55話 スキルの確認
「よし、確認はこのくらいですね!」
これで見ておきたいものは全て見終わりました!あ、そういえば今は何時でしょうか…?
私は懐中時計を確認すると、今はまだ十時くらいでした。
「あのエリアのユニーククエストは意外と早く終われたおかげで、そこまで時間は経っていませんね」
なら、お昼の十一時まではエルフェリンデ付近でユニークスキルと装備のスキルを確認しましょうか。
そう決めた私は、クリアを肩に乗せたまま今いる図書館から外に出てこの街の東にあるエルフェリンデまで向かいます。
クリアは私の肩の上にいますが、いつのまにか外れていた焦茶色のクロークは再び装備しているのでそこまで目立たなく移動出来ています。
それにもう少しで第二陣も来ますし、プレイヤーの皆さんはそちらに意識が向いているのも関係しそうです。
そうして歩くこと数十分で第二の街の東門に着いたので、私はそこからさらに歩いて森付近まで近づいて人気の少ないところまで来ました。
「…ここなら良さそうですね」
「……!」
クリアは何やら私の肩の上で興奮したように震えています。初めて木々などを見たからでしょうか?
クリアは森付近まで来るのは初めでしたし、きっとそうですね。なら今度に森の中を一緒に歩いてみましょうか。
よし、クリアとの森の探索についてはひとまず置いといて、今はよく使いそうなスキルをまずは使ってみましょう。
私は肩に乗せていたクリアを地面に下ろした後、インベントリから双銃を取り出して武技を試します。
「まずは、〈第零・第一の時〉」
その武技で自身を左手の短銃で撃ち抜くと、ダメージは入らずにその効果がかかりました。
「うーん、これは戦闘でないとあまりよくわからないですね…」
十秒間思考と反射速度を加速する、と書いてありましたし、戦闘中にはなかなから使えそうなのでその時に再び試しましょうか。
「では次は、〈第零・第三の時〉」
今度は近くに生えている木に向かってその武技を撃ちますが、それは木に当たる前に消えて当てれませんでした。
「…思ったよりも射程が短いですね。見た感じ、効果を発揮するのはかなりの近距離に踏み込まれた時だけですかね…」
まだ試してはいませんが、双銃を近接武器に変えれるようですし、それと同時に使えば近距離戦もなかなか出来るようになりそうです。
「続いて、〈第零・第七の時〉」
続いて試したこの武技は、説明通り撃ち抜いた者の無数の幻影を出すようです。今は私を撃ったので、私の幻影がたくさん現れました。
この武技で出した幻影は見た目と操作も分身のようですが、触れないうえに攻撃を受けると即座に霧散して消えるみたいです。
まさしく幻影といった効果のようで、撹乱や囮などには結構使えそうなのでなかなか良さそうです。
「最後は、〈第零・第十一の時〉」
最後に試した武技は、こちらも説明通りかなりの速さを少しの間付与する効果のようで、少し走っただけでも〈第一の時〉よりも早いのがわかるくらいには加速していました。
「これは戦闘時のスピードを急に変えて翻弄するのにはかなり便利そうですね」
ですが、懐中時計のおかげで減ってはいますが消費MPもなかなか多いですし、リキャストタイムも二分半もあるのでポンポン使えないのが少しネックです。
まあそれでもかなり強力な効果なのは間違いないですし、結構お世話にはなることでしょう。
「確認しておきたいユニークスキルの武技は試しましたし、次は装備のスキルですね」
私は一度武器をインベントリに仕舞った後、ユニーククエストの報酬としてもらった三点のゴスロリ装備をメニューから選択して装備します。
「初めて装備しましたが、レーナさんに作ってもらっていたあのゴスロリワンピースと同じくらい着心地が良いですね!それに耐久度もなく破壊されないので、こちらは安心して着ていられます!」
洋服たちを装備した後に再び武器である双銃を取り出しつつ、そんな感想を口にします。
ユニーク装備だからか、レーナさんの作ったワンピースと同じでとても柔らかくて温かいですし、見た目も私好みで着ていると楽しくなりますね…!
おっと、服の感想はいいとして、装備の確認といきましょうか。
「まずは、〈武装変化〉、そして〈武装変化〉」
私は武器についているスキルをそれぞれ使用すると、右手の長銃は70cmくらいの長針型の黒い細剣に、左手の短銃は30cmくらいの短針型の白い短剣へと瞬時に変わりました。
これらは時計の針の形をしていますが、見た限り刃もついているようなので、刺突だけではなく斬撃にも対応出来そうです。そして見た目も変わる前の銃状態と同じでそれぞれ金と銀の装飾もついており、これまた美しいですね…!
「ふむふむ、短針はそこまで大きさに変化はないですが、長針は元の銃よりも大きくなるのですか」
見た目を確認した後に軽く振ってみた感じ、全くと言っていいほど重さを感じないので、まだそこまでの筋力がない私でも余裕で振り回せます。
これらの近接武器の戦い方については、いつか兄様やカムイさんに教えをもらった方が良さそうと思います。私は今までに近接武器を扱ったことがあまりないので、今のままでは隙だらけでしょうし。
それと二つの剣は、戻れと私が思考すると一瞬のうちに元の大きさの銃に変わるので、即座に攻撃範囲を変更出来てかなりトリッキーな戦い方になりそうです。しかもそこにユニークスキルの武技も混ぜれますし、さらに複雑な動きを可能だと思います。
こちらの形態でも使いこなせるように、今度しっかりと鍛えるとしましょう。
「…武器はオッケーですし、次は防具のスキルといきましょう」
続いて私は、防具であるゴスロリ装備の三点へと意識を向けます。
「ローゼはパッシブ効果なので今すぐ確認を出来ないのでいいとして、まずはザルクですね」
ローゼの方は自身の視界が何者にも遮られないようになるという効果なので、目眩しや霧などに対して効果を発揮します。が、今は特に実感は出来ないので後回しです。
「では、〈舞い散る華〉」
ザルクのスキルを発動すると、私の全身が黒薔薇の花吹雪になりました。そして三秒が経過すると、即座に花吹雪が集まって再び私の身体に戻ります。
「なるほど、こんな効果ですか」
リキャストタイムも短いので、私は少しの間連続でスキルを使用して感覚を確かめていきます。
そうして何度か使用して確かめた感じ、どうやらこのスキルでは花吹雪になって攻撃を躱したり空中を少しの間だけ移動したり、さらには狭いところなども強引に移動することなどが出来るようです。
「そこまで強いわけではなさそうですが、なかなか便利で使いやすそうですね」
それに何度か使用して慣れられても、スピードは〈第一の時〉を付与した状態を維持も出来るようなのでこれもまたトリッキーな動きで翻弄出来そうです。
「最後は、フューゲルです」
これは説明通りですでに理解はしてますが、一応使ってみるため一度空中へと跳躍し、その次に〈飛翔する翼〉を使用します。
すると、跳ぼうとした瞬間のみ足の裏に透明な地面が出来たかのように空中に足が着き、そのまま跳べました。
「こっちも〈舞い散る華〉と同じでリキャストタイムはかなり短いですし、なんなら空中を跳び交ってさらに動きを読めなく出来そうなので、かなり便利なスキルのようですね」
リキャストタイムは〈舞い散る華〉と同じで五秒なので、こちらもそちらと一緒でよく使うスキルになるでしょうね。
確認した限り優秀なスキル持ちなうえに性能も良いので、この装備たちは普段使いとしてこのまま装備していきますか!
「よし、確認することはこれで終わりですね」
「……?」
クリアも終わったー?というかのように跳ねながら私の足元へ寄ってきました。
「クリア、少しの間構えなくてごめんなさいね」
「……!」
気にしてないよー!という感情を表すかのように楽しそうに跳ね、私へと跳んできたクリアを抱き止めて私は考えます。
「そうですね、私の満腹度も結構減っているからちょうどいいですし、今からクリアのも合わせて料理でも作りますか!」
「……!」
おー!とでも感じているのか、クリアも少し楽しそうに震えています。
私は抱き止めていたクリアを一度地面に下ろしてインベントリから調理セットを取り出して使用すると、私のすぐ目の前にキッチンが出現しました。
「初めて出しましたが、説明通りまんまキッチンですね。…現実と比べると少し使いづらそうではありますが」
「……!」
私がそんな風に考えている横で、クリアは初めてその道具を見たからかまたもやプルプルと震えて興奮しています。
私たちの視界に入っているそれは、コンロや水道の二つがついている簡易のキッチンのようです。
まあ説明通り本格的な物は最初からついてないので、それらを作るとなったら新しくどこかで買わないといけないようですが。
「まあ、今はそこまで手の込んだ物は作りませんし、それは置いときましょう。では、そうですね……この世界で作るのは初めてですし、まずはシンプルに蛇肉と塩胡椒で簡単にステーキにしますか」
私は持っている食材を確認した後に作るものを決め、インベントリから前にゴルブレン森林で狩ってきていたハイスネークの肉を取り出します。
ハイスネークはエルフェリンデの浅層や初期の森などにいたフォレストスネークの上位のモンスターで、こちらはゴルブレン森林で出会った蛇型モンスターです。
そしてドロップアイテムもほとんど同じなので、前に狩っていたからちょうど肉がインベントリにあったのでそれを使用しています。
➖➖➖➖➖
ハイスネーク ランク F
森などに場所に生息している蛇。
その力はフォレストスネークの時よりも強く、牙には毒を持つ。
状態:正常
➖➖➖➖➖
ちなみに鑑定結果はこうでした。まあ特に言うこともないので、これについてはいいですね。
そしてその蛇肉をキッチンの台の上に置いた後、先にフライパンを温めておきます。
その間に軽く蛇の肉をある程度のサイズに切ります。お肉は大きすぎるわけではないですが、なかなかのサイズなうえに私とクリアで分けるので、そこまで大きいと食べづらいですからね。それと見た目は赤みが強めのお肉、という感じで、なかなか美味しそうです。
そしてお肉を切ってから少し待つとフライパンが温まった様なので、塩胡椒をお肉に振って焼き始めます。
「うんうん、お肉の焼ける音と匂いはいいですねぇ!」
「……!……!!」
なんともいい匂いがこの辺りに漂い、焼ける音もあって食欲が湧いてきます。
クリアもこの匂いを嗅ぎ、今まで私が見たなかでも一際興奮しているようにも見えます。クリアはお肉を食べたことがあるとしてもきっとそのまんまでしょうし、それだけ期待されているということなので、失敗しないよう気をつけましょう…!
「…そろそろ良さそうですね」
そんな期待を受けつつも焼き続け、良さそうになったのでこれまた買っておいた木製のお皿へと移します。
「今回はソースなどは作らずに、そのまま塩胡椒の味で食べましょう!」
「……!」
クリアも早く食べたそうですし、今焼いたのはそのままクリアにあげるとしますか。
「クリア、どうぞ食べちゃってください!」
「……!……!」
私が地面の上に皿を置くと、クリアはスライムボディを活かして手のように触手を伸ばし、皿の上に乗っている蛇ステーキを食べ始めます。
そしてどうやらとても美味しいようで、凄く興奮しているのが伝わってきます。これならもっと食べそうですし、私の分と一緒にもう何枚か焼いておきますか。
どうせ残ったとしても、インベントリに仕舞っておけば温かいまま腐らないので大丈夫ですしね。
「クリア、美味しかったですか?」
「……!」
その後も蛇の肉を焼き、何枚か食べたらクリアもお腹いっぱいなのか、もう大丈夫!と言うように震えていたので思ったよりもお肉が残りました。
クリアは凄く美味しそうに食べてくれましたし、また今度にも新しい料理を作ってあげることにしましょう。
残った蛇肉はインベントリに仕舞っておいて、またいつか調理する時に使いましょうか。
「今はもう十時五十分ですし、一度街に戻ってログアウトをしますか」
ここから街に歩いていけばちょうど良い時間になりますし、早速戻るとしましょうか。
「…よし、とりあえずお昼の準備をしますか」
そのまま歩いて第二の街に着いた私は、一度クリアを送還してからログアウトをして現実世界に戻ってきました。
私はストレッチなどを済ませた後にリビングに降り、お昼ご飯を作り始めます。ちなみに、今日のお昼の料理は簡単に作れるペペロンチーノです。
「…いい匂いがするな」
「あ、兄様!」
そうして麺を茹でてソースを作ったりとしていると、そのような声と共に兄様がリビングへ入ってきました。
「もう出来るので、少しだけ待っていてください」
「了解、なら俺は他の食器などを出しとくな」
「ありがとうございます。お願いします」
そんな会話をしながらも手は動かしていると、すぐにペペロンチーノが出来上がりました。
私は出来立てのそれを兄様が出しといてくれたお皿に盛り付けて、工程は完了となります。
「よし、出来ましたよ」
「お、今日のも美味そうだな」
そして二人でいただきますと言って食べ始めます。これはニンニクを使っているので少し口臭が気になってしまいますが、やはりパンチが効いていて美味しく出来上がっていますね!
「やっぱり美幸の作る料理は美味いな」
「ふふ、ありがとうございます」
兄様はそう褒めてくれますが、今食べているペペロンチーノはソースしか作っていませんけどね。まあそれでも褒められて悪い気は全然しないので、嬉しいですが。
「そういえば兄様、ユニーククエストはどんな進歩ですか?」
「やっていた感じ、今日の午後にはほぼ終わると思うな」
私のしたユニーククエストと違って、兄様のユニーククエストは結構時間がかかっているようですね。
私のクエストは結構早く終わったのと、一度も死ぬことがなかったから早かったのでしょう。
兄様のしているクエストは聞いている感じ、何度か死に戻りをしているのもありそうですね。
「そういう美幸は午前中は何をしていたんだ?」
「私も兄様と同じでユニーククエストを受注したので、それの攻略をしていました」
「そうなのか、美幸はもうクリアしたのか?」
「はい、私のは早くクリア出来たようで午前中には終わりました」
私はペペロンチーノをモグモグと食べながらもそう答えると、兄様は少しだけ驚いたのか手を止めて再び問いかけてきました。
「美幸のユニーククエストはなにが報酬だったか聞いてもいいか?」
「いいですよ。私のしたクエストはユニークスキルの強化とユニークアイテムを複数手に入れられるものでしたね」
「ユニークアイテムも獲得出来たのか!…俺もクリアしたら貰えるだろうか…」
「ユニーククエストなら、きっと貰えますよ!」
兄様は未だにユニークアイテムは手に入れていないらしいので、羨ましそうな目でこちらをジトーッと見つめてきます。そ、そんな目で見ないでください…!
「そ、それと午後の一時からは第二陣が来ますが、兄様はそのままユニーククエストを進めていくのですよね?」
「…ああ、そのつもりだ」
「なら、私は特に第二陣に用はないですし、職人都市の北にある鉱山にでも行ってこようと思います!」
「わかった。それと今日の午後には終わるだろうし、一緒に攻略に行くのは明日の午前にしようか」
「わかりました!それなら楽しみにして待っていますね!」
そんな言葉を交わしているとご飯を食べ終わったので、食器洗いなどへ兄様に任せて、私はゲーム世界にログインする前に食材などを買いに向かいます。
そうして買い物も済ませて家に帰ってくると、兄様はすでに自分の部屋でゲームでもしているのかリビングには誰もいませんでした。
「とっととやることは済ませて私もゲームといきますか」
今の時刻は十二時半くらいですし、時間もたくさんありますしね。
そんなことを考えつつも冷蔵庫に買ってきた食材などを仕舞った後、私も兄様と同じように自分のの部屋に戻ってから置いてあったヘッドギアを頭に着けてゲーム世界へログインをします。




