」

「それはなかったです。まあそれでも牛と羊なら肉を落とすでしょうし、私は他の素材よりもそちらが気になりますね!」


 ステーキにジンギスカン、牛カツ……あ、タレも作れるのならすき焼きも出来るでしょうか?うーん、夢が広がります!


 それにゲーム内ならいくら食べても太りませんし、食欲のままに食べても大丈夫ですしね!


 そんな妄想をしている私を苦笑しつつ見ている悠斗に気がつき、私は頬を少しだけ染めつつもコホンと咳払いをして話題を変えます。


「…ゆ、悠斗はもう迷宮都市までは行ったのですか?」

「ああ、俺もテスト後の土曜日に皆で行ってきたんだ。そう言うってことは美幸も行ったのか?」

「はい、私は日曜日に兄様たちと行ってきました」

「美幸も行ってたのなら、また今度俺とパーティメンバーの皆でそこの街のダンジョンに行かないか?」

「もちろんいいですよ!じゃあ皆の時間が出来た時に行きましょう!」


 悠斗がそんな風に問いかけてきたので、私は当然のように行くと答えます。ダンジョンについては、兄様から聞いた限り一人でも大丈夫そうなところもあるようですが、安全をとるなら悠斗や兄様とパーティを組んでいくのがよさそうですしね。


「決まりだな。なら俺のパーティメンバーにも次会う時に聞いてみて、時間が良い時を今度伝えるな」

「わかりました」


 流石にすぐではないですが、私も少しは準備をしておいた方が良さそうですね?


 そうした会話をしているといつのまにかお昼の終わりになっていたようで、チャイムが鳴り響きます。それを聞いて悠斗は私に、じゃあまた午後にな、と伝えてきてから自分の席へ戻っていきました。


 よし、午後も午前と同じで頑張りましょうか!




 そして午後の授業も無事に終わり、兄様に悠斗と一緒に下校してから家に着いた私は、先に夜ご飯の支度を済ませます。


 その後ログインすると、すでに現在の時間は四時五十分を切っていました。


「予定の時間は五時ですし、集合場所に向かいますか」


 私は今いる職人都市の職人ギルド前から広場に移動し、集合場所である初期の街の広場に転移を行います。ちなみに移動している間に焦茶色のクロークを装備してフードを下ろしておいているので、ほとんど目立ってはいません。


「クオンは〜…っと、いましたね」


 転移後に周りを見渡すと、すでに広場の端っこ辺りにあるベンチに座って何やらメニューを弄って待っているクオンを見つけたので、私は【気配希釈】スキルと【魔力隠蔽】スキルを意識して使用してからこそこそとクオンの背後に回ります。


「誰でしょうか!」

「…レアか?」


 言葉を発しつつクオンの目元を両手で隠してそう問いかけると、クオンは一瞬考えた後にそう答えてきました。


「正解です!」


 まあ私と集合予定でしたし、クイズは簡単でしたかね?


 そう思考しつつも、私はクオンの目元に置いた両手を外してからクオンの前方へ回り込みます。


「待たせてすみませんね」

「いや、ちょっと掲示板を見てたくらいだから問題ないぞ」


 そう言ってベンチから立ち上がり、クオンは言葉を発します。


「それと装備も新しくなっているんだな」

「そうなんですよ!ユニーク装備でもあるので強いうえに可愛いので、お気に入りの装備です!」


 私はジャジャーンとでも言うかのように、笑みを浮かべながらクロークを広げてクオンに見せびらかします。


「とても似合っているぞ。…じゃあ、そろそろ試合とするか」

「いいですよ。対戦方式は基本のやつですか?」

「それにしようと思ってたが、レアはいいか?」

「もちろん構いませんよ!では、そろそろ行きましょう!」


 そうだな、とクオンは言ってから私へ決闘の申請を送ってきたので、私はそれを当然のように承諾するとお互いの身体が光った後に決闘エリアへの転移が起こります。




「…っと、着いたな」


 前と同じように光が収まると、私たちは決闘エリアである広い土で出来た平らな地面のフィールドに移動していました。


 フィールドだけではなく対戦方式も特訓の時と同じルールなので、ほとんど変化は見られません。


「よし、早速始めるとするか。学校の時にも言ったが、全力を出してくれよ?」

「わかってますよ。クオンとのPVPは初めてですが、勝たせてもらいますよ!」


 ユニークスキルも使っていいですし、クオンに勝てるよう頑張るとしましょうか!


「じゃあ、始めるぞ」

「はい!」


 クオンのその言葉に、私はクロークを脱いでから銃を手元に取り出して戦闘の準備をしてフィールド場でクオンと対面し、システムによる決闘開始のカウントダウンが始まるのを聴きつつ開始に備えます。


『Ready fight!』


 そしてそんなシステムの合図が鳴り響くのと同時に、私たちは動き始めます。


「〈オーラスラッシュ〉!」


 始まりはクオンの使ったその武技でした。私はそれを横に一歩ズレることで躱し、武技を使った瞬間のクオンへと両手に持つ双銃で連続して弾丸を放ちます。


 クオンは私の攻撃を見て、姿勢を低くしながら当たりそうなものだけは手に持つ片手剣で弾き、肉薄してきました。


 なので私は後方にステップして下がって〈第一の時(アイン)〉を自身に撃ち、クオンの動きの先を読んでから両手の銃を乱射します。


「っ…!」


 クオンは飛んできた無数の弾丸を回避したと思ったら、その攻撃の中に隠していた頭狙いの弾丸には直前に気づいたようで、軽く頬を掠めるくらいでなんとか回避されました。


 ですが、その攻撃を咄嗟に躱したせいでほんの僅かに姿勢が崩れます。


「〈第三の時(ドライ)〉!」


 そのタイミングで私は唯一の攻撃系の武技である弾丸をクオンに向けて放ちますが、クオンは崩れた姿勢の状態から斜め横に受け身を取りながら前転することで回避しました。


「まさか、あの姿勢から回避されるとは思いませんでしたよっ!」

「俺もバトルフェスの時よりも成長しているからなっ!」


 クオンは転がった勢いを活かしながらすぐさま地面を蹴り、その勢いのまま一気に私の元へと接近してきます。


 私はそれに対して後方にステップを踏みつつ、回避先も読みながらフェイントも混ぜつつ連続で弾丸を撃ちますが、先程よりもさらに動きが正確になっているようで、なかなかダメージを与えられません。


 そうして無数に放った弾丸たちは、右手に持つ片手剣で弾かれたり紙一重で回避されたりとしながら迫ってきて、ついには剣の間合いに入られます。


「ふっ!」


 そんな掛け声と共に、クオンは右手の片手剣で鋭い袈裟斬りを放ってきました。


 それを見た私は、瞬時にその攻撃を左手の短銃で受け流します。が、クオンは受け流された片手剣を即座に手元に戻し、次の瞬間には再び攻撃を、今度は右から左へと流れるように振るってきました。


「はぁ!」


 なので私はそれを後方に一歩ズレることで回避して、回避直後に自身へ左手の短銃で〈第一の時(アイン)〉を撃ち込んで動きを加速させます。


 そしてその状態で無数に飛んでくる攻撃を両手の双銃で逸らしたり弾いたりして、当たりそうなものに関してはゆらゆらとした動きで身体をズラしたりすることで全て紙一重で回避します。


 そうして次々と振るってくるクオンの攻撃を躱したりしていると、片手剣での攻撃をした時にクオンに一瞬の隙が出来ました。


 私はそれを見逃さず、クオンの持つ片手剣の間合いよりも内側に一歩踏み込み、至近距離なので弾丸を撃つのではなく左手の短銃でその首目掛けて突きを放ちます。


「っ…!」


 クオンはそれを首を逸らすことでなんとか避けましたが、それは咄嗟の動きだったからか先程よりも姿勢を崩します。


「はっ!」

「ぐっ…!」


 そんな隙の出来たクオンのお腹辺りへと、私は左足を軸にして右足で回し蹴りを撃ち込みます。


 これは流石に躱せなかったようで、蹴られた衝撃のままにクオンは後方へと吹き飛んでいきました。


 さらにそこへ、両手に持っていた銃で追撃として連続で弾丸を乱射します。


「くっ、うおぉ!」


 クオンは吹き飛ばされた状態から即座に姿勢を正し、そのまま右に左にとステップを連続で踏みながら地面を蹴り、再びこちらに向かってきます。


 しかも今度も同じように無数に弾丸を撃ち続けていますが、それらはステップを踏まれて紙一重で回避されます。


 それを見た私は再び自身に〈第一の時(アイン)〉を撃ち込んで動きを加速させ、今度は自分からクオンに接近していきます。


「レアから来るなんてなっ!〈パワースラッシュ〉!」

「このまま撃ち続けても倒せなさそうでしたしねっ!〈第零(ヌル)第一の時(アイン)〉!」


 私は思考速度を上げる弾丸を自身に撃って加速させることで、クオンの使用した片手剣の武技を横に半歩ズレることで回避に成功しました。


 そして回避後にはさらに連続して攻撃を放ってきたので、それはゆらゆらとした不規則な動きで避け続け、お返しに〈第二の時(ツヴァイ)〉をクオンに向けて放ちます。


 ですがそれの効果はすでに知っているからか、剣で防御をするのではなく身体を逸らすことで回避されました。


 やはり、知られていては単純に撃つだけでは当てれませんね…


「なら、〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉!」


 なので私はユニークスキルの武技を当てるために自身にその武技を撃ち込むと、私と同じ姿をした無数の幻影が周りに現れます。


「っ、新しい武技か…!」

「さらに、〈第一の時(アイン)〉!」


 無数の幻影が動き始める瞬間に、私は続いて〈第一の時(アイン)〉も自身に使用しました。


「では、いきますよっ!」

「なっ…!?」


 そんな声をかけてから、私は無数の幻影に紛れるように〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を連続で使用しながら高速の立体軌道で移動しつつ、弾丸を放ちます。


 しかもそこに幻影たちも銃弾を撃ちまくるので、クオンからすれば弾幕の嵐のように感じることでしょう。まあ幻影なので当たり判定はないのですけどね。


 それを見てクオンは、最初は弾丸を躱そうとしてましたが当たり判定がないのに気付いてからか、本体である私を見つけようと幻影たちを切り捨てながら高速で移動をします。


 その間では切れ次第〈第一の時(アイン)〉を自身に使用して加速状態を維持していますが、幻影に紛れているのでそこまで意味はなかったですかね?


「…幻影が消えたな。効果時間は終わりか」

「やはり強い人を相手にした場合、幻影ではあまり効果がなさそうですね」

「いや、幻影が出ていた時には意識外から結構な攻撃を受けてたから、効果がないわけではないとおもうぞ?それにこれは基本モンスター相手に使える武技だろうしな」


 その言葉通り、幻影の出ていた三十秒の間でクオンのHPゲージはすでに六割近くまで減っています。それにクオンも言ってますが、モンスター相手ならヘイトを幻影に集めることも出来るとは思いますし、もっと使いようはありそうですね。


「なら、これからも囮以外でも使いそうですかね?」

「だと思うぞ。さて、おしゃべりはこの辺にして、続きと行くぞっ!」


 そう言って一気に距離を縮めてくるクオンを見て、その間にリキャストタイムが終わっていた〈第七の時(ズィーベン)〉を、今度は通常状態で自身に撃ち込んで分身を生み出します。


 続いて分身と共に〈第一の時(アイン)〉を自身に撃ち込み、そのままこちらに駆けてくるクオンへ合計四丁の銃を構えます。

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